本多 狼2020/11/08 02:50
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 サルトゥスの森へ向かう途中、メルたちは、ルーチェという小さな町へ立ち寄った。

 そこで、不足している道具類や回復薬などを手に入れた。

 今まで、フロールの薬草の知識に助けられてきたことを、みんなひしひしと感じていた。

 

「アウラ、体のほうは大丈夫?」

 店の中で商品を手に取りながら、メルが尋ねる。

「メル……ベスタとの戦いのあとからずっと、初めて会ったときみたいに、アタシに体力を分けてくれているでしょ?」

「あはは、やっぱりばれてるか。今もちょっとずつ、ね。て、点滴みたいでしょ! 僕は一発ガツンと蹴られただけ。でもアウラは、何度もひどくやられていたから……」

「ありがとう、メル。あんなにやられたのに、おかげで信じられないほど回復が早いわ」

「あのとき、アウラが死ぬんじゃないかって、怖くなった……ナイフも『あいつは別格だ』って言ってたし」

「確かに、今まで戦ってきた敵とは全然違った。でも、絶対にチャンスはあるわ」

「そうだね。今までだって……」

 そう言ってメルは、フロールの存在感の大きさに気付かされる。

 

 セルペンス、ムース、ティブロン――どの戦いでも、フロールのアイディアがなければ勝てなかった。

 フロールは、僕にも、仲間たちにとっても、かけがえのない大切な存在だ。

 メルは、フロールの笑顔を思い浮かべた。

 

「フロールを、必ず助け出しましょう」

「う、うん……」

 アウラに心の中を見られたようで、少し恥ずかしかった。

 それを隠すように、それに気付かれないように、メルは平静を装って、適当に掴んだ商品を会計へと運んだ。

 

 メルとアウラは店を出て、町の入り口でみんなと合流した。

 それぞれ必要なものを買ったり、身に着けたりしている。

 絶対にフロールを助けて、ベスタを倒す。

 これが最後の戦いとなるはずだ。だから、後悔はしたくない。

 

「行こう!」

 互いに顔を見合わせ、誰からともなく言い出した言葉が、みんな一緒だった。

 メル、アウラ、ヴィオ、フムス、バズ、ストラール。

 全員が笑顔になった。

 朝の敗北から立ち直り、そしてみんなは前を向いて歩き出す。

 勝利を、信じて。