君は私を魔女と呼ぶ

Chapter 5 - ノドカ視点04

Zilchちゃん2022/01/07 14:15
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どこに行けばいいのかなんてわからない。

目的もなければ使命もない。そんな宙ぶらりんな状態だが、ひとまず人に会えないかと森を歩くことにした。


 この森の広さは、今の私にはまったくの未知だ。どんな生物が暮らしているかもわからない。もしかすると猪や熊などの野生動物に鉢合わせしてしまうかもしれない。


 でも、だからといって、動かないわけにはいかないのである。


 今が何時かもわからないけれど、日が暮れるより前になるべくこの森を出たい。

 生きるために必要な飲み水の確保や、食べられそうなものも探しておきたい。




 * * *

 そんな気持ちで歩き始めて、もう既に体感ではあるが2時間は経過していると思われる。


 2時間、闇雲に歩いたわけでもなくて、きっと直進していればどこかで景色が変わるはず、と一方向に真っ直ぐ歩いてきた。

 結果、景色はいまだにほぼほぼ変わっていない。


 これは思っていたよりもずっと広い森のようだ。まるで同じところをグルグルしているかのようにも思えるけれど、たまに見たことのない花を見かけたりするからそういう類の幻覚とかではないらしい。きちんと移動は出来ているようだ。


 電車に轢かれる直前に着ていた服装のまま、そして変に血がついているとかそういう状態でもないので、特段気持ち悪くはないのだが、よりによって今回はいつもあまり履かない方の靴を履いてきてしまっていたので、少し足が痛い。


 歩き方の問題なのか、よく靴擦れするタイプの人間なので、今回の靴擦れも「またか」という感じなのだが、こういうときは経験則からしてあまり無理をして歩き続けない方がいいというのを理解している。


 なので、出来ればそろそろどこかで休憩したいところである。

 休憩出来そうな適当な場所を探しているのだけれど、ここら一帯は湿地帯のようで、地面が濡れている感じがして、どうにも腰を下ろすのを躊躇ってしまうのだ。


 覚醒地点は地質が違っていたから侮っていた。


 ──けれど、待てよ。そうなると、もしかして水源のようなものが近くにあるのではないか?

 飲み水の確保は、案外近いかもしれない。