
プロローグ 誕生日プレゼントは Good luck!?
---
HOW WE SURVIVE
平坦な戦場で
IN THE FLAT FIELD
僕らが生き延びることを
---
俺の名前は黒川エルピス。まだ|二十歳になったばかりの大学生だ。座右の名は、「memento mori」。ラテン語で「自分が(いつか)必ず死ぬことを忘れるな」、「死を忘るなかれ」という意味の警句だ。
明日死ぬかもよ、って思って、いつ死んでもいいようにこれまで生きてきた。
だからっていうわけじゃないが、俺をその辺の大学生と一緒にしないでほしい。それは、別に俺が少し正確がねじ曲がっているとかひねくれているからというのも若干はあるだろうが、それよりも俺には、まさに常人とは一線を画した能力があるからだ。
それは、幸運の女神《フォルトゥナ》、といわれている能力だ。この能力は、一言でいえば、幸運《Lucky》、であること。要は、運が良いってことだ。
こう聞くと「へ?それって、ただ運が良いっていうだけなんだよね?」と笑われることが多い。
確かに、その通り。幸運の女神《フォルトゥナ》の能力は運が良いこと。要するにLuckyっていうだけだでしかない。
何だかアメコミに出てくるような異能力とは、大分趣が違うのは認める。でも、だからといって、この能力が、しょぼいとは勝手に決めつけないで欲しい。
実際、これまで俺が戦ってきた異能力者も大抵は俺の能力が「幸運の女神《フォルトゥナ》」と聞くと拍子抜けして嘲り出すことが多かった。
でも、戦っているうちに、俺の能力が一番強い《チート》な力だということを思い知ることになる。
もちろん、この幸運の女神《フォルトゥナ》なんていう能力は生まれつき持ってたわけじゃない。
ちょうど半年前、二十歳の誕生日を迎えた前日に、何だかよく分からない生き物、まあ陳腐な言葉で表現すれば悪魔のような存在にもらった能力だ。
誕生日祝いのようなものといっても、自分が今日は俺の誕生日だなって思うより、ジャストなタイミングで悪魔が現れた。
明日は自分の誕生日だし、大事な合コンがあると思い、少し早めに寝ようとパジャマに着替えて、ベットに寝転んだところだった。
ちょうど時計の針が深夜12時を指し示すと同時に、悪魔は現れた。そして、そいつは、俺にこう言い放った。
「お誕生日おめでとう御座います。エルピス様。貴方様には素敵なプレゼントをお渡ししたいと思ってやってきました。それは|幸運の女神《フォルトゥナ》です。この能力は、幸運《Lucky》を手に入れることが出来る力で御座います。」
「は?幸運の女神《フォルトゥナ》?っていうか、お前今どこから来た?っていうか、人間じゃないよね?」
「私が何者であるかはさておき、貴方様にはこの能力が授かる代わりに、これから戦い抜いてもらわないといけません。」
「戦い?一体何をいっているんだよ。全然意味分かんねーし。」
「意味は自ずと分かることになるでしょう。これから貴方様は日々同じような異能力を持った人間と命を賭して戦っていかなければなりません。そして、これからちょうど1年後の同日。貴方がその戦いに生き残っておられれば、貴方のその能力は一生失われません。」
「1年後まで生き残っていれば?って、逆に言えば、俺は1年以内に死ぬかもしれないってこと?」
「左様でございます。貴方様以外に貴方様とは違った異能力を持った人間と貴方様は戦い、生き残らなければなりません。破れた場合は、死ぬだけで御座います。」
「異能力って、一体なんだよ。っていうか、俺のその異能力って、ただの幸運《Lucky》なだけなの?そんなのさ、弱くないか?異能力っていうなら、よく映画とかで観るようなスーパーヒーローの持っている力みたいにさ、空を飛べたりさ、モノを動かすような念動力とかさ、相手の心を読んだりとかさ、なんかもっとましなの色々あるじゃない。スパイダーマンだってもうちょっとマシじゃねえの?幸運さ《ラッキー》ってなんだよ。そんな力で戦って勝てるわけないじゃん。それとも、なにみんなこういう類いの力なの?他にはどんな力があるんだよ。」
「申し訳ございません。その質問に全てお答えすることは出来かねます。しかし、少なくとも貴方様にお伝えできることは、それぞれが全く違う種類の異能力を持っております。少なくとも、貴方様と同じ異能力をお持ちの方はいないように、皆様、それぞれ独自の異能力をお持ちです。」
「えー。それって俺なんだか滅茶苦茶不利じゃない?っていうか、無理ゲー臭くない?っていうか、そもそもどんだけ相手がいるんだよ?何人俺みたいな奴がいるんだよ?」
「申し訳ございません。その質問にも全てお答えすることは出来かねます。但し、少なくとも、両手には収まらない数の方がいらっしゃるということは間違えございません。」
「おいおい。それって、マジで無理ゲーだわ。どうすんだよ。俺、今日誕生日なのに、こんなの、死刑宣告みたいなもんじゃねえか。ふざけるのもいい加減にしろよ。」
「説明は以上になります。それでは、エルピス様のご武運を祈っております。」
と、言って悪魔の姿はみるみる空気に溶け込むように消えていく。
「ちょ、ちょっと待てよ。これなんかのドッキリだよね?それとも夢?俺、今夢見てる??」
騒いでみたが、アッと言う間に悪魔は消え去ってしまった。そして、思わず強く抓った頬は痛いばかりで、このリアルティは半端じゃない。これは夢なんかじゃないと、全身が告げているようだった。
一体、今は何時なのだろう?サッと壁に掛けられた置き時計を見ると、時間はちょうど深夜の12:10になっていた。10分。ほとんど時間は過ぎていないのに、眠気はすっかり吹き飛んでしまった。というか、眠る気なんてなくなってしまった。
こうして俺の戦いは始まった。
0 comments
Be the first to comment!
This post is waiting for your feedback.
Share your thoughts and join the conversation.