Chapter 1 - とある世界の日常
青空が広がり暖かな太陽光が真っ白なビル群を照らしていた。その中には道路が走り街路樹が均等に植えられている。人通りはあまりなく閑散としているが、空を見上げれば透明な大小のチューブが均一に並べられ道路を被せる様に設置されその中には車のような大きさや人の大きさほどの卵のようなものがものすごいスピードで駆け巡っていた。よく見るとそれは辺り一帯の建物に接続され往来を繰り返している。
その中を一人の女性が歩いていた。黒髪のロングヘアーをポニーテール、やや黄色の入った白いつややかな肌切れ長の瞳に形のよい鼻、唇は薄く健康的な色をしている。身長は約170cmでスレンダーな体型で首から下は格子状の柄のドライスーツのような服を着ていた。
『エリカ、これから買い物に出かけるって何を買うのよ?』
エリカと呼ばれたこのポニーテールの彼女は通話はしているが外見から見ると手ぶらで普通に歩いているだけであった。この世界では科学が発展し思考の中でほとんどのことが事足りてしまうのである。
通話や買い物、仕事etc...実際に体を動かさなくてはいけないようなこと以外は頭の中で事足りてしまう。
『次元調査船に選抜されたじゃない?私たち、それで持っていくものを選ばないと。』
エリカは通話相手に答えながら黙々とこの街にわずかしかない実物展示の商店街へ向かっていく。
『ええー、そんなの自宅で注文すればいいじゃない?手触りだって大きさだって実際のものと変わらないわよ?』
『実際に使うものを見て触って確かめないと、今回は長旅になるんだし自分でちゃんと選んだもの持っていきたいのよ。』
『そういうものかしら?ずいぶん古風なこと言うのね、注文したって注文したもの事態が来るから変わらないのに。』
『うーん。そうじゃないのよね、この感覚はわからないかな?』
『わからなくはないわよ?いわんとしてることは、でも今時そこまでの精度のばらつきなんてないわけだし・・・エリカらしいっちゃらしいか。』
『感覚的なものだしどんなに頭の中をのぞけるようになった時代でもゴーストの差異なんてわからないわけだし、それが私たちだしマザーだってそれを望んでいるんだもの。そうだ!イアーナも付き合ってよ。』
エリカの通話相手、イアーナは数舜の沈黙の後返答した。
『わかった、今行くからちょっと待ってて。場所はQ274ね。』
その瞬間エリカが歩いている少し先にあるチューブが接続されている電話ボックスのようなものに人一人分の大きさの卵が素早く入っていった。
すぐにボックスのシャッターが開くとエリカが駆け寄って覗き込むとそこには人形のような人間のような女性であることはわかるものが椅子に座った形で佇んでいる。椅子からは首筋にケーブルが接続されていてエリカが覗き込んだ時にはすでに人形のようなものは動き始めていた。
「やあ、お待たせエリカ。」
ケーブルから解放され、立ち上がったそれは明るい口調でエリカに話しかける。
「ごめんね、イアーナ。つき合わせちゃって。」
イアーナはエリカの隣に並び商店街へ歩き出す。
イアーナは180cmはある身長、エリカとはちがったスレンダーな体つきで鼻筋が通っておりセクシーな唇をしている、髪の毛のようなものはあるがあくまでシルエット的ものであり瞳はなくのっぺりとしていた、そして全身灰色である。
といってもイアーナはトランスヒューマノイドであり決まった姿は持っていない、ゴーストつまり魂はもともと人間ではあるため自我は持っているものの人間が本来持っている肉体というものは持ち合わせていなかった。
だがどうやってイアーナは生まれてきたかというともともとは肉体を持った人間であり、自己の責任が公式に明確に証明されれば人間の肉体を持ったまま生きるかそれともゴーストを肉体から切り離し人工的な肉体を得て生きていくか選択できるのである。
そう、この世界の科学技術は『魂』を科学が解明しコントロールできるほどまでになっている。
二人はこうして肩を並べて商店街へ向けてあるいていった。