最後の魔女


砂鳥 ケイ2020/05/17 00:03
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彼女の名前はシュタリア・レッグナート。 彼女は、この世界唯一の魔女。 魔女狩りによって仲間を失った彼女は、たった一人になっても強く生きようと決心した。 努力と、ただがむしゃらな努力でついには全ての魔法を会得してしまった彼女は、意を決して住処から離れる決意をする。そして世界を旅しながら 様々な人達との出会い、別れを経験する。当初人間を恨んでいた彼女も次第にその感情は色褪せていった。 魔女の身でありながらも、ひっそりと人間に混じり、自らの力を使い、いつしか困っている人間を救う旅を続けていた。 彼女の旅の先にあるものは一体・・。 この物語は、シュタリアを中心とした魔女ファンタジー冒険譚です。

最後の魔女

プロローグ

「お姉ちゃん怖いよぉ⋯」

「しっ! 静かにしてなさい。見つかってしまいます」


 眼前には燃え盛る炎、少し離れた先には武器を手にした男たちが姉妹の元に迫っていた。

 両親は既に男たちの手にかけられてしまったであろう。


「ヤバいぞ! 思ったよりも火の周りが早い!」

「ここはもう危険だ! 逃げるぞ!」

「だが、情報通りだと、2人の姉妹がいるはずだ」

「逃げられはしないさ。この屋敷の四方は俺たちで固めてるんだ」

「ならば、この炎が解決してくれるだろうさ」


 すぐ近くで話していた男たちの足音がどんどんと遠ざかっていく。

 助かったの?

 ねえ、お姉ちゃん?

 あれ、声が出ないや、それに段々と意識が⋯。


(リア、あなたは私たちの分まで生きて⋯)


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ここは⋯


「ああ、またあの時の夢を⋯」


 少女は、先程まで見ていた夢の影響だろうか、その眼に薄っすらと涙の流れた痕があった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ここは、ザミラ山脈の麓にあるユラム村にある宿屋の一室。

 ネグリジェを身に纏った彼女の名前は、シュタリア・レッグナート。見た目10代前半の少女なのだが、実年齢はその何倍も上だった。

 そう、彼女はこのガルディナ大陸⋯いや、この世界唯一の魔女なのだ。

 約70年程前までは、彼女と同じ魔女は多数存在していた。

 しかし、当時の皇帝が降した布告により、その数は激減し、僅か5年足らずでほぼ全ての魔女を討ち取っていった。

 後にこれを魔女狩りと呼び、その所業は彼女たち魔女の力を恐れた皇帝陛下が、自らの足元を掬われない為に先手を打ったものだった。

 今の私がいるのは、あの時お姉ちゃんが命を賭して護ってくれたからに他ならない。

 ベッドから起き上がり、ネグリジェを脱ぎ捨て、何時もの服に着替える。真っ黒なワンピースに先の曲がったトンガリ帽子、右手には先端がクルクルっと巻いている木の杖を持っている。その中央には真っ赤なルビーが自分を誇示しているかのように異彩を放っていた。

 まさしく魔女の格好だった。

「お姉ちゃん、今日も行ってきます」

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