回避とサイコとツトム外伝~ゾムビー~

Chapter 36 - 第三十六話 宇宙、二日目

いぶさん2021/03/23 13:00
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「エ?」

「今、何て……?」

凍り付く逃隠と主人公。

「悪い、少し残酷な話になるな。死んでいい人間は居ると思うか? と言う問いに関してだが、答えはYESだ。この世から死刑という概念が無くならない限り、YESとしか捉えようがない」

「……!」

「……」

爆破は話を続ける。

「少し話は変わるがいいか? 世の中で収まりを見せない、戦争についてだ。世界の神が戦争を生み、戦争を許し、戦争を続けさせた。神様でさえリジェクトの餌食にしなくてはならないのかな?」

少しだけ冗談を交える爆破。たじたじな様子の主人公。

「それと、戦争とは終戦宣言されてすぐに終わるわけではない。命令や宣言が行き届いていない兵士たちは人を殺し続ける。手を叩いてハイ終わり! というわけにはいかないのだ。この戦いも同じく、ハイ終わりという風にはいきそうにない」

「!」

逃隠も、話に集中し始めた。

「さて、私は様々なゾムビーを倒してきた。時には同胞さえも……しかし、他の方法があったのではないかと、時々、思うんだ」

「あ……」



(回想)

(……本質を見極めろ、爆破スマシよ。そして迷うな、一遍の迷いもなく攻撃しろ。奴はもう、人間じゃない……!)

「バースト‼」





「ボンッ‼ ボンッ‼」





抜刀の刀、次いで右腕が弾け飛んだ。

「! 許せ……」





「ボッ! ボッ! ボン!」





抜刀セツナは木端微塵になっていく。最後は頭が弾け飛び、抜刀の命は尽きた。

(回想終了)



「フ――。さて、今日はこの辺にしておくか? 時差ボケで体内時間を調整するのも大変だろう。そのまま足を固定して眠るといい」

「あっ、ハイ。……お休みなさい」

「寝るんだい」

爆破は静かに言い、暫く虚空を見つめていた。主人公と逃隠は就寝前の挨拶をして、眠りについた。





翌日――、

「皆、朝だ……起きろ」



「ん?」

主人公達は、爆破の一声で目覚めを迎えることとなった。

「これが朝食だ、今から作り方を教える」

爆破はフリーズドライのご飯を用意した。宇宙食のご飯はお湯を加えてからよく混ぜ、出来上がるまで30分程かかる。

「まだなんだい?」

しびれを切らす逃隠。

(これから5日間? くらい宇宙食か……実家のご飯が恋しいよ……)

主人公は心の中で弱音を吐く。





30分後――、

「パクッ」

宇宙食を食べる主人公。

「う……」

一口目で固まる。

「……美味い」

「パクパクパク……おかわりだい!」

逃隠も宇宙食が気に入ったようだ。

「はは、見た目でマズいと思ってたのか? 宇宙食もここ最近、進化してきたのでな。栄養はもちろんの事、味もなかなかだぞ? 因みにカレーやラーメン、寿司もメニューにある」



「!」

「‼」



爆破の言葉に極端に反応する主人公と逃隠。



「マジですか!?」

「まぢスか!?」



声を揃える二人。

「そんなにがっつくなよ。少し冷静になれ」

朗らかな表情で爆破は話す。

「ご飯だけが楽しみではないぞ? 窓を見てみろ。美しい光景が広がっているし、地球の大きさだって目の当たりにできる」

窓から外の景色を見る主人公と逃隠。

「おっきい……」

「地球は青いんだい」

二人は口々に言う。





「さて!」





爆破が口を開く。

「ご飯が済んだら昨日の続きだ。人生のイロハをお前達に伝授する!! だが、すぐにとは言わない。宇宙食だが味わって食べるといい」





20分が経過しただろうか。主人公達は朝ごはんを食べ終わった。

「よし! 食って寝るだけでは体力も落ちるしな。始めよう」

爆破が昨日と同じく人生のイロハを教える様だ。

「以前も話したかな? 裏切られたと感じる時に、人は鬼になってしまう。そして愛する人の為にも、人は鬼になってしまうものだ。覚えているか?」

爆破は問う。



「……」

「だい……」



主人公、逃隠の二人は考え込む。

「そうか、その様子だと覚えていないな?」

「ごめんなさい」

「すいませン」

謝る二人。

「いいんだ、中学生の記憶力では、難しい部分も多かったと思う。愛から連想して、それに関連してかしないかは別として、恋愛について少しだけ、話そう」

「!」

爆破の言葉に反応する主人公。

(これだ! この話を基に、尾坦子さんとももっと仲良くなれたら……!)

「恋とは十人十色だ。そして男女間の友情は成立しない。行き過ぎるとムフフな事になるからな」

ずっこける主人公と逃隠。

「自分で言って、よく笑いませんね」

主人公の言葉にも、冷静でいる爆破。

「これは誰かが言っていた言葉だが、男は社会を作り、女は感情を知る、どうやらそういう事らしい。恋愛についての話は以上だ。少々実用性に欠けていたかな?」

(うーん、恋は十人十色で、男女間の友情は成立しない。それと、男は社会を作り、女は感情を知る、か……確かに実用性に欠けているかも……特に最後のは、実践向けではないかな)

「そうだ、お菓子があったな小腹も空いてきた頃だし食べるか?」

「あっ、いただきます」

「いただくんだい!」

爆破の提案に乗って、お菓子を食べ始める主人公と逃隠。

「乾パンというヤツだな。さて、話題を変えるか……私は自分のしている事に疑問を持ち始めたんだ。ここ数年の事になるがな」

爆破はそう言って話を切り出した。

「さて、昨日も話した通り、私は様々なゾムビーを倒してきた。しかし他の方法があったのではないかと、今では時々そう思う。それでも上の人間はゾムビーを殺せ、滅ぼせと指示を出してばかりだ。だから、世界がおかしいのか、自分がおかしいのか分からなくなっている。お菓子おかしだけにな、なんちゃって」

そう言ってお菓子を食べる爆破。主人公達は苦笑いする。

「ホント自分で言ってよく笑いませんね」

と、主人公。

「私は笑いのツボが深いからな」

少しだけ微笑みながら爆破は返した。

「そうだ、ツトム。お前も何か言ってみてはどうだ?」

「何をですか?」

急な爆破の問いかけに、戸惑う主人公。

「何か……ギャグだ……」





「!! !! !! !!」





爆破の発言に驚愕する主人公。

「どうだ? 言ってみないか……?」

「ちょ、ちょっと待って下さい! いきなり過ぎて……」

混乱している主人公。

「何でもいいんだぞ? ほら、言ってみるんだ」

爆破は催促する。



「じゃ、じゃあ……ボク、ぼくねんじん」



「…………」

「…………」



主人公のギャグで静寂に包まれる機内。

「……つまらんな」

「だから言いたくなかったのにぃ!!」

爆破の辛辣な言葉に、発狂寸前の主人公。

「もう一度チャンスをやろう、ツトム」

「いいですよ……」

爆破の提案にもむすっとした様子の主人公。

「そうか、それならいい。この事は深入りするな、不快になるからな」

「もうなってます!」

主人公は完全に機嫌を損ねてしまったようだ。

「ハハハ、まぁそう怒るな。人生全てが勉強だ」



「!」



爆破の言葉に主人公は反応した。

(またこの言葉だ……オヤジギャグの様なこの会話にも意味が……勉強になるのだろうか……でもまぁ)

フーと溜息をつく主人公。

(隊長だけは敵に回したくないな、色んな意味で……)

「? ツトム、私の顔に何か付いているのか?」

爆破は問う。





「何でもありませんよ!」





主人公は元気よく言った。