回避とサイコとツトム外伝~ゾムビー~

Chapter 47 - 第四十七話 過去の真実

いぶさん2021/04/03 13:00
Follow

『どうやら、知ってしまったようだな……』



隊の幹部が現れた。

『お、お疲れ様です!』

隊員は敬礼する。

『まぁ良い、他言は無用だ。もし話が漏れた場合にはお前達を処刑する』

『! ……ハッ!!』

幹部の言葉に、更に一礼する。

『ソモソモ、人間ガ宇宙ニ来ル必要ハ無イ』

ゾムビーの親玉は話を進める。

『人間ニハ地上、地球トイウ適シタ場所ガ有ルデハナイカ? 我々ニハ宇宙トイウ場所ガ有ル様ニ。ソノ地球ノ環境ヲ破壊シ続ケ、居心地ゲ悪クナッタラ地球カラ離レテ宇宙ニ出テコヨウナンテ、大層ナオ話ダトハ思ワンカ?』

『火星移住計画のコトか?』

隊の幹部が口を開く。

『!? モウ他ノ星ニ目星ヲ付ケテイルトハ……ハハ、オメデタイ連中ダ』

『私達、現場対応する者は上の指示に従うまでだ』

隊の幹部は不満気に言う。

仕切り直して、ゾムビーの親玉は口を開いた。

『マア良イ、人ガ集マッタノデモウ一度言ウ、地上ニ散ラバッタ、全テノ石ヲコチラヘ返シテモライタイ』

『!? おい、話はその方向で進んでいるのか?』

隊員達に問う隊の幹部。

『いえ、回答はまだ出しておりません』

隊員は答える。

『よし、分かった』

ゾムビーの親玉に対して目をやる幹部。

『その申し出に対して、我々人間にどんなメリットがある?』

ゾムビーの親玉が口を開く。

『全テノゾムビーヲ地上カラ宇宙ヘ帰還サセ、モウ二度ト人類ヲ攻撃シナイ様ニサセル。事実上ノ停戦協定トイウヤツダ』



『!』



幹部は驚いた後言う。

『信憑性はあるのか? その条件に』

対するゾムビーの親玉。

『今回3ツノ石ヲ返シテ貰ッタノダガ、現ニ我々ハ攻撃ヲ止メテイルデハナイカ?』



『!?』



(回想)

『今回ハ、ココマデデ勘弁シテヤロウ。シカシ、我々ハ諦メンゾ。アノ石ヲ……。モウ7日、一週間後ニマタ戦力ヲ立テ直シテキサマラヲ襲ウ。セイゼイ余命ヲ楽シムンダナ。ハッハッハッハ』

(回想終了)



(確かに、あれから一週間以上月日が経過している。そして宇宙通信所から目立った報告もない……信じて……いいのか?)

『ドウスル?』

ゾムビーの親玉が問う。

『……(やむを得ん)』

暫く考え込んで、幹部は口を開いた。

『分かった。承諾しよう』

ニヤリと笑うゾムビーの親玉。

『オ前ガ聡明デ助カッタゾ。アノ3ツノ石ヲ授カッタ時点デ、コチラハソチラヲ信用シテイル。期限ハ問ワナイ、ダガ早急ニ頼ムゾ』



「ジージー、……プツン」



通信が途絶えた。

『やれやれ……ゾムビー退治よりは安全そうだが』

ぼやく幹部、隊員達を見る。両手を軽く上げ、手のひらを見せる隊員。

『時間は倍以上に掛かりそうだ』





日本――、



狩人ラボ、第2訓練場。

「? ……あれ……?」

戸惑う主人公。

「な……!?」

「だい……」

身体、逃隠も呆気に取られる。

「リジェクトが……出せない……」

主人公は訓練場で、リジェクトの威力を測ろうとしていた。また、何秒に一回打てるか、も知っておこうという目論見もあった。しかし――、

「何でだ……? 出せない……」



「…………」



身体は考える。

(超能力の威力や精度は精神面、メンタル面での調子に大きく左右される。隊長を自らの手で葬ってしまった過去を、ツトムはどこかで引きずっているのか……?)

「リジェク……」

「もういい! ツトム!!」

リジェクトを放とうとする主人公を遮る様に言う身体。

「!」

「次はグングニルだ、出来るな?」

「ハイ! やってみます!!」

身体の言葉に答える主人公。

「グングニル……!」

しかし――、



「シーン」



何も起こらない。

「そ、……そんな……」

落胆する主人公。



「……ダメだな」



身体が口を開く。

「隊長の事を引きずっているな? ツトム」

「……はい。多分、心のどこかで引っかかっているモノがあるんだと思います」

力無く答える主人公。

「このままでは全く戦力にならない。それどころか、ゾムビーにやられて、犬死してしまうのがオチだぞ?」

「はい……切り替えよう切り替えようと思ってもやはり、今まで支えてもらったスマシさんを助けられなかったのは……大きくて……」

主人公は弱々しく返す。フ――っとため息をつき、言う身体。

「そうだな。……超能力の発動は精神面が強く関わってくる。精神状態が悪ければ、力の強さも弱くなってしまう事だってある。……仕方ない。ツトム、これから暫く、狩人の活動を休め。今のままじゃあ、何もできない」

「……分かりました」

身体は最後に言う。

「俺も隊長の事は今でも夢に出るくらい後悔しているんだ。しかし、体術を使って戦える。お前は、超能力に頼るしかないんだ。その超能力が使えないんじゃあ話にならない。力が戻るまで、心を休めるんだ」

「分かりました……失礼します」

力無く答え、ラボを去ろうとする主人公。



「おイ!」



顔を上げると、逃隠が居た。

「俺ハ、待ってるからナ。お前ハ、狩人に必要な人間だと思っていル。じゃあナ」

「う……うん!」

少し明るくなる主人公。





「ウイ――ン」





ラボを出る主人公。

(これから、どうしようか……? 心を休めるって言われても……)

ふと、爆破の背中がよぎる。

「忘れられるはずがないよ……スマシさん……」

主人公は暫くその場に佇んでいた。





すると――、

「ブー、ブー」

携帯が鳴った。

「尾坦子さん……」

尾坦子からのメールだった。

「『内定もらったよ! これからお仕事頑張るからね! 電話いいかな?』かぁ……『いいよ』っと――」



尾坦子との電話で、超能力が使えなくなった事を話した主人公。爆破との一件を、今でも引きずっているのを痛感していた。そこで尾坦子は言う。



「嫌な事だったら逃げたって良いんだよ? でも、キミが本当にしたいコト、本当にしたかったコトは何かな?」



「僕が……したかったコト……」



思いは巡る。



「僕は……戦っていきたい……皆を守りたい!」



主人公は力強く言う。

「そっか、ならやるコトは決まってるね?」

「超能力を……また使えるようになる!」

尾坦子に返す主人公。

「その為には何かキッカケが必要だね……うーん、アドバイスがなかなか浮かばないけど、何かキッカケを見つけよう! 何かいいアドバイス見つかったら、即連絡するね!」

「ありがとう、尾坦子さん。きっかけ……か。僕もそれを早く見つけるよ、じゃあ」

「うん、バイバイ!」

「ピッ」

電話は切れる。



「きっかけ……きっかけ……と」



ふと机の上に視線をやる。



そこには前回の戦いで手の甲のマークだけとなった、手袋の破片があった。



「そうだ!」



主人公は声を上げた。

「手袋をもう一度作ってみよう……何か変わるかも知れない……」