回避とサイコとツトム外伝~ゾムビー~

Chapter 27 - 第二十七話 壁のゾムビー

いぶさん2021/03/14 12:55
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「まさか……!」

爆破は驚愕した。次の瞬間、

「スパッ」

抜刀は隊員の首を切り落とした。



「ピピッ」



何かが爆破の顔に当たる。

「体液では……ないな」

爆破はそれを手で拭い、確認した。

血だった。首を切り落とされた隊員から吹き出た血が、爆破の顔に当たったのだった。

「ひいっ……ひいいいい!!」

逃げだそうとする一人の隊員。

「ザッ」



「トスン」



「がはっ……」

その隊員も抜刀によって葬られた。

「! おのれ!!」



「ボッ!!」



抜刀の刀が爆破される。

「セツナ!! 私だ! 攻撃を止めろ!!」

次の瞬間、

「ザンッ」

再び刀を発現させる抜刀。

「!」

そして周りに居たゾムビーを斬りつけた。

「スパッ」



「ゾムゥウウ!!」

「ゾムバァ!!」



「セツナ……通じたのか……?」

安堵の表情を浮かべる爆破。

――と、



「スパッ」



「ああっ!!」

狩人隊員の首を再び斬る抜刀。

「何っ!? やはり……か」



「スパッ」



「ぐあああ!!」



「ザンッ」



「ああああああ!!」

次々に襲われる狩人隊員達。爆破はその光景を見て自身に言い聞かせる。

(……本質を見極めろ、爆破スマシよ。そして迷うな、一遍の迷いもなく攻撃しろ。奴はもう、人間じゃない……!)

「バースト!!」

「ボンッ!! ボンッ!!」

抜刀の刀、次いで右腕が弾け飛んだ。

「! 許せ……」



「ボッ! ボッ! ボン!」



抜刀セツナは木端微塵になっていく。最後は頭が弾け飛び、抜刀の命は尽きた。

(これが……現実か……)

爆破は静かにそう思う。



「隊長!」



隊員が叫ぶ。ふと見上げると、そこには普段より一回りか二回りほどの大きさのゾムビーがそびえ立っていた。

「壁……」

爆破は思わず声を漏らした。

「隊長!」

「クソッ!! ラボ周辺のバリケードを突破されるな!」

隊員が叫びながら応戦する。

「タタタタタタタタ!」

「ガギィン! ガギィン!! ガギィン!!」

全ての弾丸はそのゾムビーの体によって弾かれた。狩人隊員達の攻撃をものともしない壁、まさに壁のゾムビーと呼べるゾムビーだった。

「ゴッ!!」

ゾムビーは殴打を繰り出す! 吹き飛ばされる隊員。

「小癪な!」

隊員達は束になってゾムビーを囲い、攻撃していく。

しかし――――

「ガギィン! ガギン! ガギィン!」

全ての弾丸は弾かれた。

そして――――

「ゴッ! ドゴッ!」

その全ての隊員達は吹き飛ばされていき、狩人は爆破のみとなった。

「バ……バースト!!」

「ボンッ」



「…………ゾ?」



バーストをも無力化するその防御力。

「ハッ!!」

ふと、思い出したように例の石をかざす爆破。

「二つ……だと……」

体内で光るのは二つの石だった。爆破は距離を置いて再びバーストを放つ。



「ボッ! ボンッ!! ボンッ!!」



しかし――

「コォオオオ」

爆風が砂煙を上げていた。煙から姿を顕わにした壁のゾムビーは無傷だった。

「おのれ……もう一度、今度は近距離で、――だ」

爆破は壁のゾムビーに近付きバーストを放つ。

「ハッ!!」



「ボボンッ!!」



しかし、先程と同じで壁のゾムビーは無傷だった。

(コイツの耐久力に対してのダメージ量が少なすぎる)

「ゾォ!!」

爆破の胸ぐらを掴む壁のゾムビー。

そして――、

爆破も隊員達と同じく吹き飛ばされた。

「ゴッ!! ……ドサッ」

「かっは……」

爆破はその場に座り込んでしまう。

「スマシさん!」

主人公の声がした。辛うじて開く爆破の目蓋。そこに映るのは身体、いつもとは違う姿の尾坦子、そして主人公の姿だった。

「俺も居るんダイ!!」

そして見張りに飽きた逃隠も居た。

「後は……頼んだぞ。皆……健闘を……祈る」

爆破はそっと目蓋を閉じる。



「隊長ォオオ!」



身体が爆破の身を案じて叫ぶ。



「副隊長ォオオ!」



それに呼応して逃隠も叫ぶ。

「どうぞご無事で」

相も変わらず無視される逃隠。感動の再会となる抱擁も見事にスルーされる。

「やるぞ、サケル……」

「はっ! ……あいあいサー」

「弔い合戦だ……!!!!」



「ザッ……」



二人は身構える。身体は空手で言う正拳突きの前の構えを、逃隠はキックボクシングの様な構えをとる。

「今だ!!!!」



「ダッ!!」



二人は走り出す。



「ガッ!!」

「ガギィン!!」



「ゴッ!!」

「ガギィン!!!!」



身体は拳を、逃隠は蹴りを繰り出すも、硬い壁によって阻まれる。次に渾身の右ストレートを放つ身体。

「ビュン!!」

「ゾム!」

それを左にかわす壁のゾムビー。

「ブン!!」

すかさず右ストレートを裏拳に変えて繰り出す身体。

「ガギャ……」

ヒットした。しかし……

「ピシッ」

右拳にひびが入る。

「ぐぅ……なんの!」

次いで左拳を掲げる身体。それも――



「ガギャ!!」

「ピシッ」

両腕共にひびが入ってしまう。

「副隊長!! くっソおおおおオ!!」

刀を振りかざす逃隠。

「フォン!」



「カッ!!」



弾き返される。

「なァ! なんのこれしキ」

両腕を体の前で組み、ダッシュする逃隠。

「行くゼイ!!」

そのままタックルする。しかし――



「ガギャア!!」

「バギ!!」



逃隠の両腕は粉砕骨折した。



「!!!! がアアアアアア!!」



阿鼻叫喚ともとれる悲鳴を上げる逃隠。

「サケル!! 下がってるんだ!!」

身体が叫ぶ。

「サケル君!!」

尾坦子を近くで守る主人公も叫んだ。

「クッそおおおおおおおお!!」

身体は無謀ともとれるような行動に出る。考えなしに突進していったのだった。

「ゾム……」



「ゴッ!!」



顔面にゾムビーからの重い一撃が入る。そして



「ゴン!!」

「かっは!」



腹部への重い一撃。身体は吹き飛ばされ、肋骨は骨折した。身体副隊長、沈黙。

「副隊長ォオオ!」

主人公は叫ぶ。

「ふく、たいちょウ……」

逃隠は叫ぶこともできない。しかし遂には渾身の力を込めて叫ぶ。

「つ……ツトムゥ!! 行け、行くんだァアア!!」

残るのは、主人公ツトムのみとなった。

「……行く……行くんだ……行くぞ……!!」

主人公は自分に言い聞かせるように呟く。

「ザ……」

身構える主人公。そして――

「リジェクトォオオ」

リジェクトを放つ。

「ガギィン!!」

リジェクトは無効化だった。

(次はもっと近くで!)



「ダッ」



主人公は壁のゾムビーの懐に入る。

「ゾ……」

右拳を振りかざすゾムビー。

「回避の術!」

主人公は自分の一番得意とする技を使った。回避の術で殴打を避け、リジェクトを繰り出す。

「ハッ!!!!」

しかし、

「ガギィン!!」

その技も、当然の如く弾かれた。そして



「ゾム!!」



主人公の腹部に、お返しと言わんばかりに一撃を加える壁のゾムビー。

「かっは……」

吹き飛ばされる。

「ガッ」

ラボの壁まで飛ばされる主人公。

「ガハ!! ガハ!!」

余りのダメージに咳込む。

「ツトム――!! さっきのだ! さっきの技を使うんだ!!」

目を覚ましたのは身体。持てる力をもって全力で叫ぶ。

「副……隊長」

満身創痍の主人公。爆破も身体の声に目を覚ましたのか、目蓋をゆっくりと開いた。

「ツ……トム……行けぇ!!!! 行くんだ!!!!」

叫ぶ爆破。次いで、

「行けェ――。ツトムぅ――!!!!」

逃隠も叫ぶ。そして、

「ツトム君!! 頑張って!!」

尾坦子も声を上げる。主人公は確固たる自信を持って進む。自分にとっての天敵、苦手とする石のゾムビーを倒し、文字通り自分が愛する者、その者を守ったという自信。

それを持って、主人公は進む。主人公は左手の人差し指と中指の間に右手人差し指を置き、次いでそのほかの指を並べて置いていった。

主人公の体は虹色に輝き始める。主人公の手のひらから光りの矢の様なモノが出始めた。