Chapter 46 - VS.ヒュリ&ウルスス/VS.ベスタ&ディウブ 決戦②
バズは、ウルススの力強い攻撃に押されていた。
鋭い爪を何度も剣で受け流していたが、ついに体勢を崩し、尻餅をつく。
「しまった……」
ここぞとばかりに前のめりになり、ウルススは必殺の一撃を繰り出そうと振りかぶった。
「サイゴニシテ、イイカ?」
「これで終わりね。バイバイ、バズ――」
ヒュリが勝利を確信したようにつぶやく。
しかし、苦しみの叫びを上げたのはウルススのほうだった。
バズが至近距離から捨て身で投げつけた剣は、狙いどおりにウルススの喉元へ突き刺さった。
間一髪で後ろに転げるように飛び退き、ウルススの一撃をかわしたものの、バズの服は鋭い爪によってズタズタに切り裂かれていた。
「ウグオオオオオッ!」
苦しみのあまり思わず天を仰いだウルススは、無防備そのものだった。
急降下したストラールの雷光を帯びた爪が、狂いなくウルススの眉間へダメージを与える。
焦げた匂いと共に、骨を砕かれたウルススは、その巨体を後ろにいたヒュリへ預けるように倒れた。
「ひいっ――こ、来ないでーっ……」
そうして、サルトゥスの森は静まり返る。
「終わったな――どんなに強化しても、鍛えられない場所は、ある」
「ワシの大活躍じゃな。タカじゃけど……な」
*
目の前の相手に集中しなければいけない。そうだった……。
アウラを気に掛けたその一瞬に、ベスタの渾身の一撃が飛んできた。
それは易々とメルの左腕を深紅に染める。
鋭い痛みに耐えきれず、腕を押さえながら片膝をつくメル。
「メルーッ!」
アウラが、倒れそうになりながらも懸命に叫ぶ。
「まずいフム、血が……止まらないフム!」
「ダメっ、フムス! なんとかしなきゃ……なんとかしてよ!」
今まで聞いたことのないような大声で、ヴィオも叫んでいた。
「まったく、使えねえオオカミだ――そして、お前!」
ベスタが、動揺するヴィオに近付いてくる。
「小賢しい術でシールドなんか作りやがって。俺の剣の邪魔をするんじゃねぇ!」
「やっ、やめてっ!」
ベスタは、杖を振り回すヴィオの髪を掴み、紫色に鈍く光る瞳でにらみつける。
「お前も……呪われろ……」
ベスタがそうささやいた瞬間、ヴィオの体が激しく痙攣する。
「あ、が、はぁっ……」
杖が手から滑り落ちる。
気を失ったヴィオの頬を、何度も平手で叩くベスタ。
それを止めに入ったフムスは、軽々と片手で弾き飛ばされる。
「起きろ」
そう言われて目を覚ましたヴィオは、もはや、もとのヴィオではなかった。
異変はフムスにも起きていた。明らかに目がおかしい。
焦点が定まらずぼんやりしている。
「ようこそ――まつろわぬ民の世界へ」