Chapter 16 - 神のお告げ。3
「なえ、おはよ!」
「……帰れ」
知り合ってから一か月半が経っても、懲りずにあづはやってきた。
「それ毎日言われてるんだけど。まじ嫌だわお前のそういうこと」
丸椅子に座り、顔をしかめてあづは言う。
「嫌なら来なければいいだろ」
「来るよ。嫌なのそこだけなんだから」
「……あっそう。お前めんどくさいな」
「それお前にだけは絶対言われたくねぇ。お前の方がよっぽどめんどくさいからな? どんだけ心開く気ないんだよ。頑固か」
あんなことがあれば頑固になって当然だ。
「うるせぇ。お前学校は? 今日平日だろ」
今日は水曜日だ。学校がないわけがない。それなのにあづは朝から病室に来た。
「サボった」
「なんで」
「そんなのお前に会いたかったからに決まってんじゃん」
笑いながらあづは言う。
「なっ! お前もう帰れ」
戸惑い、俺は叫んだ。
そんな風に言われたのは、初めてだった。
会いたいなんて同年代に言われる日が来ると思ってなかった。どうしようもなく胸が締め付けられる。泣きそうだ。俺は慌てて顔を隠した。
「だから帰んねぇって。なんでそんなに帰って欲しいんだよ。俺邪魔か?」
あづから顔を背ける。邪魔ではない。付き合い方がわからないんだ。会いたいとか、話聞きたいとか言われても困る。なんてかえせばいいか分からないから。
その日から、俺はあづに確実に魅かれ始めた。
帰れって言う頻度が日に日に減っていった。
知り合ってから二か月以上が経った頃には、帰れと全然いわなくなっていた。