Angel Bullet

Chapter 1 - 装填

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 自分にはつくづく運が無いのだと思う。つい一昨年に私の両親は離婚した。私は父に引き取られたがその父が事故に巻き込まれてしまった。死には至らなかった重症であり、目が覚め目ない状態であった。手術代は何とかなるにはなったが、入院費やその後のリハビリ代や生活費のことも考えると厳しかった。

 離婚した母に助けてもらう手もあったが、これ以上父と母の仲を悪くしたくなかった。父と母の仲が悪かった理由は分からないが、出会えば再び気まずい空気になるのは確かであった。だからできるだけ母からの援助は受けないことにした。それに、あと一年もすれば高校生になれる。高校生になればアルバイトもできる、それでお金を稼げばいい。それまでの辛抱だ。

「じゃあ、また来るから父さん」

 私はそう言い目を覚まさない父を見て言った。当然のように返事は返ってこなかった。私は病室から廊下にと出た。廊下に出た時だった、病室前にある黒い長椅子に座っていた中年の男性がこちらに話しかけてきた。

「よっ、父の見舞いとは偉いね。どうだい?誰でも参加できてお金が手に入るゲームがあるんだが、やってみないかい?」

 そんな都合の良いことなんて無いだろう。その男が言う見え見えの嘘を私は聞く耳も持たずに歩き出した。それでも男は私に用があるのか聞く耳も持たない私にお構いも無く話の続きを話し始めた。

「嘘じゃない。それに、君が望むかどうかは分からないが力を与えれる。君の父さんだって助けられるかもしれない」

 父を助けられる、その言葉で私の足は止まった。私はそれでも顔を振り向かせなかった。それは、昔から備えられていた自分の身を守る、知らない人の話は容易に信じてはいけない、の私の鉄則だった。

 顔を向けない私の代わりに、男は私の前にと立ち、赤い封蠟が押された白い封筒を私に差し出してきた。不思議とそれは魅力的な何かが感じれられ、嫌な気分ではなかった。そのため私は流れるままにそれを受け取った。

 男は細くに微笑んで満足げに言った。

「ここで開けるなよ?しっかり家で、ゆっくり見てから決めるんだぞ」

 男はそう言うとどこかに行ってしまった。私は何か言いたかったのだが男は言うことだけ言って私のことなどどうでも良かったようだ。それはそれで腑に落ちなかったがそれと同時に男が言っていたことに興味が沸いた。

 私は男が注意していたことなど気にせずここで封を切って開けてしまった。すると、一枚の招待状のような紙が一枚出てきた。

  ~エンジェルバレット~

 銃を使った簡単なゲーム。プレイヤーは一つのシルバーバレットとリボルバーが渡されます。渡された銃を使って他のプレイヤーが持っているシルバーバレットを手に入れましょう。渡されたリボルバーのシリンダーに総弾数分のシルバーバレットを入れれば勝利となります。

・参加するには、この紙の下の方の名前の記入欄に名前を書いてください。

・銃弾の初期の手持ちは百二十発となります。一日たつことによって弾丸は十発補充されます。

・参加賞として一千万円が貰えます。

・シルバーバレットを一つ手に入れることで百万円手に入ります。また、シルバーバレットは一発五十万で換金できます。

・途中でゲームを放棄することはできません。

・勝利者は天使となることができ、天使としての力を行使できます。

 中身は意味が分かるようで分からない内容だった。参加でお金が大量に手に入り、シルバーバレットと言う物を集めて換金すれば更にお金が貰えるとのことは分かった。しかし、最後の天使としての力、意味が分からなかった。第一にこれが本当かどうかもしい。だが、信じてみるのも悪くないとも思った。

 私は静かに、ペンを持って紙の下の方にあった名前の記入欄に私の名前を執筆した。