Chapter 7 - 6
目を泳がせる守莉を、真誠はじっと覗き込む。
「嘘つけっ ! なんか、俺達に隠してるだろ……そいつについて、何か知ってるんじゃねーのか ?」
「この子についてっていうかね……まあ、ママ達にもいろいろと事情があるの」
そう答え、守莉が直志に「助けて」と目で訴える。
「はあ……いいから、二人とも早く寝なさい。明日、学校しんどくなるぞ。……ほら、お休み」
不満げな二人の息子を、直志は無理矢理に部屋から追い出した。
微かに開いていたドアをしっかりと閉め、守莉はこんな案を出す。
「ねえ……今日はもう遅いから、家に泊めてあげようよ」
「えー-っ ! どこの子かも分からんのに ? ……きっと、この子の家族がこの子を探してるだろうから、俺は警察に預けた方が良いと思うけどなー」
相変わらずの名口《なぐち》弁を、直志は炸裂させた。
「だからー、その子は飛華流の部屋のクローゼットを通じて異世界から来た子だって言ったでしょっ ! それなのに、誰にこの子を助けてもらうつもり ? ……とりあえず、一晩くらい泊めてあげてもいいでしょ ? 丁度、空き部屋もあるんだから……ねっ ?」
直志に負けず、守莉はそう言い返した。
しかし、守莉を直志は全く尊重しようとはしない。
「いや、それは違う。そんな判断を、簡単にしない方がいい。……もうお前もいい年した大人なんだから、子供と一緒になってあんな事を信じるなよ」
「もうっ ! 何で理解できないのっ ! 飛華流だって、あれはどこかから自分のクローゼットにやって来た子だって、はっきり言ってたのに……パパはさ、頭が固すぎるんだよ」
頑固な直志に、守莉は腹を立てた。
「いやいや、お前の発想が幼稚すぎるんだよ。俺は、オカルトなんて信じないから」
「あのね……世の中には、科学では証明できない不思議な事だって起こるんだよ。目に見えるモノだけが、全てだと思ってるなら大間違いだからね」
どんどんとエスカレートしていく二人の言い争いは、廊下まではっきりと聞こえていた。そんな親の会話を、子供達は部屋の前でひっそりと耳にしていた。
「……なあ、あのまま二人で無事に解決できると思うか ?」
うんざりとした様子で歩き出し、真誠は飛華流にそう尋ねた。
「うーん……まあ、後は二人に任せるしかないね。僕ら子供には、どうする事も出来ないんだし」
ため息交じりにそう言って、飛華流はのろのろと階段を上がっていく。彼の後を追いながら、真誠も深いため息を吐く。
「……俺はさ、パパに賛成なんだ。だって、確かにクローゼットの中から人間が出てくる訳ないだろ……ハア」