Chapter 1 - そして俺の平和で平穏な学校生活は狂い出す 1話
薄ピンクのカーテンが窓を覆い、少し薄暗い教室で俺は固まっていた。
「今、なんて......」
教室には俺と彼女の二人っきり。
彼女は少し顔を赤らめ。
「私は、貴方のことが――」
それが全ての始まり、俺の高校生活を狂わせた最初の出来事。
そして――
高校入学初日。
これから高校生活を迎えるというのに、俺、八神遥人は憂鬱でしかない。
そこは普通『不安と期待を胸に』だが、俺は憂鬱な気持ちを胸に高校へと向かっている。
理由なんて分かりきっているだろうが、一応言っておこう。
『リア充が増える』が九割、めんどくさいが一割、高校に入るととりあえず彼女、彼氏を作る奴らがめっちゃいる。
理由は簡単、『青春』を謳歌したいからだろう。
でも実際、彼らはいったい何が『青春』なのか、『青春』の意味、価値を分かってはいないのだ。
バーナード・ショーの言葉を知らないのか『青春?若いやつらにはもったいないね。』なんていい響きなのだろうか。
だから俺は青春はただの妄想だと心に刻んだ、戒めた。
俺の高校生活は平和に平穏に過ごすと決めた。
勢いで彼氏、彼女を作るような奴らとは違うのだ。
てか、俺に彼女なんて夢のまた夢、何故なら俺は陰キャだからだ。
そんな俺に青春ラブコメなんて起きるわけがないだろ。
そんなことを思いながら歩いているといつの間にか目の前にはこれから俺が通う高校、神代高校の姿があった。
これから俺の平和で平穏な高校生活が始まるはずだった。
校庭に張り出されている自分の組、出席番号を確認する。
「1-Aクラス、番号は......最後かよ」
番号が最後、つまり席は教師から見て一番右の一番後ろ、ラブコメ主人公のよく座る場所である、それと同時に陰キャぼっちが良く座っている場所でもある。
まさに俺にふさわしい位置である。
自分の教室へ行き、席に着いた。
カバンの中にしまってあった筆記用具とラノベを取り出し、カバンを机の横に掛ける。
それらを全てを終えたら至福の時間、ラノベを読む時間である。
だが、ラノベを読む前に俺は見てしまった。
それは周りの生徒が既にグループみたいなものを作っている状態を不思議に見ている訳では無い。
俺の......俺の隣に美少女が居るのだ。
ランクを付けるならばS級、S級美少女だ。
その辺の女優やアイドルよりかはかなりの美形、可愛い。
清楚な黒髪は腰くらいまで伸びており、まるでお姫様みたいだ。
でも彼女、少し驚いている?そして涙を流してはないが、少し目が潤っていた。
彼女が来た途端、さっきまで話していた生徒全員が彼女を見ていた。
「あ、貴方が私の隣の遥人くん?宜しくね!」
「こ、こちらこそ......」
驚いた、俺の名前を知っていた。
多分出席番号が隣だったからだろう、彼女の名前は確か......
「紗倉有栖さん......」
無意識に名前を声に出してしまった。
すると彼女は驚いた様子で、少し笑って。
「私の名前覚えてるんだ」
そう言った。
言い間違えでもしたのだろうか?多分彼女は『知ってるんだ』と言おうとしたんだろう。
「番号が俺の隣だったから」
「......そっか、じゃあ私と一緒だね」
俺と彼女が話しているのを見て、周りの男子生徒の目は鋭くなっていた。
それと同時に恋に落ちたような目をしている。
恋愛経験が全く豊富ではない俺でも分かる。
美少女に恋をするのは分からなくもないが、現実的に考えてそれは不可能だ、まず競争率が高すぎる、それともう一つ、もし美少女と付き合ったら命の保証はないからだ、現に今俺はクラスの男子生徒からいつ殺められてもおかしくないような目で見られている。
話してるだけだよ、ほんの少し、本当に少し話しただけでこれだよ?
もし付き合ったりなんかしたらどうなることやら。
だから俺は平和に平穏に高校生活を送るため、あまり可愛い子には関わらないことを決めた。
刹那、予鈴と共に美人な教師らしき人が教室に入ってきた。
美人教師らしき人は黒髪ロングで、紗倉さんよりも少し長い。
美人教師らしき人は教卓の前で止まり。
「みんな、席に着いてください」
そう声をかけた。
「私は今日からこのクラスの担任をすることになりました、一之瀬朱里です、担当は英語です、みんな宜しくね」
先生は最後の一言を可愛らしく言うと、周りの男子生徒はまたしても恋に落ちたような目をしていた。
また少し周りがザワついていた。
先生に恋をする生徒なんて本当にいるんだな。本気かは別として......
「じゃあみんなに自己紹介してもらおうかな」
そう先生が言うともっとザワついた。
俺も心の中では悶絶している。
自己紹介だと......俺に紹介できることなんて名前と性別と推しキャラくらいしかない、自己紹介はみんな特技や趣味を言ったりするだろうが俺には特技なんでないし、趣味なんてアニメ鑑賞である。
そもそも俺の特技がたとえなんだろうが実際みんなは「ふーん」「へー」としか思わないんだ。
これはつまり普通に考えて自己紹介は名前だけで良いと言うことだ、もっと言うと自己紹介すら要らないのである。
だがそんなことはお構い無しにどんどん順番がまわってきている。
順番的に俺は最後、なんでよりによって俺が最後なんだよ。
そして徐々に順番がまわってきて、紗倉さんの順番になった。
「私の名前は紗倉有栖です、早くみんなと仲良くなれればいいかなと思います」
最後に紗倉さんは満面の笑みを見せた。
正直めっちゃ可愛い。
「有栖って名前も可愛いよな」
「だよな」
そんな会話が聞こえてきた。
確かに可愛らしい名前だ。
てか紗倉さんなら今日中にみんなと仲良くできると思う。
見てみろ周りの男子生徒を......親には絶対見せられない顔してるぞ。
「八神くん......八神くん!」
「あ、はい!」
「次八神くんの番よ」
いつの間にか俺の番までまわってきていた。
「えー、八神遥人です、えー平和で平穏な高校生活を送りたいです、えー、宜しくお願いします」
教室には小さく、乾いた拍手が響いたか響いていないか微妙だけど多分響いてる。
この瞬間をもって俺のぼっちが確定した。
最初の自己紹介で今後の人間関係がどうなるか決まる。
分かりやすく言う、運動部に入る男子と帰宅部の男子、どちらが輝いて見える?勿論言葉だけで聞いた時だ。
答えは先行。
そんな大事なイベントで俺は失敗した。
1
今日は初日という事もあり午前中で学校が終わった。
「紗倉さんこの後カフェ行かない?」
「え!有栖ちゃん行くなら私も行きたい」
「私も私も」
初日から紗倉さんは大人気だな。
勿論俺はぼっち、一人で帰宅する。
「ごめんね、今日はちょっと用事があるんだ」
「そっか、じゃあまた今度行こ!」
「うん、また今度」
どうやら紗倉さんはお誘いを断ったらしい。
初日から青春を謳歌してるような会話しやがって、俺は初日から一人だぞ、いや初日だから一人で正解なのである、そう思いたい。