MARVELOUS ACCIDENT

Chapter 7 - 6

荻野亜莉紗2022/03/01 22:46
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目を泳がせる守莉を、真誠はじっと覗き込む。

「嘘つけっ ! なんか、俺達に隠してるだろ……そいつについて、何か知ってるんじゃねーのか ?」

「この子についてっていうかね……まあ、ママ達にもいろいろと事情があるの」

 そう答え、守莉が直志に「助けて」と目で訴える。

「はあ……いいから、二人とも早く寝なさい。明日、学校しんどくなるぞ。……ほら、お休み」

 不満げな二人の息子を、直志は無理矢理に部屋から追い出した。

 微かに開いていたドアをしっかりと閉め、守莉はこんな案を出す。

「ねえ……今日はもう遅いから、家に泊めてあげようよ」

「えー-っ ! どこの子かも分からんのに ? ……きっと、この子の家族がこの子を探してるだろうから、俺は警察に預けた方が良いと思うけどなー」

 相変わらずの名口《なぐち》弁を、直志は炸裂させた。

「だからー、その子は飛華流の部屋のクローゼットを通じて異世界から来た子だって言ったでしょっ ! それなのに、誰にこの子を助けてもらうつもり ? ……とりあえず、一晩くらい泊めてあげてもいいでしょ ? 丁度、空き部屋もあるんだから……ねっ ?」

 直志に負けず、守莉はそう言い返した。

 しかし、守莉を直志は全く尊重しようとはしない。

「いや、それは違う。そんな判断を、簡単にしない方がいい。……もうお前もいい年した大人なんだから、子供と一緒になってあんな事を信じるなよ」

「もうっ ! 何で理解できないのっ ! 飛華流だって、あれはどこかから自分のクローゼットにやって来た子だって、はっきり言ってたのに……パパはさ、頭が固すぎるんだよ」

 頑固な直志に、守莉は腹を立てた。

「いやいや、お前の発想が幼稚すぎるんだよ。俺は、オカルトなんて信じないから」

「あのね……世の中には、科学では証明できない不思議な事だって起こるんだよ。目に見えるモノだけが、全てだと思ってるなら大間違いだからね」

 どんどんとエスカレートしていく二人の言い争いは、廊下まではっきりと聞こえていた。そんな親の会話を、子供達は部屋の前でひっそりと耳にしていた。

「……なあ、あのまま二人で無事に解決できると思うか ?」

 うんざりとした様子で歩き出し、真誠は飛華流にそう尋ねた。

「うーん……まあ、後は二人に任せるしかないね。僕ら子供には、どうする事も出来ないんだし」

 ため息交じりにそう言って、飛華流はのろのろと階段を上がっていく。彼の後を追いながら、真誠も深いため息を吐く。

「……俺はさ、パパに賛成なんだ。だって、確かにクローゼットの中から人間が出てくる訳ないだろ……ハア」