そこから一学期中、ずっと怪我や物を失くすことが絶えない日々を送った。
いじめはどんどんエスカレートしていった。が、夏休みに入ってさえしまえば──そう思って耐えていた。
結論から言うと、甘かった。
夏休み初日。
やっと解放されたと思っていたところに、自宅のインターホンが鳴る。
嫌な予感がした。
そういう予感は当たるもので、インターホン越しに見えたのは加害者側の女子生徒数人。
両親は仕事に出ていて留守。家には私だけの状態だった。
「ちょっとお散歩しよっか」
有無を言わせない言葉と共に、私は家から連れ出されることとなる。
そうして連れてこられたのは、夕方の帰宅ラッシュで混んでいる駅だった。
手首を、爪が食い込むようにギリギリと掴まれながら、私はホームへと連れてこられた。
「あっ、危ない!」
私の手首を掴んでいた生徒が、大声をあげた。
──と同時に、私の身体は線路へと放り出された。
ゆっくりと遠ざかる同級生たち。ニヤニヤした嫌な笑みの中に、安藤の姿もあった。
私は、身代わりにされたのだ。
いじめるのなんて誰でも良かった。それがたまたま安藤だっただけで、何かキッカケがあればいつだってその席は交換されてしまう。
これは、不慮の事故だ。
私が線路に落とされたことではない。
私が、安藤を庇ったことだ。
だって、それ以外に何と言えば良い?
私の安っぽい正義感は、私自身を殺したのだ。