回避とサイコとツトム外伝~ゾムビー~

Chapter 40 - 第四十話 爆破の左脚

いぶさん2021/03/27 12:55
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「バースト……!!」

「ボン!!」

「ゾゾォ!!」

ノーマルのゾムビー達を爆発させる爆破。その目に迷いは無い。一方で壁のゾムビーは残り1体のみとなっていた。

「(呼吸を落ち着かせて……今だ!!)グングニル!!」



「カッ!!!!」



「ゾォオ!!」

主人公は壁のゾムビーと充分な距離をとっていたため、安全に敵を倒すことができた。

(これで、残りは……)

「ツトム!!」

「!」

思いを巡らせる主人公を、咄嗟に呼ぶ爆破。

「アレを見ろ!!」

爆破が指差した方向には、撤退していくゾムビー達の姿があった。



そして――、

『面白イ』



「!」

「!!」

「!?」



爆破や主人公達は、頭に直接呼びかけてくるような “音”を感じ取った。その音は、ロケットのコックピット等に居るパイロット達にも聞こえた。

『今回ハ、ココマデデ勘弁シテヤロウ。シカシ、我々ハ諦メンゾ。アノ石ヲ……。モウ7日、一週間後ニマタ戦力ヲ立テ直シテキサマラヲ襲ウ。セイゼイ余命ヲ楽シムンダナ。ハッハッハッハ』

“音”は徐々に消えていった。

「今のが聞こえたか? ツトム、副隊長?」

爆破は二人に問う。

「ハイっ! 聞こえました」

「こちら、コックピット内にも聞こえました、隊長」

主人公、身体はそれぞれ答える。口を開く爆破。

「そうか……。あちらは、今回は撤退する様子だったな……よし、今回、追撃はしない。切り上げよう。ツトムがグングニルを連撃して、体力を消費した様だからな。さて、地上に勝利報告でもしておいてくれ、副隊長」

「ラジャー」

身体は応答した。



「帰るか、地上に」



爆破はあっけらかんとしていた。

「正直に言うと、地上が恋しいです」

主人公が心中を吐露した。

「そうだよな! よし、さっさとロケットに戻り、地上へと帰還しよう!!」

爆破、主人公の二人は、それぞれバーストとリジェクトを放ち、移動していった。



外部ハッチを開く爆破。

「ガチャン」

「ひとまずこれでOKだな、ツトム」

「はい、お疲れ様です」

爆破の言葉に答える主人公。続けて外部ハッチを閉じ、内部ハッチを開く爆破。

「ガチャ……ガチャン」

更に口を開く爆破。

「1.5日ほど宇宙に居たか、感想はどうだ?」

答える主人公。

「ふわふわしてて、不思議な感じでした。あと、地面が無いのが不安ですかね……」

「はは、そうか。しかしそれもあと、一日と数時間で終わるぞ。良かったな、ツトム」

「は、はい……」

とりとめのない会話を交わす爆破と主人公。ロケット内部に入り、内部ハッチを閉じた。

コックピットへ移動する二人。主人公が口を開く。

「スマシさん!」

「何だ?」

「この後は何をすればいいのですか?」



「……そうだな」



暫く考え込む爆破。

「……寝て過ごすか?」



「ガクッ」



ずっこける主人公。

「ホンキですか?」

「ん、そうだが?」

爆破は至って平然としていた。

「……ホントに帰るだけなんですね」

「そうなるな」



「……」



しばらく二人は無言で、コックピットを目指した。





「ウィ――ン」

コックピットへ到着した。

「隊長、良くぞご無事で」

一番に口を開いたのは身体だった。

「ああ。そちらこそ、操縦、ご苦労だった」

返す爆破。

「ツトムぅー! 一時はどうなるかと思ったんだい!」

主人公に話し掛ける逃隠。

「はは、スマシさんが冷静だったから、難を逃れることができたよ」

笑顔で逃隠に答える主人公。

「副隊長、少し……」

「なんでしょうか?」

爆破から身体に話し掛ける。

「操縦の方だが、ここ二晩の間、夜を徹して行っている様だな?」

「はい……」

「私に代われ、睡眠時間を減らし過ぎだ」

「!」

爆破の言葉に、衝撃を受ける身体。

「そんな! 滅相もございません!!」



「いいから代われと――」

「グイ」

「言っているではないか」



操縦席から身体を押しのけて、爆破は言う。

「……分かりました。6時間程、睡眠を……」

「短い、8時間だ」

身体の言葉を遮る様に爆破は言った。

「は……はい。お気遣いありがとうございます。では……」

ミッドデッキに移動する身体。

(久しぶりに叱咤を受けた気がする……俺もまだまだだな)

身体は一人、そっと思った。主人公が爆破に話し掛ける。

「スマシさん! 申し訳ないのですが、僕たちも……」

「だい……」

逃隠も申し訳なさそうに佇んでいた。

「そうか、お前達も睡眠を取っていいぞ。育ち盛りだからな、しっかり寝て次の任務に備えるように!」



「はい!」

「だい!」



爆破の許しを得て、睡眠をとる準備をする主人公と逃隠。

「今日の戦い、勝てて良かったー。よいしょっと」

「流石の俺も、宇宙空間では戦えないんだい。よっこらせっと」

「よし、じゃあお休みー」

「だい」

二人は寝始めた。



一方の爆破――、

コックピットに居る。

(おかしい……事は上手く進んだのに、この胸騒ぎは……)

何か違和感を覚えている様だった。その爆破の左脚は、密かに紫色に変色していた。



8時間後――、

「ふぁああ、良く寝た」

主人公が目覚めた。

「よう。やっとカ、ツトム」

逃隠は既に目覚めて数分経った後の様だった。

「おはよう、サケルは朝が早いんだな」

身体も目を覚ました。

「ふ……副隊長ォオ!!」

逃隠が大いに反応した。

「まぁ、それだけなんだがな……」



「ぐはっ!!」



身体の素っ気ない言葉にダメージを負う逃隠。

「さて、行か……」

身体はコックピットへ向かった。

「僕らはストレッチでもしようか?」

「するんだい!」

主人公と逃隠は、朝のストレッチを行うようだった。身体はコックピットに着いた。

「隊長! 先程目覚めました!! 操縦を交代致します!!!」

「おお、目覚めたか、副隊長。交代、頼んだ」

身体の言葉に、応じる爆破。

「いやぁそれにしても、この周辺の景色は変わり映えしないな。退屈で退屈で……まぁ、何も起きないに越したことは無いが……」

「心中、お察しします」

爆破の愚痴にも、恭しく対応する身体。

「ふぁああ、じゃあ私は寝るぞ。後は頼んだ」

「ハッ!」

爆破はミッドデッキに移動した。



ミッドデッキにて――、

「おお、皆も起きたんだな」

爆破が主人公と逃隠に声を掛ける。

「はい! スマシさん。ストレッチをしていました」

「もう起きているんだい!」

返す二人。

「そうか、じゃあ朝食を摂った後は筋力トレーニングだな。頑張れよ」

「はい!」

「だい!」

爆破は眠りについた。







――、

「バースト!!」

「グングニル!!」

「ゾムバァ――!!」

「ゾゾォ!!」

倒れ行くゾムビー達。

「やったなツトム、これで全てのゾムビーを倒すことができたな!」

「はい! 大変な道のりでした。でも、スマシさんとだからこの偉業を達成できました」

「おめでとうございます、隊長」

「やったんだい!」

「ありがとう、副隊長、サケル!」

嬉し涙を流す爆破……。





「パチパチ」

目蓋を開く。それは涙で濡れていた。

(夢……か……)

涙をぬぐう爆破。





「ズキン」





「うっ」

左脚がひどく痛んだ。左脚に触れる。すると、そこには見慣れたとある体液、ゾムビー達の体液が付着していた。

「! これが私の末路か……呆気ない人生だった……」







「ズキン」







「うっ」

痛みが徐々に増していく。

「しかし、」



拳を握りしめる。



「仕事は最後までやり遂げないと――、な」

爆破はコックピットに向かった。