Chapter 12 - 第十二話 身体スグル
突然の爆破からの言葉に驚愕する主人公。
「で……でも何で僕達を認めてくれたんですか?」
続けて主人公が問う。
「ふっふっふ、普段の成長の成果を見て、だよ。まだ力不足な部分はあるが、充分にツトムは成長してくれている」
(…………俺ハ!?)
爆破の言葉に、逃隠が心の底で突っ込む。
「本来ならばゾムビーを30体倒せば理事会に認められることとなっているが、私の許可があれば特例で何とかなる」
「30体! スマシさんは30体もゾムビーを倒して、その後狩人に入隊したのですか?」
主人公が興味津々になって爆破に問いただす。
「ん? 私は趣味でゾムビー狩りをしていたことがあってな。その頃、80体倒して理事会に認められたのだが、それ以降は面倒で数えるのをやめたよ」
(……80……僕なんて、たった3体しか倒してないのに……スマシさん、スケール違いすぎますよ……)
ぐわんぐわんと頭を重くし、自信を無くす主人公。
「どうしたツトム、顔色が悪いぞ」
「いえ……何でも……あり……ません」
心配する爆破の言葉に、力なく答える主人公。
「そうか、ならいいんだが。それと、今日は紹介したい人物もいる。もう着いている頃か?」
そう言うと、携帯電話を取り出す爆破。
「私だ。爆破だ。もうラボには着いたか? ……ああそうだ、第4会議室だ。……何? もう部屋の前に居るだと? お前はいつも手が早いな。いいぞ、入れ」
「ピッ」
携帯を切る爆破。
「ウィ――ン」
ほぼ同時に会議室の扉が開く。
「紹介しよう。身体スグル副隊長だ」
そこには、軍服を着た、大柄で筋肉質な男が立っていた。
「お久しぶりです。隊長」
「おう、久しぶりだな。アメリカ視察はどうだった?」
「はい、問題無く終わらせてきました。現地で有能なサイキッカーを4名確認、アメリカに発生するゾムビーも彼らによって処理されるでしょう」
「分かった、では詳しい話は後で聞こう」
爆破と会話する身体。身体の持つ威圧感ある雰囲気に、圧倒される主人公と逃隠。
「この二人は?」
身体が二人を見て言う。
「ああ、新しく狩人に入った、主人公ツトム君と逃隠サケル君だ」
爆破が答える。
「……こんな子供が」
「ははっ。見た目で判断するのは良くないぞ、副隊長。ツトムはサイキッカーで、サケルは……アレなんだアレ」
(またこんな扱いかヨ!)
爆破の言葉に心の中でツッコミを入れる逃隠。
「……フン」
主人公、逃隠の二人から体ご顔を背ける身体。
その時――、
「ビ――ビ――ビ――」
ラボ内に警報が鳴り響く。続けてアナウンスが。
「港の工場地帯で、ゾムビーが発生。隊員は直ちに現場に急行せよ。繰り返す……」
「……来たか。ツトム! サケル! 行くぞ!!」
力強く言う爆破。
「ハイ!!」
「おウ!!」
続く主人公と逃隠。
――工場地帯、ゾムビー発生現場。狩人の隊員達、爆破、身体、逃隠そして主人公が専用の車で到着する。
「情報によると、従業員達はほぼ非難が完了しているらしい。火災時などの避難訓練を、よっぽど徹底している企業なのか? まぁいい、これで狩人の隊員達は存分に戦える。敵は20体だが、何とかなるだろう」
と、爆破。
「ゾム……」
「ゾ……」
「ゾムァ……」
前方から6体のゾムビー達が姿を現した。
「姿を現したな。よし! かかれ!」
「ラジャー」
「ガチャ、タタタタタタタタタタタタ!!!!」
爆破の号令で、銃器を用い発砲する狩人隊員達。
「ゾ……ゾ?」
「ゾム……」
「ベシャベシャ! グシャ!」
ゾムビー達が被弾し、みるみる崩れ落ちていく。
「ゾ……ゾ……」
「ボッ」
残ったゾムビーの残骸を爆破がバーストで爆発させ、処理する。
(すごい……! スマシさんもだけど、狩人の人達は超能力も使わず、銃器だけでゾムビーを……よっぽど訓練されてるんだな。僕が必要無いくらいだ)
主人公が感心する。
「よし、この調子だ。ん?」
爆破が横を向くと数十メートル先に、1体のゾムビーがいた。
「1体か……副隊長、行けるか?」
「はっ、お任せを」
爆破の問いかけに口数少なく答える身体。そして陸上選手が走り出す様な体勢をとる。1秒後、
「ダッ」
走り出す身体。ゾムビーに近付く。
「……ゾ?(なに?)」
ゾムビーが身体に気付く。攻撃の射程圏内に入った身体は右手を振りかざす。そして、
「ドゴッ」
渾身の右ストレートを放つ。
「ベッシャアアアア!!」
顔がはじけ飛ぶゾムビー。
続いて左拳
「ドゴッ」
再び右拳
「ドゴォッ」
連打でゾムビーの腹部を攻撃していく。体の各部位がはじけ飛んで、下半身だけになるゾムビー。身体は最後にローキックを放つ。
「バシャアアアア」
下半身もはじけ飛び、ほぼ残骸だけになるゾムビー。そして、
「ボッ」
先ほどと同じ具合に残骸を処理する爆破。
「見事だ。副隊長」
「お褒めに預かり、光栄です。隊長」
会話を交わす爆破と身体。
(強い! 身体さん、特殊スーツと肉体のみでゾムビーと戦うって話、本当だったんだ……)
思わず息をのむ主人公。その横で、
(すげェ……超能力を使わずに、ゾムビーが倒せるのカ……お、俺モ……)
身体に強い憧れを抱き始めた逃隠。爆破が口を開く。
「残り13体か……ここからは隊を分散させて戦う!」
「ハ、はイ! 俺は身体副隊長に付いて行きまス!」
手を上げ、志願する逃隠。
「副隊長、問題無いな?」
「はい、問題ありません」
爆破と身体の会話によって、身体と逃隠が行動を共にすることが決定した。
(イエス!)
ガッツポーズする逃隠。
「よし、なら副隊長とサケルの組、隊員5名の組を2組、私一人の組と……ツトム、一人で行けるか?」
「ハイ、何とかします」
爆破の問いに答える主人公。
「よし、しかし無理はするなよ。危なくなったらここに戻ってくるんだ。残りの隊員はここで待機! いいな?」
「ラジャー」
隊員達が爆破に返事する。
「それでは、散!」
一斉に動き出す一同。それぞれの持ち場に付き、ゾムビーと交戦していく。
――30分後、
工場地帯の最初に戦闘があった場所にて、散った一同が一旦引き返し集合する。
「皆戻ったか? 戦果を聞きたい、ツトム」
「2体、何とか倒しました」
爆破に答える主人公。
「他は?」
「身体、3体倒しました」
「5名の組、1体です」
「こちらの組は発見できませんでした」
爆破に身体、狩人隊員達が報告していく。
「そうか、私は5体だ。……と、言う事は残り2体だな。しかし、情報に漏れがある可能性もある。実際には何体居るか……この工場地帯は広い、皆、覚悟して探索するぞ!」
「ハイ!」
爆破の号令に返事する一同。再び各持ち場に向けて歩き出す。と、その時、付近の排水口の奥でうごめくモノが……。
(なかま、やられた……にんげんゆるさない……!)
狩人隊員の一人がそれに気付かず排水口の蓋の上を歩き、通り過ぎようとしていた。
瞬間、
「バシュ――」
ゾムビーが蓋の網目のスキマを通り抜けて、飛び出してきた。
「ゾムゥ」
「! そこに隠れていたのか! 隊員、一旦逃げ……」
「グルグル、バシュ!」
爆破の言葉もむなしく、ゾムビーはそのまま隊員にぐるぐると巻き付き、顔面に体液を吐き掛けた。
「ぐあ! あ……ゾ……ゾム」
隊員はゾムビー化した!