Chapter 19 - 第十九話 新たな脅威
「沼地で見つけたものと……一緒だ……」
ゾムビーの体内にあった石を見た主人公は呟く。
「どうやラ、アイツらはこれを体内に取り込むとパワーアップするみたいだナ」
「うん、強力な敵だった……ヤツらにこれを渡しちゃいけない。ラボに早急に送らないと……」
逃隠と主人公はそう話し合った。
「……ツトム君」
逃隠カイヒが口を開く。
「サケル君のお父さん……」
ハッとする主人公。
「ありがとうございました! サケル君のお父さんが助けに来てくれなかったら、今頃どうなっていたことか……それと、サケル君を危ない目に遭わせてしまって……」
謝る主人公。
「……いや、最後にとどめを刺したのは、君だ。今日は、君がゾムビーと戦えるというのが確認できて良かったよ。それに、今回の敵は強力過ぎた。私一人でも、倒しきれなかっただろう……」
逃隠カイヒが返す。
「あ、ハイ! ありがとうございます!」
ホッとする主人公。事後報告となってしまったのだが、主人子達は爆破に連絡を入れた。爆破は間もなくして、主人公達がゾムビーと戦った現場に到着した。
「今回の戦いでの報告……あれは本当なんだな?」
爆破のその言葉に、真剣な表情になる二人。
「ハイ。前回沼地で見つけた、あの宝石のようなものを体に取り込んだゾムビーは、明らかに他と違いパワーアップしていました」
主人公は言う。
「……そうか。分かった。これから緊急に会議を開き、この事を理事会に報告する! 二人とも、ラボへ帰るぞ!」
爆破は言う。
「ハイ!!」
二人は答える。
宇宙――。
ゾムビーの親玉が、ゾムビー達から得た情報から、地上での戦いについて考察している。
『人間共メ……妙ナ武器デ我ガ同胞達ヲ殺害スルトハ……アノ武器ニ対処スルニハ……数デ勝負シテイクトスルカ……』
――数時間後。狩人ラボ、会議室にて。
「……以上が、今回の戦いの結果で分かった、新たな脅威です」
爆破が10名ほどの男達の前で話す。ざわつく室内。
「どうしたものか」
「ここに来てヤツらが強力になるとは」
「……簡単にまとめると、耐久面の強さ、攻撃力の強さ、回復力。この3つが、宝石を取り込んだゾムビーの特徴となります」
話をまとめようとする爆破。
「宝石を取り込んだゾムビーを、石のゾムビーと名付けます。ゾムビー達の手にあの宝石が渡るのを防ぎ、石のゾムビー発生を食い止めていく事を、今後の課題としていきます」
――。
「ブロォオオオオオオ」
一台のバイクが、河川敷を走る。乗っているのは爆破スマシ。
(新たな超能力者が仲間に加わり、戦力も不足分を補い始めたと思った矢先、これか……)
「一難去ってまた一難、か……」
小言を呟く。
(……いや、弱気になっている暇は無いぞ)
キッと目つきが鋭くなる。
(石のゾムビーへの対策を考えねば。刃物は意外と効くと聞いた。あとは宝石を体内から素早く奪い取る事が出来れば、勝機はある……)
「ブロォオオオオオオ」
爆破は更にバイクを走らせた。その後1カ月間で、狩人の新戦力・抜刀セツナを含んだ戦闘員でゾムビーとの戦いが行われた。
――狩人ラボ、会議室。爆破が男達の前で報告をしている。
「ここ1カ月間、抜刀セツナ隊員の加入もあったせいか、この狩人・関東支部は隊員の内、一人の犠牲者も出す事なく活動を続けられております」
「……順調だな」
「この調子を保ってほしいものだ」
感心の声が会議室に漏れる。
「しかし、気掛かりな事があります」
「!?」
爆破の言葉に、静まり返る室内。
「例のゾムビーの細胞に似た性質の宝石が我々の手に渡ってから、ここK県でのゾムビー発生率がぐっと高まっています。他の九州支部や関西支部等のゾムビー発生事例の報告書を見ると、それは火を見るよりも明らかです」
「そんな事が……」
「あの宝石と何か関係があるのか……?」
ざわつき始める室内。
「今後更に、宝石についての研究を進めると同時に、ゾムビー発生との因果関係についても調査を行っていきます」
――爆破のオフィスルーム。
爆破が、何か資料を手に取り、椅子に腰かけている。
(やはり、おかしい。他の支部と比べて、差が大きいところでは4倍近くまでゾムビー発生率が増してきている。前年度の関東支部と比べても2.5倍……。ゾムビーの能力を高める宝石……。その宝石をゾムビーは取り返そうとしている……? 何にせよ、あの宝石はゾムビー撲滅のカギとなってくるな……)
数日後、K県O市M町のショッピングモールにて、ゾムビーが発生した。
各階を、一階は主人公、抜刀と狩人隊員、二階は爆破と狩人隊員、三階は逃隠、身体と狩人隊員の編成で交戦し、ゾムビーを全て駆除した。戦いの中で、身体は腕を骨折してしまった。
――爆破のオフィスルーム。
爆破スマシが机につき、考え事をしている。
(先日のショッピングモールでの被害数、42名……か。今まででワースト3に入る数だ……戦力が整ったとは言え、一般人の被害がこんなにも出てしまっていては……)
「ガチャ」
「!」
狩人の研究員がオフィスルームに入ってきた。
「何だ? ノックくらいしたらどうだ?」
少し怒ったように爆破は言う。すると研究員は謝りつつ話す。
「申し訳ありません! しかし隊長、例の宝石について、興味深い発見がありまして……」
「何だそれは?」
「ひとまず、研究室へ」
――狩人ラボ、研究室。
「ツカ……ツカ……」
爆破が研究員の後に続いて歩く。
「こちらです」
研究員は手で、あるモノを指し示した。それは透明なケースに数個入っており、紫色に光っていた。
「これは……?」
爆破が問う。
「主人公隊員達が単独で手に入れた宝石に、先日のショッピングモールでの戦いで手に入れた宝石を近付けてみたところ、共鳴するように輝き出したのです。宝石同士が7、8mほどの距離にあれば輝くのですが、近付けば近付くほど、その輝きが増すのです」
「ほう……(手に入れた時には気付かなかったが、戦いの中で何かの役に立つかも知れんな)」
研究員の返答に、感心し考え事をする爆破。
「よし! 次の戦いではこれを一つ持って行く事としよう。良いか?」
「はい、他にも宝石はありますし、一つならば問題はありません」
「……決まりだな」
研究員の了解を得る爆破。と、
「ピロリロリ! ピロリロリ!」
爆破の携帯が鳴った。
「ピッ」
「もしもし、狩人・関東支部隊隊長爆破だ。何? 関西支部? 何の用だ?」
狩人・関西支部の男が話す。
「ええ、少しお頼みしたい事がありますねん……」
「…………!」