Chapter 4 - ノドカ視点03
ほど良く暖かな日差しを感じて、意識が戻ってきた。
目を開けば、そこにあったのは「あるはずのない」景色。
私は、駅のホームで突き飛ばされたはず──。
さて、それは時間にして、どれくらい前のことだったのだろう。
時間感覚があまり無いのは、やはり頭を打ったからか。
元々神様やら天国やらなんて信じてはいなかったけれど、私は確実にあのとき死んでしまったはずだ。
突き飛ばされたのは、電車がホームに滑り込む直前だったのだから。運転士だってブレーキをかける余地すらなかったはずだ。
ホームに入ってくる前に減速しているにしろ、あの大きさの物体が迫ってきていたのだから、私は即死を免れない。
自分が死んだのはもう揺るがない事実なのだとして、それはもう仕方のないことだ。
いや、実際そんなすぐに自分の死を受け入れられるかと言われれば、そういうわけではないのだけれど、ここは目の前に広がる世界にまず注視すべきかと思う。
私は、森の中にいた。
木を見て何の植物かを当てられるほど、私には知識がない。日常的に日本に暮らしていて見かけるような植物ではなさそう、というくらいしか判断がつかない。
乱立する木々にはツタが絡みつき、人の手が入っていない自然そのものを感じる。
──ここはどこだろう。
私の前にも背後にも、左右にも深い深緑の木々が広がるばかりだ。
電車に轢き飛ばされたであろう私の身体は、それにしては傷など見当たらず、五体満足に動く。
痛みもなく、先ほどまでのことがむしろ現実ではなかったかのようにさえ錯覚しそうだった。
死後の世界というのを信じていなかった私にとって、不思議なその森は、まだこのとき日本のどこかにあると思っていた。