雨燕2020/06/15 08:16
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街から追い出されて僕は、東(だと思う)に向かった。



 異世界がから、太陽が南に高く上がっているとは限らないからね。



 そうして歩くこと2時間、ようやく初の魔物に出会う。



 その魔物は…、鋭い爪や牙に、立派な翼。長い尻尾を持つ、地球上にいないとされる、ラノベとかでも最強格の生き物でとして有名な。



「何で街の近くなのにドラゴンがいるんだよ!!」



 はい、ドラゴンでございます。



「ガァァァァァァァ!!!!」



 赤いドラゴンが、辺りを轟かせる咆哮をあげる。あまりの音量に、思わず耳を塞ぐ。



 この赤ドラゴンは、ダチョウの様な生き物を抱えているため、狩りの途中だったと思う。



 ドラゴンが飛来したのとは反対側に向かって逃げる。



「僕の運、どうなってるのぉぉぉ!!!」



 思わず叫ばずにはいられない程不運だったと感じる。不運もいいところだ。てかもう死んじゃう?



 そんな事を考えていると、ドラゴンにもう追いつかれていた。終わった。

 こんな時だが、走馬灯みたいに、クラスメイトとの思い出が…あ、特に無かった。



「思い出ぐらいあってもいいじゃーんかー!!」



「ガァァァァァァァ!!!」



 耳を塞ぎながら後ろを振り向く。



 至近距離でドラゴンと目があった。捕食者の目だ。



 僕も、ここで終わるのか。あの兵士さんに情けをもらったのに、恩も返せないなんて、申し訳ない。



 目を閉じる。



 迫る死の瞬間に、思わず冷や汗をかいていた。



 そしてその瞬間を待つ。













「『桜花一閃』」



 凛とした声が響く。その直後。





「グガァァァァァァァ!!!!!」



 ドラゴンが苦悶の声をあげる。



 そして、ズズーン!と音を立ててドラゴンは倒れた。



「僕、助かった?」



「なんで赤龍がここに…それより、君、大丈夫でしたか?」



 声のかかった方を振り向くとそこには、白く長い髪を靡かせて、剣を仕舞っている女性がいた。



「え……あ、ありがとうございます!」



 ガバッと勢いをつけて頭を下げた。最初に見惚れてたなんて言えない。



「いえいえ、それ程でも。それよりも、早く移動しましょう。見たところ、装備も弱そうなので、この辺りは危ないです。この近くのカイトの街に行きましょう。」



「分かりました。」



 そうして美少女と歩き出す。



「まず自己紹介ですね。私はカナデ、と言います。貴方の名前は?」



「えっと僕は、細川宗っていいます。」



「シュウ、ですか。私のことはカナデって呼んでくれて構わないから。」



「僕も宗で大丈夫です。」



「シュウさんは、何処から来たのですか?



 そうだ、まだ高校の制服のままなんだった。あまり日本について明かさない方がいいかな。



 明かすか明かさまいか迷っていたけど、ここはテンプレの出番だ!



「ずっと遠くの東の小さな島国から来まんです」



「東の方から来たの?そう…。突然なんだけど、君、私の弟子にならない?」



 …え?弟子?突然過ぎやしないか?



「弟子…ですか?」



 僕が状況を呑み込めずにいると、



「そう。失礼だけれど、あなたの能力って低い方よね。それは、この世界で生きていくには少し厳しいの。だから。」



 そう、僕は弱い。日本では典型的なインドア派だったので

強くなろうとしてもコミュ力が低く、誰かに教えを請えるようでは無かった。まさに千載一遇のチャンスだ。



 コミュ力低いのに女性と話せてる?それが命の恩人だからですけど。



「でも、条件がいくつかあります。」



「条件?」



「はい、一つ、私を師匠と呼ぶ事。二つ、私の指示に従うこと。おーけー?」



「はい!分かりました、師匠!」



「うんうん。私の口調も崩させて貰うよ。師匠だしね。じゃあ、早速街へ行こう!色々はそれからだよ!」



 あれ?この人以外とフランクな人なのでは?でも…



「はい、師匠!」



 僕は美少女ことカナデ師匠と、カイトの街へ走り出した。







 …何故会ったばかり、初対面の男を弟子にとったのか。

  見ず知らずの人なのに、どうして。

  本当の理由が知りたい、と思ったが、僕はそれ以上考えないことにした。