いぶさん2021/03/04 13:04
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宇宙――。

ゾムビーの親玉が空間を漂っている。

『日本――トイッタカ……。アノ国ニイル我ガ同胞ヨ……石ノチカラヲ見セツケテヤルノダ……!!』





地上――、

K県のとある高架下では――。様子を見ていた主人公も、息をのむ。

「くっそォ……てりゃアアア!!」

弾き返された逃隠は諦めずにゾムビーに向かって行く。

「ガッ!」

右腕を振るう。顔面にヒット。しかし、ゾムビーは無傷である。

「くソ! ああァ!!」



「ガッ! ガッ! ゴッ!」



今度は左腕、続いて再び右腕の殴打、最後に右足の蹴りを加えた。

「ゾ? ……ゾォオオ!!」

再び無傷のゾムビー、今度は反撃に出て、逃隠の腹を殴る。



「ゴッ」



「ぐふゥ」

3メートル近く吹っ飛ぶ逃隠。

「ドシャア」

「ガハッ、ゴホッ」

苦しむ逃隠。

「ジュウ――」

殴られた腹部は、学ランが溶けてスーツが露わとなっている。

「サケル君! くそっ! リジェクトォ!!」

応戦する主人公。

「ドムゥン」

衝撃波は、確かにゾムビーに伝わった。しかし、妙な弾力性によってその衝撃は吸収され、ゾムビーを破壊するには至らない。

「! リジェクトが……効かない……!? 何でだ!? 確かにリジェクトは命中した。他のゾムビーは倒せたのに!」

困惑する主人公。

「ゾ? ……ゾゾ(なんだ……?)」

背中にリジェクトの衝撃を感じたゾムビーは、振り返り、主人公を確認した。

「ゾ……(こっちは……もういい)」

その後、再び逃隠の方を少し見たが、ゾムビーはぷいっと逃隠から視線を逸らし、主人公に標的を変えた。

(畜生、攻撃が効かないどころカ、相手にすらされてないのカ……)

痛みを堪えながら、今ある状況を悔しがる逃隠。

「ゾ……ゾ……」

不気味に主人公に近寄るゾムビー。主人公は思う。

(マズい、まだリジェクトが打てない。調子も悪いせいで、1発あたり15秒はかかる!)

じりじりと忍び寄るゾムビー。

(こうなったら……! 回避の術で攻撃と体液を避けて時間を稼ぎながら戦ってやる!)

覚悟を決める主人公。

「ゾム!(くらえ……!)」

殴りかかってくるゾムビー。

「回避の術! 避け‼」

「ブン!」

回避の術を使い、ゾムビーの拳を左に避ける主人公。ゾムビーの右手が空を切る。

「ゾム!」

今度は左腕を振るうゾムビー。

「はっ!」

再びゾムビーの拳を避け、今度は右へ跳ぶ主人公。刹那、主人公は思う。

(大丈夫だ。他のゾムビーよりもややスピードはあるけど、回避の術の前ではスローモーションだ!)

「ゾ!」

再度ゾムビーが右腕を振るう。

「回転避け!」

主人公は叫びながら右手の手袋でゾムビーの拳をいなす。と同時に右足を一歩斜め前へ踏み出す主人公。体を回転させ、ゾムビーの後ろを取る。

(今だ!)





「リジェクトォオオ!!」





近距離でリジェクトを放つ主人公。しかし、

「ドムゥン」

またしてもゾムビーは衝撃を吸収、破壊されない。

「そ……んな……」

自信を喪失する主人公。



「ゾ!!(くらえ!!)」



振り向いたゾムビーは主人公の腹に一撃を喰らわす。



「ゴッ」



「ぐあああ‼」

吹き飛ばされる主人公。逃隠の隣まで飛んで行った。

「ジュウ――」

主人公の学ランは、腹部が溶け始めている。

「うわあああ!」

急いで学ランを脱ぎ捨ててTシャツ姿になる主人公。

「ジュウゥウウウ」

投げ捨てられた学ランは殆ど溶けてしまった。

「よウ……ツトム……」



「!」



仰向けで倒れている逃隠が主人公に話し掛ける。

「時間稼ギ、ありがとヨ……ダメージも大分、軽くなってきタ」

むくっと起き上がる逃隠。

「さテ、ほいじゃア行きますカ」

「行くって……無理だよ……アイツは他のゾムビーとは違う。スーツによる攻撃も、リジェクトも効かないんだよ?」

主人公はそう言って不安がる。逃隠が少し間をおいて口を開く。

「ツトム……俺ハ、全世界のゾムビーを駆逐すると声高に言っていたガ、本当はゾムビーが恐ろしくて仕方なかったんダ。だガ、身体副隊長に出会っテ、一緒に修行を積んだお陰デ、今はゾムビーと戦えるようになっタ。身体副隊長からハ、どんな時モ……どんな事にモ、恐れずに諦めない事を学んだんダ……今、この瞬間だってそうダ……絶対ニ……最後まで諦めるナ、ツトム…………行くぞォオオオ!!」

走り出す逃隠。

「サケル君! 待って!」

叫ぶ主人公。走りながら逃隠は言う。

「ツトム! 俺が時間を稼グ! お前は力を溜めテ、色々な方法でリジェクトを放つんダ! どんな方法でもいイ! 片っ端からやってくゾ!!」

「ダッ……ガッ! ガッ!」

ゾムビーに飛びかかり、右拳、次いで左拳をぶつけていく逃隠。

「ゾ……ゾゾ!!」

攻撃に対し、微動だにしないゾムビーが反撃する。右拳が飛んでくる。

「サッ」

体を低くして避ける逃隠。

「喰らエ!」

そこからアッパー。ゾムビーの顎にヒット。

「ゾ?(なんだ?)」

効いていない。

「ゾー‼」

裏拳が飛んでくる。

「なんノ!」

「ガッ‼」

スーツの部分である両腕でガードする逃隠。

「ズサー」

少し飛ばされるが、両脚で持ちこたえながら着地する。ゾムビーと逃隠の攻防は続く。一方で、主人公。

(どんな方法でもいいから……そうだ! このゾムビーに対しては、背中側からの攻撃しかしてない。正面からの攻撃なら……何か変わるかも……!)

走り出す主人公。ゾムビーの正面、リジェクトの射程圏内に入る。

「行くよ! サケル君!」

「待ってたゼ! ツトム!」

阿吽の呼吸で横へ跳びながら移動し、ゾムビーの正面を主人公に向けさせる逃隠。

「(行くぞ!)リジェクトォオオ!!」

リジェクトを放つ主人公。ゾムビーの正面にヒットする。

「ドムゥンドムゥンドムゥン!!」

背中側に当てた時とは明らかに違う反応を見せるゾムビー。

(やった! 効いてる!)

安堵する主人公。

「ドムゥン……ドムン……ピタ……」

先程とは違う反応を見せたものの、やはり衝撃を吸収するゾムビー。

「そんな……」

一転、絶望の表情を浮かべる主人公。

「まだダ!!」

ゾムビーに飛びかかっていく逃隠。

「ツトム! 次の手を試セ! 次が打てるまデ、何秒ダ!?」

攻撃しながら逃隠が叫ぶ。

「きょ……今日は、15秒くらい! 調子も悪いんだ!」

返す主人公。

「ヘッ! 15秒の時間稼ぎだナ。余裕だゼ!!」

強気な逃隠。敵の攻撃を回避の術で避けつつ、殴打、蹴りを当てていく。一方で必死の主人公。

(考えろ……考えるんだ。他に、何か手は……)

「もうそろそろだゼ! ツトム!! 行ケ!!」

バッとゾムビーから離れる逃隠。

「(ええい! 一か八か……)リジェクト!」

咄嗟に主人公は、ゾムビーの片足を狙い、リジェクトを放つ。



「バシュッ‼」



ゾムビーの片足は弾け飛んだ。

「やった! 今度こそ、効いた!」

「よっしゃア!」

歓喜する二人。

「ズズズ」

崩れ落ちるゾムビー。

「行くゾ! 畳みかけるんダ! ツトム」

逃隠は言う。しかし、ゾムビーの様子がおかしい。





「ゾゾ――――――‼」





しばらくうずくまっていたが、ゾムビーは急に叫び出す。