詩「古い雪」


有原野分2024/09/04 02:52
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・詩人会議2024年7月号に掲載された作品です。 ※2024年2月の作品です。 読んでいただけると幸いです。 いいね、スキ、フォロー、シェア、コメント、サポート、支援などしていただけるととても嬉しいです。 これからも応援よろしくお願いします。

詩「古い雪」

線一本から伝わる

指先のかすかな不安

年賀状を持つ手が揺れる

もう幾日と会っていない誰かの夢に

夕暮れに乖離していく現実

埃の残り香が

雪のように落ちて

積もる歳月の

失っていくものだけが

溶けることもなく

ただ冷たい


糸が切れたように

電話が途絶えた

耳鳴りの余韻は

冬だからじゃない

静寂に聞こえる

張りつめた音

沈黙の言葉だ

白い空を眺めて

窓の外を歩く人が

煙草を口にしているかのように

白い息を吐く

夜明けの瞬間だった

太陽が煌々と照らす前に

それらが汚れてしまう前に

ふっと溶けるように消えていく

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