人食殺

Chapter 3 - 第三話 勲章の先には

ウルリン2020/08/25 09:15
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 今日は年に一度の功績発表を行う日、選ばれたものは王の住む王都で働くことが出来て、各職の代表となることが出来る。


「これより功績発表を行う。皆、今年も1年良く頑張ったな。それでは呼ばれたものは壇上を上がり私の前へ来るのだ」


 全ての民と権力者が願う中、ニック王は発表を始めた。


「騎士・兵士賞はパルン、科学賞は槇塲まきば、教育賞はルーシア、料理長賞はサム以上だ。」



 各賞に呼ばれたものは王様から1人ずつ勲章が与えられる、勲章はただの勲章ではなく、それを付けている者の部下たちは、勲章を付けてるものに逆らってはならないという法律がある、逆らった場合はもちろん牢屋いきとなり、王の判断により死刑もある。



「やっぱりあなたは凄い人だわ」


「パパ凄い!」


 桜とママはとても喜んでいた。

 桜のパパとは科学賞を受賞した槙場まきばのことである。科学が物凄く王様の目にも留まった。パパの功績は凄く嬉しかったが、教育賞にルーシアが選ばれたのが不安でしかなかった。明日からの学校どうなってしまうんだろうか。賞に選ばれた理由はルーシアのクラスからたくさんの生徒を転校させたことか...

きっとそうである。そしてルーシアが教育賞を取ったことにより教育方針はルーシアが決めることになる。勿論従わなければ牢屋行きそして死刑だろう。



「勲章を与えたお前たち期待しているぞ、この勲章はただの飾りではないこの国を守るため。安全の為だ。よろしく頼む」


「これから一年兵士育成に励み国の治安を守ります!」


「今年一年以内に、最新機器の完成をめざし、我々人類の安全を守ります!」


「もっとよりよい教育プランを作り、最高の教育を...そして提供を...すべては未来の為に」


「これからも王様の為、美味しい食事を提供します。」


 各賞を受賞したものは意気込みを話した。

 1年に1度、変わる者も入れば継続して勲章を手にするものもいる、それは貢献次第だ。特に国外に関することはとても重要となる。





 日が落ちてきた。



「パパーおかえりー」


 桜はパパに玄関で飛びついた。


「桜、ただいま」


 パパは優しく桜にただいまを言った。


「おかえり。今日はご馳走よ」


 ママは笑顔で槙場を迎え料理を運んでいた。


「あんな大勢の前でパパも表彰されたもんね!凄いよパパ大好き」


「桜は将来どうしたいんだ?」


「私は...」


「桜も科学者にならないか?お前なら将来、科学賞をきっと取れる」


「私が科学者に....なれるのかな」


「桜にならきっとなれる、俺の娘じゃないか自信を持って」


 実際に桜は今までパパが科学者ってことは分かっていたけど、何をしているのか一切しらない。でも王様の友人であるパパなら何かわかっているかもしれない。学校のことやクラスメイトの転校について。このご馳走食べ終わったらパパに聞いてみることにした。

 目の前のご馳走は生まれて初めて食べるものばかり、普通では食べれない牛さんのお肉やなんだろう大きなエビの細かく切ってぷりぷりしている...現代で言うとお刺身!桜はそれを醤油に付けて食べた


「美味しい、このエビ」


「これも皆、パパのおかげよ」


「パパありがと」


 桜は満面の笑みだった。生まれて初めてこんな美味しいのを食べたのだから。いつもは、パンとハムだけである。桜の家は貧乏ではないが庶民はこんなものである。


「ママ、御馳走ありがとうな」


「あなたもお疲れ様!」

 ママはとても喜んでいた、勲章を貰った者の家庭には、王から1年間高級な食材が配布される。だからこんなご馳走が作れたのだ。しかし、勲章を貰えなかった者からの怨みを忘れてはならない。勲章を貰えなかった者は、また一年良い食事でパンとハム、悪い時は雑草が食事だ。そんな食事を朝、昼、晩食べて勲章を持っている者に従わなければいけない....苦痛だ...

 ママは食事を済ませ寝室に入った。パパは毎晩、地下で研究をしている。桜はさしぶりにパパの研究室に向かった。


「ギィィィ」

  

 扉はきしむ音を立てた。



「ゲボゲボ、何この部屋前来たときよりホコリ凄い。」


「桜! まだ起きてたのか、こんな時間にどうしたんだ、パパと寝たいのか?」


「ち、ちがうよ!桜はもう一人で寝れるもん」


 桜は顔を真っ赤にしていった。


「桜も大きくなったんだな」

 

槙場も安心したような声で言った。


「そうよ!私だって成長したの、それよりね実はパパは何の研究をしてるのか気になるのもあるしね、あと今日クラスメイトが転校したって言うんだ」


「そうか...表向きにはそう言ってるのか、ごめんな桜、パパの研究は極秘なんだ。桜にだって教えられない。」


「おもてむき?どういうことなのパパ」


「桜は選ばれないように私が王に言っておいたから安心しなさい」


「えらばれないように....分からないどういうことパパー」


 桜はどんどん疑問が出てきた。選ばれるとか選ばれないとか選ばれると裏で何かされるのではないか。



「パリン」


 ガラスの割れる音


「ゴォォォォォォォォォォォォォー」


 凄い音だ。



「なんだ?今のガラスの割れる音は....」


「なんか煙の臭いがすごいよパパ」


「くそ、勲章を貰えなかったやつの怨みか。桜、良く聞くんだ私の親戚の所に逃げるんだ。そこには秘密の部屋がありこの国の謎が書いてある、わかったかい?」


「ちょっとまってよ、この国の秘密?わからないどうなってるの?パパ、パパはどうするの?一緒に逃げようよ!」


「お前たちが先に逃げるんだターゲットはきっと私だ。だから、安全が確認できたら私もすぐ行く、私は地下通路に隠れるから先に逃げるんだママと」


「いやだ、パパも一緒に逃げるの!」


「桜!言うことを聞くんだママと先に逃げるんだ、ほら、早く」


「...」


 桜は地下から扉を開けて階段を上り寝室にいるママと逃げようとしたが…


「う、うぅぅぅー」


「ま、ママ?」


 ママは外の奴らが投げた火炎瓶で体は火だるまになって燃えていた、もう助けることはできない。

 桜には泣いてる暇もなかった一瞬で火は天井まで上り燃えた、煙を吸わないように屈んで玄関からでたが、そこには民たちとは思えない。まるで皆、怪物に見えた。皆が桜をにらみつける。刃物や火炎瓶を持った子供や男、女たちがいた。恐らく科学者の父を持つ家族だろう、桜が出てきたとき、そいつらは襲ってきた。怒り狂っていた。


「まてよクソガキ。首を切って十字架に掛けてやるよ」


「お前のせいだ...よこせよ科学賞..」


「出てきたわ卑怯者!」


「皆で殺せーー」


 民の人たちが桜に罵声を言ってくる。






 桜は怖くて怖くて必死に逃げた。


後ろを見ずに全力で走った。何キロだろう街から随分遠くまで走った。裸足で服も火で半分以上焼けていた。顔も汚れている。


 ママの火だるまの姿が脳裏に浮かぶが泣いていられない。走り続けた。学校に遅刻すると思う感じ以上に全力だ。

 

 しかし逃げた先は斧を持った大男?なのかわからない毛がふさふさ生えた奴にぶつかった。


「痛てっ」


 桜はそのまま尻もちをついた。


「美味そうな子供だな」


 怪物はよだれを垂らしながら桜をつまんだ。


「離して離してよ」


 桜はつままれながらも暴れた。


 怪物はずっとにやにやしてよだれを垂らしている。



「よーしやっとおいついたぞ、このクソガキ、コロ..」


桜を追ってきたただ一人の男は殺すと発しようとしたが声がでない。


 3mはある怪物が、斧を持ってヨダレを垂らしながらにやにやしてるのだから...その後、一瞬で男は踏み潰され、体から腸やあらゆる臓器と血が飛び散った。


 桜はそれを目にし声がでる前に気絶した。



「これだから人間は、雑魚いくせに俺様に向かってくるとはな、まあいいこんな美味そうな子供が手に入ったんだ暗黒界に持ち帰ってじっくり食うか頭から足まで。」



 怪物は桜の体を舐めた。



 「あーこの肉の臭いたまらないなー 早く食いてーよ」





 そういいながら桜を抱えて、街とは反対の方向にある南門に歩き出した。