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山羊文学

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午后の講義

「では皆さんは、この写真を見て、どのようなことに気付くでしょうか」 先生は一枚のスライドを大写しにした。それは奇妙な写真だった。 「君、説明してみて」 四百人程が入れる大教室。その前方に座る学生の一人を先生は指差した。 「開かれた本の写真です」 「その通り」 ‎ 机に開いて置かれた本が、大写しになっていた。 「これは開かれた本の写真です。あるいは、本の写真と言うだけでも十分でしょう。それが普通です」 先生は改まって学生たちを見た。 「ここからが本題。これは本の写真。それで普通。それが一般的」 ‎半分程が埋まっている大教室。初めは私語で充満していたが、皆徐々に先生の話に引き込まれていくようだった。好き勝手に話をしていた学生たちが先生に注目し始める。 「しかし、この写真からはもっとたくさんの情報を取り出すことができます。分かる人、手を挙げてみましょうか」 もちろん手を挙げる学生はいなかったが、ついに教室は静かになった。 「では僕から質問です。この本、何の作品でしょう」 ‎あっ、と声を漏らした学生がいた。私だった。プロジェクターの画像だからさほど鮮明ではないが、それでも特徴的な単語を文章の中

午后の講義