進藤 進2022/02/04 05:24
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ピアニストの様に激しくキーボードを叩いていた手を休めると、島田は入口の近くのブースに目をやった。


深夜だというのに、今日も残業している。

連日の様に、島田は働き続けている。


彼も瀬川にとって、都合の良い男であった。

従順でまじめで、期待以上の仕事をする。


まだ独身である。


島田は入社以来、一人の女性を見つめ続けている。

ひっそりと慎ましく、愛しみを持った瞳で。

 

ただ、自分の容姿に自信の持てなかった彼は告白できずに何年も過ごしてしまった。


彼は男としては幾分、背が低い方である。


仕事はできるのだが世の中の情報に疎く、どちらかというと「オタク」の部類に入る。

 

外見だって小綺麗にしていれば、やさしい顔立ちをしているのにコンプレックスからか、オシャレ等した事が無かった。


それでも、女のやさしさと美しさは自分だけが知っていると信じている。


これだけは自信があった。


(俺の・・・天使。)


この新しいソフトが完成したら、今度こそ告白しようと思っていた。


そして、モニターに向かい手を早めていった。

 

今、瀬川の横で眠っているとは知らず、愛しい礼子の顔を思い浮かべながら。