歪な子
長野県上伊那郡辰野町の新興住宅街の一角に、風変わりな一家が住んでいた。夫と妻に息子の3人家族。夫はサラリーマン、妻はパートタイマー。一般的な建て売り住宅に住み、車を1台所有していた。 夫婦仲は良く、子供もスクスクと育っていた。しかし奇妙なことにその夫婦は、何かが不自然だった。 恐ろしいものや奇妙なものというのは、要素に分解してみれば、なんら特徴のないものであることがある。その家族が正にそうであった。近所の人々にその家族について尋ねても、 「普通のご家庭ですよ」 「お金持ちってわけでもないし、かと言って貧しいって感じもしないし」 「お子さんも順調に育ってますしねぇ」 と、大体このような答えが返ってくるだろう。そして、それは事実だ。しかし、その家族がある秘密を抱えていたのも事実なのである。 夫婦は夫が31歳、妻が29歳の時に結婚した。息子が生まれたのは妻が30歳の時である。当時は家賃8万円のマンションに住んでいた。 夫は商社勤めのサラリーマン。年収は460万円で、お金持ちでも貧しくもないという評価は妥当だろう。車はホンダの赤いフィット。 子供が2歳の時、妻は息子を保育園へ預け、パートタイム