アルカナ物語

Chapter 5 - 愚者、不幸な青年と会う。

露草 桔梗2020/08/13 16:29
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 「んー、今日はどこに行こうかなぁ...。」


 ここは、ソード領の辺り。近くに町、村などはなさそうだったため野宿をし、朝を迎えたため、テントと焚き火を処理しつつそんな事を呟いていた。すると森の奥の方からかすかに人の声が聞こえてきた。


 「...~い...た...けて...ぇ~」


 「?なんか...聞こえた?」


 「だれか~...いたら...じしてくれぇ~~」


 若干ではあるが、やはり聞こえてくる。助けに行こうかな、というとまた近くで声が聞こえた。


 「あ~!だれか来てくれたね!ありがとう!」


 しかし、いくら周りを見渡してもいない。罠か...?と考えた瞬間、


 「あの~...上見てくださいよぉ~...。助けてぇ...。」


 頭の真上に居たのは、ブロンズ髪の青年だった。足がつたに絡まり、宙ぶらりんになっている。


 「やれやれ...。僕が居なきゃどうするつもりだったんだい...?」


 仕方なく、ツタがかかっている木を前蹴りで倒すと青年は降りられたらしい。


 「じゃあ、僕はこの辺で。次は絡まるなよ~。」


 そういって立ち去ろうとした。が、


 「あれれ...?よく見たら"愚者"じゃないか?なぜここに居るんだい?」


 不意に聞かれた。焦った愚者は...


 「...なぜ"そのこと"を...まぁいいや、力づくで聞いてみるよ...。」


 「わわ、ちょっとまt」


 愚者と話をしようとしたが、いきなりグーパンチが飛んできた。強烈な突風が吹くと、周りの落ち葉が拳の方向に螺旋を描いて突き抜けた。


 「うわっちょ!待ってってば!僕も"大アルカナ"だってば!忘れちゃったの?"吊るされた男"!」


 「...!!」


 「思い出してくれた?オーディール・アルベルトだよ。...アルって呼んで貰えるといいかな?」


 必死に思い出してもらうオーディール...しかし、愚者の記憶能力は少し弱かったようで...


 「んー...。やっぱり、覚えてないや。よろしくなーアル。」


 自分の団体のメンバーくらい覚えてくれ...!たったの21人だろ...!!と心の底から呆れたアルであった。