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あんたは死んだら幸せなのか? あんたは死ねたら喜ぶのか?」

 俺の胸倉を左腕で掴んで、男は叫んだ。

 その腕を掴んで、俺は叫び返そうとする。

「……ああ、そうだよ! 俺は生かせなんて頼んでない!」

 だが、間ができた。けれど、その理由は考えないことにした。

 自分は殺されなきゃいけない。――それ以外は許されないのだから。

「……お前、死にたいなんて思ってないだろ」

 予想外の言葉に目を見開く。

 ――死にたいと思ってないだって?

 「潤。あー、お前を助けた時、一緒にいた奴がいってたんだよ。四階以上だと、死亡率が50パーセント以上だって。本当に死にたいなら、そうするんじゃねぇの?」

「……あそこは足場が悪いから、四階以上じゃないけど平気だと思っただけだ

 声が小さくなった。何でかはよくわからない。

「じゃあわざわざ俺達の目の前に落ちたのは? 反対側でもなんなら隣のビルのもっと上の階でもよかったよな。その方が死ねた」

「それは……」

 探すのがめんどくさかったから、あそこにした。そのハズだった。実際めんどくさいと本気で思ってたハズなんだ。けれど、何故かそう言おうと思っても、声が出なかった。

 ――矛盾している。

 死に場所を探すのがめんどくさいから、死ぬのもめんどくさいのではなく、死にたいのに探すのはめんどくさいなんて。

 心の底から死にたいと思ってるなら、もっと確実に死ぬ場所を選ぶことだってできたのに。それなのに、俺はそうしようとしなかった。

 めんどくさいとかではなく、たぶんまだ心のどこかで死にたくないと思っていたから。

「――目の前で死ねば、助けてくれると思ったんじゃないのか」