オオカミか幼なじみか選べない……。

Chapter 35 - 寝ればいいのよ

本多 狼2020/10/18 02:03
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 男女二部屋に分かれる、そこまでは良かった。

 メル、バズが男子部屋。ヴィオ、フロールが女子部屋である。

 特に問題はない。

 しかし……。

 

「アウラはメスなんだから、こっちの部屋でしょ!」

 当然のようにメルと同じ部屋へ入ろうとするアウラに、フロールが突っかかる。

 

「でも……アウラと一緒じゃないと、何かあったときに困るんだよ」

 メルが、必死に説得しようとする。

「じゃ、じゃあ……一緒に寝ない、なら、許してあげてもいいわよ……」

「分かったわ、フロール。あなたがメルと寝ればいいのよ」

 アウラがさらっと返す。

「へっ? えっ? いやっ、それは、その、あの……」

 アウラの勝利? である。

 ヴィオが「一人は、怖いです」と言うので、無理矢理ベッドを二つ運び入れ、結局一部屋に全員で寝ることとなった。

 

 そうして、アウラとフロールが同じベッドで眠ることとなる。

 

「いい、アウラ。私が眠っても……メルの布団に入っちゃダメだからね」

「さあ、どうかしらね」

 アウラが挑発するように返す。

「……メルは……私をお嫁さんにするって、言ったんだから」

「いつ?」

「な、七歳のとき……だったかな」

「ふ~ん」

 フロールは、元気で積極的なのに、こういう話には弱い。

 アウラには、それがかわいらしく思えた。

「メルが覚えているか、アタシが聞いてみようかな?」

「だだだ、だめっ。ダメよ、絶対」

「いいじゃない。こういうのは、はっきりさせたほうがいいわよ?」

「……もう……アウラのいじわる」

 フロールは、いじけて布団を被る。

「さあ、明日も早いから、寝ましょう。おやすみ、フロール」

「――おやすみ……アウラ」

 

 アウラは、フロールが眠ったあと、メルの布団へともぐっていった。

 メルは命の恩人だもの、アタシにとって一番大事な人間よ――。

 でも、フロールがかわいそうかな……。

 

 アウラは、みんなが目覚める前にそっと布団から這いだして、ベッドを下りた。

 メルに、アタシとフロールのどっちが好きなのか、聞いてみようかしら……。

 アウラは、不思議な初めての気持ちを胸に、丸くなってまた眠りに落ちた。