山羊文学

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カラフル

子供の頃、絵の中に埃を描いたら描き直すよう言われた。 「ホコリは灰色でしょう?」 私の描いた埃は、いろんな色をしていた。赤、緑、茶色、黒、白、青……。 「なんでこんな風に描いたの?」 だってそう見えたから……。でも、それは言わない方が良い気がして、私は黙って絵を描き直した。 店をクローズさせて駅へと向かう。朝日が眩しい。最後の客が始発に合わせて帰ったから、早く帰れた方だ。給料は安くなるが、今夜の出勤を考えるとありがたい。酷い時は朝を通り越して昼くらいまで盛り上がることがある。 この街でも今くらいの時間は人通りが少ない。始発待ちが消えて、始発待ちを狙う奴らが消えて、私みたいな仕事終わりの人間がちらほらと歩いているくらいだ。 「関わってくれるな」 皆、身体でそう言っている。仕事場から駅までの最短距離を歩く。キャッチもナンパ野郎もいない、車の音だけがうるさい時間。寒くはないがポケットに手を入れて、下を向いて歩いた。そうしていないと、何を踏んでしまうか分からない。 この街はカラフルだ。カラフル過ぎて目にうるさい。だから私は、いつも目をすっぽりと覆う濃い茶色のサングラスをかけている。そうすると、

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