Chapter 2 - 1
この世の終わり……
そんな絶望で染まった顔を涙で濡らし、とある少年がベッドに転がっている。この世の全てを恨む様な表情を枕で隠し、カーテンの閉まった薄暗く狭い部屋で嘆いている。
「ううっ……僕なんか消えちゃえばいいのに」
心の底から湧き出た言葉を、彼は恨めしそうに漏らした。ただ一人、果てしない孤独を抱え……たった十二歳の少年は、日頃のストレスや不満をこうして目から流していく。
ドドドッ……ガッシャーーーーンッ !
突然聞こえた大きな音に、少年はビクッと飛び跳ねた。そして、何が起きたのかと、音がしたクローゼットの方へ怯えた瞳を向ける。
それは、まるで何かが落下してきたみたいな音だった。意味不明な状況に少年が頭を混乱させていると、クローゼットの中から生き物が動く様な物音が聞こえてくる。
ガサガサ……カタン !
それを耳にし、少年は良からぬ事を想像すると、自らを恐怖で支配していく。
(誰か居るのだろうか……まさか、泥棒や殺人鬼や幽霊 ?)
彼は足を忍ばせ、恐る恐るクローゼットへ近づいていく。きっと、ねずみか何かに違いないと自分に言い聞かせ、震える手でクローゼットを開けた。
その中に居たのは、虫や小動物なんかではなかった。なんと、そこには丸い角の様なものを生やした、小柄な少女の姿があったのだ。
おもちゃ箱から飛び出たぬいぐるみの山に、少女はちょこんと乗っかっている。そこから、ルビーの様な輝きのある綺麗な瞳で、青ざめた顔をした少年をじっと見つめている。
「ぎゃー-------------っ !」
あまりの恐怖に絶叫し、少年は勢いよく自室から逃げ出した。何度か足を踏み外しそうになりながら、階段を駆け下りていく彼は……どうして、僕のクローゼットの中から見知らぬ女の子が出てくるのかと、大きな疑問を抱いていた。
その謎の少女との未知の出会いが、これから起きる全ての始まりとなる……
ただのいじめられっ子なこの少年、上野飛華流はまだ何も知らない。日常に潜む非日常へと、己が少しずつ引きずり込まれていく事さえ……今はまだ気づけやしない。
(えっ ? 何だよこの急なホラー展開っ ! あれって、リアルな人形か ? きっと、誰かが買ってあそこにしまったんだよな ?)
(でも、さっきアレと目が合ったぞ ? それに、瞬きもしっかりしていた)
(もしかして、さっきのは生きた人間なの ? だとしたら、誰だよあの子……あの頭から生えた、角みたいなのは何 ? 頭の上で、カタツムリでも育ててるの ?)
飛華流の脳内は、パニックを起こしていた。