Chapter 46 - 第四十六話 交渉
「!」
身体は動揺した、と同時に
「それなら話は早いな」
今をベストなタイミングと見込んだ。
「今回、あの石をロケットに入れて宇宙に還す。その代わりに今後、人間を襲って来ない様にしてもらいたい。どうだ?」
『……』
数秒の時間が過ぎた。そして、ゾムビーの親玉は口を開く。
『直グニハ、答エハ出セナイ。ソチラノ都合モアルダロウ……マズハ三ツ。三ツノ石ヲ宇宙ニ送ッテクレルカ? 話ハソレカラダ』
「分かった。早急に三つのあの石を宇宙へ送る。それが確認できたらこちらを認めてくれるかどうか、その段階に入ったと見る」
『ヨロシイ。ソレデ手ヲ打トウ。ソレデハ、サラバダ』
「ジー、ジー……ブブー」
再び通信回路に異変が。
「ジージー」
『繋がりマシタか?』
N州支部の者がモニターに映った。
『今のやり取りデスが、こちらにも同じ映像、音声が流れていた為理解する事が出来マシタ』
『そうか……』
身体は返す。
『まずハ、三つ……デシタね。あちらから通信を行ってきたのが幸運デシタ。早急にロケットを手配シマース』
『……頼む』
『分かりマシタ。デハ、失礼しマース』
『ああ、じゃあ……な』
「プツンッ」
モニターがオフになり、通信回路も遮断された。
「副隊長! やりましたね。こんなに上手く事が運ぶなんて!」
主人公が明るく身体に話し掛ける。
「……」
俯いた様子の身体
「副隊長……?」
身体の左手を見ると、強く握った拳が。握り過ぎて血が滲んでいた。
「! 副隊長……」
「怖がらせてしまって、悪かったな」
身体が口を開く。
「俺とて、不本意だったんだ。いくら隊長の意向とは言え、隊長を殺したヤツらと和解なんて――、な。ゾムビーも、現場を知らないあの支部の者も嫌いだ……」
「……」
黙り込んでしまう主人公。
そこで、
「副隊長ォ! それでも! 前を向いて行くしか、無いんだい‼」
逃隠が口を開いた。
「隊長は! 和解を望んだんだい!! だから……だから!」
両目は涙で滲んでいた。
「分かった」
身体は逃隠に近付きながら言う。
「悪かったな、これじゃあ、隊長に顔向けできないな」
「ぽん」
逃隠の頭に手をやる。
「俺は前を向いて生きて行く」
「副隊長ォオオ」
身体に抱きつく逃隠。
「こらこら、止めないか」
それを見て、主人公は思う。
(サケル君が居てくれて良かった。僕じゃあすぐに声を掛けられなかった)
身体と逃隠がじゃれ合っている。
(僕も……やるんだ! 前を向いて生きて行こう)
宇宙――、例の不気味な球体の中で、ゾムビーの親玉がゾムビー達と話をしている。
『同胞達ヨ……奴ラ人間達ノ事ヲ信ジラレルカ……?』
「ゾムゾム……」
「ゾゾォ」
「ゾムバァ……」
『ヤハリ……ナ。ダガ慌テルナ。相手ガ裏切ッテ来タ場合ハ、ソレ相応ノ報イヲ受ケサセテヤル……』
hunter.N州支部――、
『早く! 約束の日まで時間が無いヨ』
急ピッチでロケット発射の準備が進められている。
(回想)
爆破や主人公達は、頭に直接呼びかけてくるような “音”を感じ取った。その音は、ロケットのコックピット等に居るパイロット達にも聞こえた。
『今回ハ、ココマデデ勘弁シテヤロウ。シカシ、我々ハ諦メンゾ。アノ石ヲ……。モウ7日、一週間後ニマタ戦力ヲ立テ直シテキサマラヲ襲ウ。セイゼイ余命ヲ楽シムンダナ。ハッハッハッハ』
“音”は徐々に消えていった。
(回想終了)
(あの石を欲していたゾムビーの親玉……和解の道は本当に在るのか……?)
N州支部の者は考え込む。
そして――、
『石は積んだな!?』
『確認済みです!!』
『分解装置の動作確認は!?』
『完了しています!!』
『よし、5分後、発射する!!』
遂に例の石が載ったロケットが発射される。
『スリー、ツー、ワン……』
「ゴゴゴゴゴゴゴ」
発射は成功に終わった様だった。
『成功……だな』
hunter.N州支部の隊員達はロケットの動向を伺う。
『現在、冥王星方向へ向けて進行中……ふぅ。ひとまずは安心だ』
『帰りの燃料の心配しないで済むから、楽なモンだな』
口々に言う隊員達。
日々は過ぎていき、約束の日の1日前になった。
Hunter内部、モニタリング室にて。
隊員が口を開く。
『ロケットどこまで行ったかなー』
『3日以上経ってる、相当遠くへ行っただろう』
すると――、
「バチバチ……ジー、ジー」
「!」
「!?」
いきなり、通信用のモニターの電源が入った。そして――、
『ゴキゲンヨウ、地上ノ諸君』
ゾムビーの親玉が話し掛けてきた。
「!」
「!!」
『上へ連絡だ。急げ』
『ラジャー』
隊員達は上司を呼ぶ様だった。
『アノ石ヲ載セタロケット、確カニ確認デキタ。礼ヲ言ウ』
『クソッ俺達で対応していいのか!? 上の者はまだ来られないのか!?』
『私ハ、身分ハ問ワナイ』
「!!」
『石ヲ確認デキタノデ、地上ニ居ルゾムビー達ニ指示ヲ出シ、攻撃ヲ止メサセル。更ニ頼ミガアル』
『……何だ?』
モニタリング室に居た隊員は少し冷や汗をかきながら問う。
『地上ニ散ラバッタ、全テノ石ヲコチラヘ返シテモライタイ』
「!?」
「!!」
隊員達は驚愕した。
『な……まだ石が地上に在るのか!?』
『少シ昔話ヲシヨウ。日本ノ組織ノ副隊長ハ分カッテイタヨウダッタナ、事ノ発端ヲ』
日は遡り、狩人ラボでゾムビーの親玉と通話した日――。
(回想)
『ゾムビーが地球に発生し始めたのは、我々地球人が宇宙に足を踏み入れて、ゾムビーのウイルスを地球に持ち帰ったからだ。違うか?』
『そ、……ソレは……』
『その時にあの石も数個持ち帰ったのだろう。ゾムビーが地上に発生した原因は、明らかに人間側にある』
(回想終了)
『あっ、あの時の会話か……!』
N州支部の隊員は数日前の会話を思い出す。
『ソウダ』
ゾムビーの親玉は話し始める。
『人類ハ宇宙ヲ目指シ、何度モ宇宙ヘトロケットヲ飛バシテキタ。ソシテ宇宙ニ存在シタ我々ノ体液ヤ、大切ニシテイル石ヲ奪イ去ッタ』
「‼」
「⁉」
隊員は真実に触れ、動揺する。
『石ハ当時、宇宙デハ互イニヒカレ合ッテイタ。ソノ為、奪ワレタ石ニ向カッテ十数個、宇宙カラ地球ヘト飛ンデ行ッタ。我々ノ同胞達ハ石ヲ奪還スベク、ロケットノ後ヲ追ッタ。ソシテ初メニ辿リ着イタノガアメリカノN州ダッタノダ』
『! ここが始まりの場所と言われているのは、その為だったのか……⁉』
ゾムビーの親玉の話を聞いた隊員は、更に真実を耳にする。
『ソノ他ノ同胞達ハ、地球ノ自転ト公転ノ為、マッスグハ向カッテ行ケズニ、結果的ニ地球ノ様々ナ場所ヘ降リ立ッテ行ッタ。ヒカレ合ッテイタ石モ同様ニ、様々ナ場所ヘ散リ散リトナッタ』
「ウィ――ン」
モニタリング室のドアが開いた。