Chapter 15 - 1-15
「質問はまだあるかい?」
「いえ、特には」
「そっかそっか。それじゃ、装備を探してこうか! 恵美はどういうスタイルにするかもう決めているかい?」
「採取を主に。ネアは収集型って言ってました」
「収集かぁ。それなら、身軽さを生かした軽いものと、特にポーチに力入れた方がいいな。まずは見繕ってくるから恵美! ちょっとそこで待ってな!」
そう言い残して店内を駆けまわる河野さんに、「店内は走らないでください!」とヘルメットさんの叱責が飛んでいた。
「なんか、嵐みたいな人だね」
「んね」
思わず呟いた言葉に、陽夏は同調してくれた。
慌ただしく動き回る河野さんは、いくつかの商品を手に取った後、私の所に戻って来る。
「さてお待たせ! あたしのおすすめの組み合わせだよ! ちょっと着て見せてくれよ!」
商品を詰めた買い物かごを私に押し付け、試着室に押し込んでくる。
「着替えたらカーテンを開けてくれ! サイズとかも見ないといけないからね」
そう言って押し込まれた試着室の中は、嵐が過ぎ去ったかのようにしんとしていた。
ぽかん、としばらく呆けていたが、呆けていても何も始まらないとかごの中を物色する。
「あ、Tシャツと短パン……肩紐付き? うん、まあ、普通かな。あと、それと……」
ひとつずつ確認して並べていく。
シャツやパンツだけではなく、下着まで用意されていることには驚いた。
「うわ、動きやす」
しかもただの下着ではなく、動きやすいように補正された下着。
可動域も広く、締め付けも苦しくない。
これであればずれる心配もなく、私は値段が気になった。
「しかも全体的に軽いし。え、これ本当に防御力あるの?」
羽のように軽い。文字通りの意味で。
この肩紐付き短パンはきっと落ちないようにの配慮だな、と思う。
しかしここまで配慮されているのに。
私は腑に落ちない気分でかごに入っていた服を、用途の分からない短いベルト以外すべて着こみ、その上からウエストポーチを吊り下げる。
「できましたけど……」
カーテンを恐る恐る開くと、待ってましたとばかりに河野さんが飛びついてきた。
「うんうん、あたしの見立ては間違ってなかったねぇ! 少女が少年のような恰好をする、一種の色気!!」
「その短パン、レーダーホーゼン?」
「おおっ、お目が高い! そうとも、レーダーホーゼンをモデルに、アーマーラノドンの皮を使ったものなのさ! 軽くて柔軟性があるくせして、衝撃には硬い、盗賊装備にぴったりなのさ!」
興奮して捲し立てる河野さん。
しかし彼女は、一箇所に目を留めると不思議そうな顔をした。
「恵美、一緒に入れてあったガーターは何故つけていない?」
「ガーター……? あ、もしかしてこれですか?」
どこに付けるのか分からない短いベルト。
河野さんはそれだ! とまたも叫び、ベルトを受け取る。
「ガーターは靴下が落ちたりずれたりするのを防止するのさ。しかもこれはダンジョン素材から作られたガーター。だからこういう風に着けておけば、この靴下は絶対に落ちない!」
できた、と嬉しそうに立ち上がる彼女に倣い、私も屈めていた体を起こす。
全身を確認するようにくるっとターンを決め、河野さんの顔を見る。
「いい……! いいよ、実にいい……! さすがカナタの妹……!」
彼女は鼻息荒くにやけている。
傍目に見るとただのヤバい人。
そんなテンションのまま、彼女は叫び出す。
「二―ハイソックスで隠れた脚! 僅かに覗かせるふっくら太もも……! ガーターに食い込む愛らしいはみ肉! これが! これこそが本当の絶・対・領・域!」
「陽夏、タイツちょうだい」
「全身タイツ?」
「脚だけタイツ」
「黒でいー?」
「いいよ」
「そんな殺生な!!」
やめてくれー! と叫びながら私に抱き着いてくる河野さん。
この人、姉の妹と分かるが早いか、距離感バグって来てないだろうか?
「分かった! ガーターとニーハイにする利点を教えよう! だから、だからタイツにするのは考え直してくれ!」
べりっと河野さんを引きはがすと、うるっうるの涙目で懇願してきた。
ため息を吐くと、「どうぞ」と先を促した。
「まず、エロい」
「陽夏、タイツー」
「頼む、待ってくれ!!」