MARVELOUS ACCIDENT

Chapter 8 - 7

荻野亜莉紗2022/03/03 01:58
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ほんのりと豆電球が光る、暗がりの部屋の中……

 飛華流は布団をかぶり、ベッドで横になっていた。

(どうして、こんな事態になった

のだろう)

 散々、学校でいじめられ、いつもの様に泣いていたら……

 突然、クローゼットの中から謎の少女が現れた。

 フィクションの世界でしか起こらない様な摩訶不思議な出来事が、こうして実際に起きてしまっている。

(これは、夢なんじゃないか ?)

 何度か飛華流は自分の頬をつねってみるが、ちゃんと痛みを感じられた。それで、現実である事を確かめた。

 子供達が、自室で眠りについた頃……

 二人は、こんな話をしていた。

「ねえ、パパ……あの事って、隠しておく必要あったのかな ?」

 少女に腰を突かれながら、守莉は直志に問う。

「それはそうでしょ。あんな話をしたら、二人を混乱させちゃうが。……飛華流は特にね」

「まあ、そうだけどさ……どうせ、いつかは事実を伝えるでしょ ? だったら、質問されたあの時を話すきっかけにすれば良かったのに……」

 ソファーに染み込んだ汚れを拭きながら、直志は守莉に強く反対する。

「そんなん駄目だわさ。今は、話すにはまだ時期が早いって。精神的ダメージも、きっと大きいだろうよ。そもそも、これを子供達に知らせるべきなのかっていう判断も難しいし……俺自体、その事態をよく分かってないからね」

「あっ……ねえ、あの魔女の女の子にまた会えないかなー。……確か、エミナーちゃんだっけ ? この子の事は、エミナーちゃんに相談してみようよ」

 ほとんど全て、守莉の意見を無視してきた直志だったが、これについては首を縦に振る。

「うん……下手に警察に行くより、それが良いかもしれないね」

「それなら決まりだね。……あの子は凄く優しい子だから、この事を知れば絶対に助けてくれるはずだよ」

「そうなんだけど……一番の問題は、会えるかって所だよね。前だって、あれは奇跡だったし……マジで今でも信じられないもん」

 飲みかけのコーヒーをすする直志に、守莉は面白そうに言う。

「あっれー ? パパってば……非科学的なモノは信じないんじゃなかったのー ? 思いっきり、魔法に頼ろうとしてるじゃーん」

「それはそうだよ……基本的にはね。でも、あれは例外だ。実際にあの子が、魔法で事を解決した姿を目の当たりにしたからね。……俺だって、見れば信じるよ」

 守莉と目を合わせる事無く、直志はサラッとこう発した。

 もうしばらく、こんな幼稚で天然な夫婦の話し合いは続いたのであった……