オオカミか幼なじみか選べない……。

Chapter 18 - 旅立ち ヨ・ろ・シ・く・ネ・ん!

本多 狼2020/09/06 07:38
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 翌朝、村の入り口で、長老をはじめ大勢の人たちがメルを見送った。

 

「母さん、行ってきます」

 マリーを心配させないように、メルは目いっぱいの笑顔で言った。

 マリーは、そんなメルを強く抱きしめた。

「行ってらっしゃい。あなたなら大丈夫よ。アウラ、メルをよろしくお願いします」

 マリーは何度もアウラをなで、アウラは何度もマリーの頬を舐めた。

 

「村のことは俺に任せとけ。変な奴らが来ても叩きのめしてやる。いいか、すべて終わったら、戻って来いよ。こいつは、俺からの贈り物だ」

 ジンクは、メルに一本のナイフを手渡した。

 前にもらったものよりも若干短く、グリップは明るめのライトブラウンだ。

「合わせて二本持ってりゃ、今のお前なら十分戦える。まあ、俺はその二本で負けたがな」

 そう言って笑ったジンクが、メルの肩を優しく二度叩く。

(ヨ・ろ・シ・く・ネ・ん!)

 キャラの違いっぷりに、思わず渡されたナイフを落としそうになるメル。

 武器にも、性別や性格があるのかな……。

 メルはうまくやっていけるのか、一抹の不安を覚えた。

 

「ありがとう、ジンク。あの……フロールは?」

 フロールの姿がどこにも見えなかった。

 きっと、別れの場にいるのが嫌なのだろう。彼女はそういうのが苦手だから。

 昨日の夜、一緒に食事をしたときも、あまりしゃべらず、いつもの元気がなかった。

「あぁ、その、すまんな……なんて言うか、その……」

「きっとあの子、メルとさよならするのがつらいのよ。小さなころからずっと一緒だったもの。声は掛けたんだけど、ごめんなさいね……」

 隣にいる妻のフィーナが、歯切れの悪いジンクの代わりに言った。

「それじゃ、行ってきます」

 深々と頭を下げて、そしてその目に強い決意を宿して、メルはポルテ村から旅立った。