Chapter 6 - 5
何かを閃いたのか、守莉は目を輝かせる。
「あっ ! もしかして……あのクローゼットは、どこか違う世界に繋がってるんじゃない ? それで、この子は何らかの原因でこっちに来ちゃったんだよ。きっと、異世界から来たんだわ」
「……いやいや、そんな映画やアニメみたいな事が実際にあるはずないじゃん」
そんな簡単に、直志は守莉の夢のある世界を否定した。そして、守莉が気に入らなそうに頬を膨らませていると、彼は現実味のある仮説を立てる。
「考えられるとしたら……飛華流がこの子を気に入って勝手に家に連れ込んで、普段はクローゼットに隠してたっていうのかな。それなら、無理な話じゃないでしょ」
それを聞き、皆は飛華流に疑いの目を向ける。状況を掴めていない飛華流に、直志は詰め寄る。
「飛華流……正直に言いなさい」
「飛華流……そうなの ?」
半信半疑といった様子で、守莉は飛華流に問う。その後に、真誠は心無い言葉を飛華流にぶつけた。
「飛華流キモッ !」
「えーっ ! 皆して、僕をそうやって変態な犯罪者扱いするの ? ひ、酷すぎるっ !」
ドン引きした表情を自分へ向けてくる三人に、飛華流は軽くショックを受けながら、そんな言葉を返した。そして、彼は言葉を続ける。
「ぼ、僕はそんな事してないよ……僕は確かに、この目で見て聞いたんだ。急にクローゼットから、何かが落下した様な音がして……この子がそこから現れた」
飛華流の発言で、皆は黙り込んでしまう。真剣な飛華流の眼差しから、彼が嘘をついている様には思えない。
そうして、しばらくの沈黙の後、守莉が口を開く。
「……飛華流もそう言ってるし、やっぱり異世界から来たんだよこの子」
すると、直志は直ぐに守莉の考えを否定する。
「いや、そんな訳がない……まず、クローゼットから生き物が出てくるなんて事は絶対にあり得ないんだし……原因を突き止める必要があるでしょ。こうなったのには、現実的な訳が必ずあるからね。もっと、真面目に考えないと」
大人しく二人の会話を聞いていた飛華流が、それに口を挟む。
「だけどさ……あの状況からして、クローゼットの中にこの子が降ってきたって可能性もきっとあるよ」
しかし、直志は飛華流の意見をサッと聞き流してしまう。
「……飛華流はもう、真誠と二階に行きなさい。この子をどうするのかは、二人が寝てる時にパパとママで話し合って決めるから」
「はい、分かったよ……その代わり、一つだけ教えてよ。……ママとパパってさ、その子と何か関りがあるの ?」
唐突に飛華流の口から発せられた疑問に、守莉は怪しいくらいに戸惑いを見せる。
「え、ええっ ? な、何の事かな……まさか、ママ達はこの子とは全くの無関係だよ。これは……本当だからね」