Chapter 35 - 寝ればいいのよ
男女二部屋に分かれる、そこまでは良かった。
メル、バズが男子部屋。ヴィオ、フロールが女子部屋である。
特に問題はない。
しかし……。
「アウラはメスなんだから、こっちの部屋でしょ!」
当然のようにメルと同じ部屋へ入ろうとするアウラに、フロールが突っかかる。
「でも……アウラと一緒じゃないと、何かあったときに困るんだよ」
メルが、必死に説得しようとする。
「じゃ、じゃあ……一緒に寝ない、なら、許してあげてもいいわよ……」
「分かったわ、フロール。あなたがメルと寝ればいいのよ」
アウラがさらっと返す。
「へっ? えっ? いやっ、それは、その、あの……」
アウラの勝利? である。
ヴィオが「一人は、怖いです」と言うので、無理矢理ベッドを二つ運び入れ、結局一部屋に全員で寝ることとなった。
そうして、アウラとフロールが同じベッドで眠ることとなる。
「いい、アウラ。私が眠っても……メルの布団に入っちゃダメだからね」
「さあ、どうかしらね」
アウラが挑発するように返す。
「……メルは……私をお嫁さんにするって、言ったんだから」
「いつ?」
「な、七歳のとき……だったかな」
「ふ~ん」
フロールは、元気で積極的なのに、こういう話には弱い。
アウラには、それがかわいらしく思えた。
「メルが覚えているか、アタシが聞いてみようかな?」
「だだだ、だめっ。ダメよ、絶対」
「いいじゃない。こういうのは、はっきりさせたほうがいいわよ?」
「……もう……アウラのいじわる」
フロールは、いじけて布団を被る。
「さあ、明日も早いから、寝ましょう。おやすみ、フロール」
「――おやすみ……アウラ」
アウラは、フロールが眠ったあと、メルの布団へともぐっていった。
メルは命の恩人だもの、アタシにとって一番大事な人間よ――。
でも、フロールがかわいそうかな……。
アウラは、みんなが目覚める前にそっと布団から這いだして、ベッドを下りた。
メルに、アタシとフロールのどっちが好きなのか、聞いてみようかしら……。
アウラは、不思議な初めての気持ちを胸に、丸くなってまた眠りに落ちた。