須賀川めねす

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終末歌姫の黙示録

しゅうまつうたひめの、アポカリプスと読みます。 バーチャルアイドル「カノン」こと橘奏乃子(たちばな かのこ)は、持ち前の要領の良さやピアノの演奏動画などが評価され、群雄割拠のバーチャルアイドル界でもトップクラスの人気を博していた。 だが彼女は、ファンの暴走、現実とバーチャルとのギャップやジレンマ、金が絡む人間の汚さに絶望、疲弊し、自殺という手段で11年という短い人生に幕を閉じる。 死後、そんな彼女を待ち受けていたのは、ウェーブのかかったピンク髪をツーサイドアップでまとめた、派手な雑誌モデルのような女性の姿をした、死神…れっきとした、死神の一人であった。 「かのこちゃんが生きてきた世界と別の異世界に転生して、そこで悪魔としてメッチャ暴れて、人間どもをコテンパンにしてさぁ…どう?楽しそうじゃない?」 その死神か発した一言は正気の人間であれば頷きがたいものであったが、生前に起きたある事件から人間に絶望した奏乃子は、うさんくさいピンク髪の死神「ミケ」との契約の持ちかけに二つ返事でOKしてしまう。 ミケに様々な機能を備えたキーボードとともに与えられた、他人の精神を自在に操るスキル「調律」により、悪魔として転生した「カノン・ベネデッティ」の行動は、世界中に"魔"の不協和音を広げていく… かに見えたが、人間を滅ぼすべく転生したカノンは、憎んでいたはずの人間に懐柔されていた!?

因幡の白兎

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今日は友でも明日には敵

俺は幼少期に児童養護施設にいた。 表の顔は障がいの子供を世話をする施設だが、裏では多額の金で親から子供を買い取り、核兵器に変わる抑止力となる生物兵器……ウイルスの開発をしていた実験場。いわば、そこに入居した子供たちは、親から棄てられたあげく、新兵器となるウイルス開発の人体実験用のモルモットだったというわけだ。 はぁぁ……。 俺がまだ施設にいたとき、毎日友達が殺され……地面に埋められた。 衣食住は保証されているが、明日は自分が死ぬかもしれないと怯えて過ごす毎日。しかし、そんな恐怖も先に殺される友達を見ている内に、俺も早く死んで、死後の世界でもう1度友達と遊びたいと思い始めた。 俺も開発段階のウイルスが投与され、何て表現すればいいのか分からない苦痛に全身を支配されたが、これで俺も友達の所に逝けると思うと嬉しかったが……俺は先に殺された友達のように死ねなかった。 ウイルスを投与され意識を失い……目覚めた日の事は忘れもしない。 ウイルスの影響か背丈が成長した自分の姿。殺されて埋められたはずの友達に襲われ、涙ながらに……殺してと頼まれたこと……掴んだ頭から伝わってきた首の骨が折れる感触……ぜんぶ……憶えている。 化物を殺す度に……最期に振り絞る言葉には……毎回胸が引き裂かれそうになる。 開発段階でも人を苦しめ、ウイルス開発を成功させたのにも関わらず、無関係の人々を苦しめ続ける、あいつ等だけは絶対に俺の手で殺す。 それまでは、何があっても……どんな状況で、どんなに辛くても……俺は死ぬわけにはいかない。