Chapter 6 - Anxiety and Begin
「さて君の名前を教えてくれるかな?」
...………答えないのか?
それとも、答えられないのか?
「僕に名前はない。」
いきなり返したからビックリしたぞ。
まったく しかし名前が無いとはどういうことだ?
「何を言っている?人には必ず名前があるだろう?」
「僕には名前なんてものはない。名前ができる前に母と父は死んだ。」
なんとそこまで貧しかったのかあの村は。
「名ずけ親すらもいないというのか?」
「僕の村はごみの掃き溜めのようなところだ。親が名付ける前に死ぬなんて当たり前だ。親戚も自分が生きていくので精一杯なのさ。」
ゴミの掃き溜め...かこんな子供にそこまで言わせるほどの村だとはまったく、酷いものだ。
「そうか...私はアズエルだ」
「よろしくアズエルさん」
まだ歳が10歳程度なのに村を離れ旅をする...か無慈悲だなこの世の中も。
と歩いていると街道が見えた。
「あれに沿って近くの街に行くぞ。」
「分かりました」
うん?後ろから音が聞こえたな。
「後ろからなにか来るぞ警戒しろ」
「...僕、何も出来ないんだけど?」
はぁ...
「...最悪の場合逃げるからその準備をしろ」
「なるほど」
「来るぞ」
ガラガラガラ ヒヒーン
「もし、旅のお方、お困りでしょうか?」
「何者だ」
かなり奇抜な帽子と服を着た奇妙な男だ。
「私はしがない帽子屋でございます。よろしければ近くの街までお送りしましょうか?」
「ではなぜこのような辺境の地にいる?」
「私は最近噂の黒い国に行く途中なのです」
ふむ、こいつについて行けば黒い国に行くことが出来そうだ、だが油断は禁物だ。相手がなんの目的で行くのか分からないうちは...な。
「そうか、そこへ何しに行くのだ?」
「それは...珍しい帽子がないか、とね」
嘘だろうな。
「ほんとうか?」
「はぁ、嘘はつけなさそうだ本当はただの好奇心さ糸と黒い雲に囲まれた国、見てみたいじゃないか!」
ガキかっ
「本当なんだな?」
「あぁ今度は本当さ」
「ならいい、私たちを馬車に乗せてくれ」
「いいだろう」
あれ?主導権逆だろ?なんであいつ白状してホントの理由言ったんだ?まぁいいか。
「すまない」
私とアレン(とりあえず名前が無いと不便だから付けた)は馬車へとのったのであった。