回避とサイコとツトム外伝~ゾムビー~

Chapter 25 - 第二十五話 窮地

いぶさん2021/03/12 13:16
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「そんなぁ! ……避難所まで進行してくるなんて!」

「助けてくれぇ!」

避難所である武器庫内は混乱に陥った。最中、

「下がって」

主人公は避難民の前へ出た。

「尾坦子さんも」

主人公は尾坦子に視線をやる。

「ツトム君、……無理……しないでね」

「うん」

ゾムビー達と対峙する主人公。

「じり……」



(今だ!)





「リジェクトォオオ!」





「ゾ?」



「ドシャアアア!!」



一体のゾムビーがリジェクトの餌食となった。

「よし! あと……二体」

その様子を目にしていた尾坦子は思う。

(これが……戦っているときのツトム君……)

顔が赤らむ。

(こんなに頼りになるなんて……)



「ゾムバァ!!」



残りの内一体のゾムビーが体液を吐き出す。

「回避の術! 飛び避け‼」

「タンッ! バシャ!」

主人公は横っ飛びで体液を避ける。床に飛び散る体液。そして、



「リジェクトォ!」



「ドシャアアア」



二体目を撃破した。

(イケる……この人達をそして、尾坦子さんを守るんだ!!)

「リジェクトォオオ!!」





「ドムゥン……」





「!」



最後の一体、あと一体のところだった。最後の一体は、

「石の、……ゾムビー」

息を呑む主人公。

「どうして? 何で? 効いてない」

困惑する尾坦子。思いを巡らせる主人公。

(石のゾムビーは、耐久力、攻撃力ともに上昇している。弱点は、刃物。刀傷があれば、そこから石を取り除ける……けど、僕にそんな攻撃手段は無い)

石のゾムビーを見つめる主人公。



「そして」



(僕が一人で石のゾムビーを倒した経験は、無い!)



一方で、狩人ラボ東側入り口付近。



「ザッ」



爆破と隊員数名が到着した。





「タタタタタタタタ!」





現場は激しい銃撃戦となっていた。ゾムビーはざっと十五体以上おり、ラボに近付くにつれて被弾し、倒れていく。

銃を撃っていた隊員の一人に爆破は話し掛ける。

「状況は?」

「はい! 何とか数で対応しています。隊長が来て下さり助かりました。石のゾムビーらしき者も現れ始めた所でして」

「それは何体居そうなんだ?」

爆破は隊員にさらに問う。

「はい、一、二体程度です」

「分かった」

会話を終え、爆破はポケットに入れていた例の宝石を手に持ち、掲げる。

(少し、距離が足りないか……)

爆破は隊員全員に伝える。

「全員、聞け! 今から石のゾムビーを洗い出すために宝石を持って奴らに近付く。射撃がしづらくなるだろうが攻撃の手を緩めるな。やれるな!?」



「ラジャー」



隊員達は一斉にレスポンスした。

「よろしい」

爆破は返答を聞いてから歩き出す。銃弾の嵐の中、ゆっくりと見えるが、確実に歩みを進めていった。8メートルほど進んだだろうか。爆破はしきりに宝石をかざしたままだった。すると、次第に宝石と一体のゾムビーが光輝き出した。

「……奴か」

キッと目を鋭くさせる爆破。

(少々体力は要るが、仕方がない)

宝石を懐にしまい、手をかざす爆破。

「バース……」



「てりゃあああああああアア」



「!」

爆破がバーストを放とうとした瞬間だった。何者かが一振りの刀を持ち、石のゾムビーに斬りかかった。



「スパ!!」



石のゾムビーは上半身から斜めに下半身まで切り付けられた。

「ズズズ……」

上半身が斜めにずれ落ちていく。

「お待たせしましタ!」

石のゾムビーを斬ったのは逃隠だった。

「サケル!」

爆破は思わず声を出す。

「途中にぞろぞろとまあバケモンが居やがったんデ、相手してたら時間食っちまったんだい!」

「フ……セツナも同じセリフを口にしていたぞ。仲が良いな、二人とも」

戦場であるのにもかかわらず、とりとめのない会話を交わす二人。

「仲は良くないんだい! あんな奴!!」

「ハハ」

「あ、えーと『だい』っていう語尾は近頃マイブームなので使っているだけで特にこれといって意味は無いんだい。流行ればいいかなーなーんテ」

(助かった。私は『石』とでは相性が悪い。逆に相性のいい刃物を扱うサケルが来てくれて良かった)

爆破は逃隠を無視して考える。

「サケル!」

「あ、はいはイ。仕上げダ!!」

「ピンッ!」

爆破の一声で察し、ゾムビーの体内にあった石を、刀の剣先ではじく逃隠。



「パシッ」



「ご苦労」

石は10数メートル飛び、文字通り爆破の手中に収まった。

「では、後片付けといくか……バースト!」

「ボンッ!」

石の抜けたゾムビーを、爆破は余力を残して爆破処理した。

「一旦下がるぞ、サケル!」

「あいあいサ!!」

「ザッ」

爆破と逃隠は射撃部隊の後ろへと下がった。

「撃てぇ!!」



「タタタタタタタタ!」



次いで爆破の指揮のもと、射撃部隊は発砲を始めた。



「ゾォオオ!(うぁああ!)」

「ゾバァア!!(いたいぃ!)」



次々に倒れていくゾムビー達。

「すっげェ。これなラ……」

瞬く間にゾムビー達は殲滅されていった。十数秒後、辺りにはゾムビーの死骸だけが残った。「ふ――、ご苦労だった! 皆!」

爆破が労いの言葉を掛ける。

「ヒュ――」

逃隠は口笛を吹いて、感心していた様子だった。爆破は隊全員に次の作戦の令を上げる。

「一通り片付いたな。だが油断はできん。もうゾムビーが現れないとも言えんし、どこから湧いて来るか分からんからな。……よし、サケルと隊員の内8名はここに残って様子を見ること。私とその残りは正面入り口に移動する。そして30分後、ここに残る部隊は3名を残して正面入り口に移動だ。良いな」

「りょーかいだい!(副隊長に俺の活躍を見せられるのはいつになるんだい?)」

言葉と心境がちぐはぐな逃隠だった。



その数分前、正面入り口では――

「にじゅうさーん!」

「ズバッ!!」

「次ぃい! にじゅう!」

「ズバッ!!」

「よーん!」

抜刀は前線に出て戦い、ものの二十数分で20体ものゾムビーを斬り倒していた。更に抜刀はゾムビーを斬り倒す。

「疾きこと風の如ォく!」

「ズバッ!」

「侵掠すること火の如ォく!」

「ズバッ!」

「ゾオォオ!!」

「風林火山ならぬ! 風火!!」

「ズバァ!!」

「ゾォオオオオム!」

いつもの調子に、超能力の刀を肩に担ぐ抜刀。

「風火……フウカ……ふうか、ねー。次の恋のターゲットはふうかちゃんで決まりってか!?」

冗談を戦場で言っても、誰も聞いていない。



「ピキッ」



キレ気味の抜刀。

「オイぃ!! 聞け! その他の隊員!! 俺が突破口を開く! お前らは下がって援護射撃に努めろ!!」

「ラ、ラジャー!」

渋々隊員達は抜刀に従った。

「にじゅう……だー!! もうめんどくせぇ!! 数えんのも止めだ止め! いちいちやってんのも野暮だ野暮!」

虚勢を振りまいているつもりはなかった。しかし事実、抜刀の体力は消耗しつつあり、もう今のペースで戦いを続けられない状態だった。

「ゼイ……ゼイ……」

(! この俺が、この程度の奴らに対して肩で息しながら戦ってんのか……)

「くっそ! 情けねえよなぁ。だからあのナースちゃんにもフラれたんだ、よっと!」

「ザシュ……」

ゾムビーの内の一体、その顔面目掛けて例の剣を突き刺す。

「だがなぁ、何体来ようとも俺様には敵わねえんだよ!」



「バシュ!」

「バシュ!」

「バシュ!」

「バシュ!」



次の瞬間、抜刀の足元、並びに半径8メートル以内の地面にあった排水口から、十数体のゾムビーが現れ、抜刀を囲った。