Chapter 43 - 第四十三話 喪失
主人公が居た場所で、水しぶきが上がった。
「ツトム!! (まずい、直撃してしまった)」
主人公の身を案ずる身体。水しぶきが収まった。
「!!」
そこには無傷の主人公が居た。
「そうか! リジェクトを放っていたのか」
リジェクトにより、バーストは相殺され、水辺にその衝撃が加わっただけの様だった。
「副隊長!」
主人公が叫ぶ。
「頭に直接、スマシさんの声が聞こえるのですが!」
身体は首を横に振る。
「ツトム、お前にだけ聞こえる様だ。何と仰っているのか?」
「説明している暇は……」
「バースト」
主人公の言葉を遮る様に爆破がバーストを放ってくる。
「痛っ」
直撃は免れた。しかし、主人公の左脚がバーストによって爆破され、服はボロボロになり、火傷を負ったかたちとなった。左脚を押さえる主人公。すると、
『どうした? よそ見をして……私を止めるのではなかったのか?』
「! まただ! この声は……?」
動揺する主人公。
「『今度は本気で行くぞ……』……バースト」
「! リジェク……」
「ドッカァ!!!!」
それは今までで一番威力のあるバーストだった。リジェクトで相殺しようにも、7割ほどしか効果が無かった。主人公がかざしていた両手。その両手に付けていた手袋も爆発によって吹き飛ばされ、手の甲にある星だけが残った。
「あ……」
爆破と共に特訓していた日々が蘇る。
(回想)
「何だ、いいしるしがあるじゃないか、ここだ」
「?」
爆破は主人公の手袋の手の甲にある、星を指差した。
「ここに意識を集中させて、力を発動させるんだ。手を合わせてみろ」
(回想終了)
(あの時、一緒に……特訓してた時のマークが……)
「ギュッ」
どこかへ飛んで行きそうな星のマークを、主人公は握りしめた。
(スマシさん……本当に今までのスマシさんではなくなってしまったのですか……?)
冷静さを失いつつある主人公。そんな主人公にお構いなしに爆破は言葉を投げ掛けてくる。
『死にたいのかツトム、私はもう、人間ではない。私とお前とは敵同士だ』
苦悶の表情を浮かべる主人公。
『戦え』
(嫌だ)
『殺せ』
(できない)
刹那、爆破との会話が脳裏を過ぎった。
(回想)
主人公の両肩に手をやり、爆破は言う。
「ツトム、お前にだけは言っておきたい事があってな、月並みの言葉で済まないが、聞いてくれ。人は失敗や過ちを犯す生き物だ。しかも、何度でも、何回も。しかしその度に反省してまた前を向いて生きていけるんだ。だからこそ人間は正しくて清い、それだからこそ人生はおもしろい。私からの最後の……いや、最期の言葉だ。そして、私と戦ってく……ゾム」
(回想終了)
「バースト……」
「!! はっ!!」
またしても終始、バーストとリジェクトの撃ち合いになる。主人公の脳裏には爆破との想い出が蘇る。
(回想)
「危なかったなぁ、少年。」
「ツカ……ツカ……ツカ」
何者かが足音を立てながら近づいてくる。
「しかしもう安心だ。私は爆破スマシ。政府公認部隊・狩人の隊長だ!」
(回想終了)
「くっ!」
(回想)
「少年、まだ名前を聞いていなかったな。名は何と言うのだ?」
問う爆破。答える主人公。
「ツトム。主人公ツトムです」
「うん、いい名前だ。ツトム、来てほしいところがあるんだ」
(回想終了)
「はぁぁあああああ!!」
(回想)
「ツトム、スポーツでも何でも、上達するときは反復して行っていく中、少しずつ上手くなるのではない。コツを掴んだとき急成長するものだ! 今の感覚を忘れるなよ」
(回想終了)
「くそぉっ!!」
(回想)
「…………」
「…………」
「…………」
爆破の、数分の沈黙が二人を襲う。暫くして爆破は口を開いた。
「……ダメだ、書き直し」
「NOOOOOOOOOOOO!!」
(回想終了)
「ハァ……ハァ……」
(回想)
「いや、ギリギリのところだった。無理をしたせいで、もうクタクタだ。ふわぁ――あ」
大きな欠伸をする爆破。顔を机に伏せる。
「……もっと……強くならないと、な…………すー……すー……」
寝始めてしまう爆破。
(……超能力を使うのって体力がいるからなぁ。スマシさんですら、疲れちゃうコトだってあるんだよな)
優しく見守る主人公。
「爆破隊長ー!」
「吞みましょオ――!」
抜刀と逃隠が元気に言う。
「しー」
主人公は、二人に向かって人差し指を立てる。
「ん?」
「ア……!」
二人は爆破の様子に気付く。
「寝てらぁ」
「隊長っテ、こうして見ると結構可愛いんだナ」
「店を出る時までは、寝かしておいてあげよう」
三人は暫く爆破の寝顔を見てから、かにを満喫した。
(回想終了)
「畜生! 畜生!!」
爆破との想い出を思い起こしながら、主人公は戦った。目には涙を浮かべて、その涙は今にも零れ落ちそうだった。
「! !」
「ドッカァ!!」
リジェクトが爆破の脚に当たった。よろめく爆破。
(! そうだ! 動きを鈍らす程度にリジェクトで攻撃して、隙を作ってからグングニルを放てば……!)
「ツトム! くれぐれも隊長のお体には!!」
「分かってます!!」
身体の言葉を遮って言う主人公。
「絶対に殺しはしない! 元のスマシさんに戻す為に……ごめんなさい、スマシさん」
「ジリ……」
間合いを取る主人公と爆破。
「! リジェクトォ!!」
主人公はリジェクトを爆破の脚に当てた。
「ドガッ!!」
足にダメージを負い、ふらつく爆破。
「バースト……」
「ボッ!!」
負けじと爆破も攻撃してくる。
「リジェクト!!」
「ドガアッ!!」
バーストとリジェクトは相殺した。
(次だ! 見たところ、バーストの命中精度は落ちている。恐らく両足にリジェクトを喰らっているから、足元が安定しないんだ。次にバーストを打ちこまれる前に、ケリを付ける!!)
主人公は両手を掲げた。そして、
「グングニル!!!!」
主人公の体は虹色に輝き始める。主人公の手のひらから光りの矢の様なモノが出始めた。そして、爆破スマシへと、その、光りの矢は進んでいった。
「!」
爆破の体は光り輝いていった。
(想いよ……届け……!)
「シュイィ――ン」
爆破の体は、みるみるうちに溶け出すかのように小さくなっていった。
「そっ、そんな!? スマシさん!!」
主人公は叫ぶ。
「……」
爆破は身体が消えゆく中で何か呟いた様に主人公には見て取れた。
「そんな! 待って!!」
取り乱す主人公。
「隊長ゥ――!!」
「隊長!!!!」
逃隠、身体も消えゆく爆破を目の当たりにして、口々に叫ぶ。
「シュイィ――ン」
しかし、爆破の身体は消滅していった。
「バシャッ!!」
海に体を投げ爆破に近付いていく主人公。
「スマシさん! ねぇ! スマシさん!!」
身体は事の結末を察知し、爆破から目を背けた。
「だい……」
逃隠もその現実を受け入れられずにいた。
「バシャッバシャッ!!」
出来る限り爆破に近付こうとする主人公。
「シュイィ――ン」
消滅し始めた爆破の身体は、人間の形をしておらず、ドロドロに溶けていった。そして、
「シュイン」
爆破スマシの身体は完全に消滅した。
「そんな……どうして……?」