Chapter 18 - 旅立ち ヨ・ろ・シ・く・ネ・ん!
翌朝、村の入り口で、長老をはじめ大勢の人たちがメルを見送った。
「母さん、行ってきます」
マリーを心配させないように、メルは目いっぱいの笑顔で言った。
マリーは、そんなメルを強く抱きしめた。
「行ってらっしゃい。あなたなら大丈夫よ。アウラ、メルをよろしくお願いします」
マリーは何度もアウラをなで、アウラは何度もマリーの頬を舐めた。
「村のことは俺に任せとけ。変な奴らが来ても叩きのめしてやる。いいか、すべて終わったら、戻って来いよ。こいつは、俺からの贈り物だ」
ジンクは、メルに一本のナイフを手渡した。
前にもらったものよりも若干短く、グリップは明るめのライトブラウンだ。
「合わせて二本持ってりゃ、今のお前なら十分戦える。まあ、俺はその二本で負けたがな」
そう言って笑ったジンクが、メルの肩を優しく二度叩く。
(ヨ・ろ・シ・く・ネ・ん!)
キャラの違いっぷりに、思わず渡されたナイフを落としそうになるメル。
武器にも、性別や性格があるのかな……。
メルはうまくやっていけるのか、一抹の不安を覚えた。
「ありがとう、ジンク。あの……フロールは?」
フロールの姿がどこにも見えなかった。
きっと、別れの場にいるのが嫌なのだろう。彼女はそういうのが苦手だから。
昨日の夜、一緒に食事をしたときも、あまりしゃべらず、いつもの元気がなかった。
「あぁ、その、すまんな……なんて言うか、その……」
「きっとあの子、メルとさよならするのがつらいのよ。小さなころからずっと一緒だったもの。声は掛けたんだけど、ごめんなさいね……」
隣にいる妻のフィーナが、歯切れの悪いジンクの代わりに言った。
「それじゃ、行ってきます」
深々と頭を下げて、そしてその目に強い決意を宿して、メルはポルテ村から旅立った。