Chapter 24 - おばあちゃんの言葉
メルとアウラを見送ったフロールは、目を閉じて、ひとつ深呼吸をする。
おばあちゃんが言ってた。
あたしらがあたふたしちゃ、だめなんだよ――苦しんでいる人を、まずはよく見てあげなさい、って。
噛まれたヴィオの左足の状態を確認する。
すぐに、水で濡らしたタオルを当てたから、傷口の汚れは落とせたはず……。
でも、熱を持っていて、さっきより赤黒く腫れてきている。
体が痺れているようで、呼吸は浅い。
セルペンスの毒のことを、リュゼは「何年もかけて作り上げた作品」って言ってたわ。
つまりセルペンスは、元々は毒蛇じゃないかもしれない。
だとしたら、血清でなくてもヴィオを救える可能性があるはず。
フロールは、以前おばあちゃんと一緒に助けた村人のことを思い出した。
ヴィオと症状が似ているかも――。
かばんから思い当たる薬草や道具類を取り出し、手際良く作業を始める。
フロールは、ヴィオと自分の額の汗を交互に拭いながら、尊敬するおばあちゃんの言葉をまた思い出した。
「薬だけでは治せない。この意味が分かるかい? 使う人が少しでも無理だと思ったら、薬の神様には願いなんて届かない。治る、治してみせるという強い思いを込めるから、あたしら薬師の調合した薬は、患者さんに染み込むんだよ」
フロールに迷いはなかった。
今できる最善のことをするだけ。
絶対にヴィオを助ける。
メルとアウラを信じてる。
そして、私は私を信じる!