雨宿り(第一話)待たされている女

Section 12 - 第十二章 デュエット

進藤 進2022/02/04 06:10
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小さなオフィスに、キーボードを叩く音が響いている。


まるでデュエットの様に、二人の指が音を奏でている。


「コーヒーでも、いれましょうか?」


女の声に、男は嬉しそうに顔を上げた。

「いいね。」


男の好みの分量の砂糖とミルクをいれ、慎重に運んできた。


独立したばかりの事務所は、ゆったりとしたリズムで時間が流れている。


クライアントも評判を聞きつけて、順調に仕事を依頼してくれていた。


礼子はコーヒーを一口飲んで吹き出しそうになった。


「どうしたの?」


「何でも・・ないわ。」


島田の怪訝そうな顔を見ると、尚も女は笑いながら思った。


(やっぱり・・・似ているわ。)


二人の新しいオフィスの本棚には、古ぼけたピエロの人形が奇妙な微笑みを浮かべていた。 


やさしい、微笑みであった。


  ―雨やどり―

      待たされている女(完)