人食殺

Chapter 5 - 第四話 救出(桜編)

ウルリン2020/11/01 08:40
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 南の門にて・・・


 ニック王は南の門まで馬で来ていた。

 ニック王の馬は普通の馬と違いスピードがこの国で1番速い馬である。


 「ヒヒィーン」


 「うわっー」


 ニックは止まろうと手綱を引っ張ると馬が急に暴れだし飛ばされた。


 「いてて、ワシも歳を取ったものだな」


 落ちた先には門兵の遺体があり、臓物がグチャグチャで飛び散っていた。


 「凄い臭いだ。鼻が曲がる」


 門の周辺は強烈な異臭が漂っていた。


 「こいつらも暗黒界の奴にやられたんだな、気の毒に」


 ニックは周辺を見渡すと大きな門も粉々に破壊されていた。


 「こんなやつがこの国の外に何人いるのやら」


 1人にこんなやられては絶望しか感じない。そのまま門の外を見たが人がいる気配がなかった。


 「くそ、遅かったか」


 ニックは馬にまたがりもんの外へでた。


 外へでて何時間か走った頃にようやく人影のようなものが見えた。


 「まさか、あいつなのか…」


 ニックは馬からおり、ゆっくりと後ろから殺すことを考えた。


 「ドンッドンッドンッ」


 そいつの足音は響き歩く度に馬が跳ね上がるくらいだ。


 「これは…凄いなまともに立てないくらいだ。」


 ニック王は元々騎士で国では30年以上負けなしだ。だが相手は人間ではない化け物だ。勝てるかわからない。


 「なにか気配を感じるぞ、肉だ、肉の臭いがする。ゲヘへ」


 「しまった気づかれたか」


大男は振り向きニックを見た。


 「どうした人間。ゲヘへへ」


 歪な笑い声をあげながらニックに問いかけていた。


 「私を知らないとはな、この国の王だぞ。さあその子供をかえしてもらおうか怪物よ」


 「王だと?つまりお前を殺せばこの国は俺のものってわけか、たまらないな肉食べ放題じゃないか、ぐへへへへ」


 「俺を殺すだと?簡単に言うな怪物、とりあえず、その汚い手から桜を放してもらおう」


 2m近くある怪物は桜の顔をまた舐める。


 「はぁー最高だよ 早く食いたい肉肉肉ー、子供の肉はさしぶりだ グへへ」


 「怪物、桜になんてことを...」


 そういいながら腰の鞘にある2本の剣のうち1つを選んだ。


 「今夜は、この月の光剣が役に立ちそうだ」


 今夜は月が綺麗に見える。ニックは剣を月に向けた。すると剣は月の光を吸収し閃光弾のように光った。


 「ピカーン」


 「ま、眩しいなんだその剣は」


 大男は眩しさのあまり、手を顔に抑えた。抑えている間に桜は地面に落ちた。


 「あぁー肉が落ちた俺の大事な子供の肉がぁぁぁーーー」


 大男がぶつぶつ言っている間に、ニックは月の光剣で足を切り落とした。血が吹き飛ぶ。


 「あぁぁー、人間ごときに私の足が切断されるなど...痛い、痛い」


 「たいしたことなかったな、お前にこの私を倒すことはできない。」


 「肉、肉、肉、肉ーーー うおぉぉぉーー」


 怪物は叫び左の拳でニックをめがけて打つ。しかしニックはその拳の上を走り左腕を切り落とした。さらに首の後ろに回り右腕を切り落とす。そのまま怪物は地面に倒れた。


 「桜は返してもらうぞ」


 「お、お前たちは所詮、肉でしかないんだ...俺たちの餌だ、なのに...」


 言葉を言い終える前にニックは心臓をぶっ刺した。怪物からは血と消化しきっていない人間の内臓や肝臓などいろいろな臓器がでてきた。


 「吐きそうになるくらい凄い臭いだ」


 その後、ニックの月の光剣は、光を失い、月の光が元に戻った。


 「さ、桜、しっかりしろ!」


 ニックは桜に何度も呼び掛けた。


 「マ、ママ...ママどこなのいかないで、ママ―」

 

 「はぁはぁ」


 桜は悪い夢でも見ていたのか凄い汗をかきながら起きた。


 「桜、目が覚めたのか。ここは国外だ、どんな敵がいるかわからないから急いで国に戻ろう。街の反乱は、騎士長パルンに任せてある。」


 「王、王様?どうして王様が?あのね私ね怖くて怖くて...」


 桜は泣き顔でそう答えた。


 「もう大丈夫だ、あの大きな奴はもういない」


 「ほんと?」


 「ああ」


 「ありがと」


 桜はありがと、と言うと同時にまた気を失ってしまった。


 「さてと、王都に帰るか。我々の希望も救ったことだし」


 数日後-------------------------


 王都にてパルンと槙場と王の3人で会談が行われていた。


 「今後どうするか、桜には大男の存在を知られてしまった。」


 「うーん、娘は気を失っていたから、その時の記憶があるかどうかにより判断なされては?」


 「危ないところでした、槇塲を助けられて良かったです。ところでニック王1人であの大男を倒されたのですか?」


 「そうだパルンよ、弱すぎるくらいだったぞ、あれに門兵がやられるとはなお前の部下は弱すぎる。鍛え直せ。」


 「分かりました、申し訳ありません。私直直に鍛え直します。」


 「ウム、ワシも手伝おう」


 「二ック王も?そんなことをさせる訳にはいきません」


 「いいじゃないかやらせてくれワシも長くないからな、話しは変わるが槇塲はしばらく王都で暮らすがよい奥さんのことは残念だったなあ。桜がずっと呟いていたよ」


 「そうさせていただくと幸いです。このまま街に帰ればまた襲撃があるかもしれない...」


 「まあ今夜はワインを皆で飲もう」


 「ワインなど何年ぶりか感謝します。」


 「娘はきっと我々人類の希望だと信じている。」


 「それはワシもだ、なんたってお前の娘だからな」



 暗黒界ではーーーーーーーーーー


 レックは非常に怒っていた。


 「奴は死んだのか?」


 「ハッ、ニック王が殺した模様です」


 「それは良かった処分する手間が省けたな」


 「子供は?」


 「ニック王が連れ帰りました。」


 「そうか...子供の肉は食べたかったがまあよい...私としても勝手に人間界にいき勝手に殺したりしてもらっては困るのだよ。もし我々の存在が人間たちにばれたらどうなるか。パニックになりいい肉は育たないそうだろ?」


 「その通りです。レック様」


 「そこでだ、今回のこのような状態を招いたのは誰だ?お前だよな、奴らの管理をしっかりしろといっただろ?」


 「申し訳ございません、実は腹がすいていまして...見張っていませんでした。」


 「なるほど、そうか話にならん」


 その言葉の後、使いの者はあとかたなく消された。