回避とサイコとツトム外伝~ゾムビー~

Chapter 33 - 第三十三話 旅路

いぶさん2021/03/20 12:53
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一行はサンフランシスコに着いた。時刻は現地で夜中の2時を回ったところだった。

「よし! 全員居るな? 今からホテルに泊まる!!」

爆破は指揮を執る。

(……真っ暗だ。ホントに時差があるんだなぁ……)

ぼけーっと突っ立っている主人公。



「……ツトム」



主人公に話し掛ける爆破。





「ハイ!!」





「今日はもう泊まるだけだが、気を抜かないようにな」

「ハッハイ! 気を付けます……」





一行はホテルに到着した。

『爆破、で予約を取っている20人だ。……そうだ。宜しく頼む』

英語で会話している爆破。

「スゲー!! 隊長、英語ペラペラだい!」

興奮する逃隠。

「すごいね」

主人公も感心する。



「フー、終わりだ。ツトム、お前はサケルと同じ部屋で、この鍵の部屋だ」

鍵を渡す爆破。

「……紙の鍵だ。初めて見た」

唖然とする主人公。

「どうやって開くんだい!? 貸してみるんだい!!」

部屋まで逃隠が持って行く様だ。



「ピピ――」



逃隠が鍵を通し、部屋のドアが開いた。



「おおぉ!」



部屋は真っ暗だった。

「どうしたんだい!? どうしたんだい⁉」

混乱している逃隠。

「サケル君、落ち着いて。ここを見ようよ」

主人公が何か見つけたようだった。

『電気を付けるなら鍵をここに差し込んで下さい』

そう英語で書かれた場所に、何か鍵を入れる所があった。



「ピッ」



鍵を入れたところ、明かりが灯った。





「おおォ――!! 科学の力ってスゲー!!」





「どこかで聞いたコトがあるような……」

興奮する逃隠に対し、冷静な主人公。

(今日はもう遅いから、シャワーは明日にしよう)

「サケル君、僕はこのまま寝るよ、シャワー使いたかったら使っていいよ」

「了解だい! その日の汚れ、その日のうちにって言うだろウ? 俺は風呂に入らないと寝れない性分だから入るんだい!!」

どうやら逃隠はシャワーを浴びる様だ。



「ガチャン」



シャワールームに入る逃隠。





「ボフッ」

「ふぅ……」

一方の主人公はベッドに腰を掛けた。

「……そうだ!」

何かに気が付く。





「バッ!」





携帯を持ち出す。

「あっ! 返信がある。尾坦子さんからだ……アメリカ行きって何よ⁉ 急すぎる、何の相談も無しに! とほほ、怒らせてしまっている」

ことの発端を考え始める主人公。



(回想)

「因みに、断ると日米安全保障条約にも引っかかるぞ」

(回想終了)



(こっ……これだ! 急な出動で、日米安全保障条約にも関わる事態だったんです、と)



「ピロリロリ!」



返信が返ってきた。

「日米安全保障条約と私、どちらが大切なの!? もう知らない!! って……」



主人公、完全に沈黙。



「ピロリロリ!」

「!」

再び携帯が鳴った。

「尾坦子さんからだ。……さっきのは冗談! ゴメンね、一度言ってみたかったの……! っはー、びっくりしたぁ。もう! 心臓に悪いよ。それで? ……私のコトも大切だからその条約も守るんだよね! 頑張ってきて! ……(尾坦子さんが、理解ある女性で良かった……)」

感涙する主人公。

「バタン!」

逃隠がシャワールームから出て来た。

「何だい! ココの風呂は! 湯船に浸かろうと思ったのに湯が張ってなかったんだい!!」

(……そりゃそうでしょ)

無理難題をホテルに押し付ける逃隠に、心の中でツッコむ主人公。

「まァ良いんだい! ツトム! 明日は早イ。寝ることにしよウ!!」

「分かった。お休み」

「おウ!!」

寝る前の挨拶を交わす主人公と逃隠。

(そうだ……! 尾坦子さんに……)

お休みなさいと、一言メールに添える主人公だった。





翌日――、

「朝食は済んだな? 皆!」

ホテル前に狩人隊員達が20人ほど集まっていた。その前方に、爆破が立っている。

「今日は目的の地、N州まで足を運ぶ! 気を引き締めておく様に!」

「ラジャー!!」

隊員全員が気を引き締める。

「さて、もう知っていると思うが、ここからN州までの道のりは、ここサンフランシスコからラスベガスへ、まずは国内線で向かう。約一時間半のフライトになる。各自、体調を崩さない様に! 以上だ……」





朝六時からの移動だった。

(少し早いけど、そんなにしんどくはないな)

そっと思う主人公であった。

サンフランシスコの空港へ到着した。飛行機に乗り込む一同。物々しい雰囲気を醸し出していた。爆破の言っていた通り、フライトは特に事故も無く、一時間半ほどで終わった。

「ラスベガスへ着いたな! 点呼を執るぞ!!」

爆破の号令とともに、点呼が始まった。狩人部隊は全員無事、ラスベガスへ到着した様子だった。

「ここからは軍用車両に乗り、北西へ移動する!」

一同は軍事車両へ乗り込む。



「ア……暑いんだい……」



N州近辺の気候は、夏場に52度に上がる事もある、砂漠気候である。一同はその気候の洗礼を受けた。



(た……確かに暑い)

主人公も汗ばんできた。

「全員に告ぐ」



「!」

「!?」



爆破がトランシーバーで何か話しかける様だ。

「水分補給を怠らない様に!」

「ラジャー」





――二時間半ほどかかっただろうか。一同は遂に、目的の狩人N州支部、通称hunter.N州支部に到着した。



「oh! How are you!」



支部の者が爆破を歓迎した。

「……fine」



「スゲー!! 隊長が英語を話してるんだい!!」

「はは……(fineくらい分かろうよ?)」

興奮状態の逃隠に、冷静な主人公。

『遠路はるばるようこそここ、hunter.N支部へ』

支部の者が握手を求める。

『いいえ、これが私たちの仕事ですから』

握手を交わす爆破。

(流石にこの会話は中学生の英語レベルじゃあ分からないなぁ)



二人は英語で話しているので、主人公や逃隠には話の内容が分からなかった。



『さて、今回ジャパンの狩人関東支部の方をお呼びした理由を、単刀直入に話しましょう』

N州支部の者が話を切り出す。

「ゴクリ」

息を呑む一同。



『宇宙に居るゾムビー達を倒してもらいたいのです』



「!」

「!?」

「!!」

(今、spaceって……)



主人公は聞き漏らさなかった。space、つまりは、宇宙という言葉を――。



『それは――』

爆破は口を開く。

『遂に足を踏み入れるのですね? ヤツらの根城に――』

『oh! それでは話が早い。ヤツらを全宇宙から消し去ろうではありませんか!』

「……」

爆破の表情は曇っていた。

『ご存知でしょうが、ヤツらゾムビーは宇宙からやってきた生物。そこで、ヤツらの発生源を潰してしまえばもう、地上でヤツらからの脅威に怯える事も無くなるのです』



『……その住処を先に荒らしたのはどちらでしょうか!?』



爆破は強い口調で言い放った。

『? 今、何と……?』

『! あ、いや。何でもありません。失礼した』

N州支部の男の反応で、冷静になる爆破。その様子を見て、主人公は疑問に思う。

(スマシさんがあんなに感情的になるなんて……今、何て言ったんだろう? Whichとか言ってたような……)

『……まぁ、いいでしょう。今回、宇宙に出て、戦ってもらう人員を、最低6人、用意して頂きたい』

『分かりました』

男に対して、答える爆破。

『私を含む、ここに並んだ6人でどうでしょうか?』

『OKですよ、次はhunterラボ内へどうぞ』

男はラボへと進んでいく。

「スマシさん、これからどうするのですか?」

主人公は問う。



「これから宇宙へ飛ぶんだ」





「え?」