いぶさん2021/02/22 13:31
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「アメリカのみならず、わが国でも……か」



日本――。

円卓を囲い、6人程度の男が、暗い部屋の中で会議を行っている。

「怪物、ゾムビー。厄介なのはその繁殖力で、口や体から出された体液に触れれば、人間はおろか猫や犬といった哺乳類を全般とするほぼ全ての生物がゾムビー化してしまう点だ」

「まるでインフルエンザのウイルス……だな」

「ワクチンや特効薬が無い分、それよりも恐ろしい……」

「アメリカはどう対処している?」

「アメリカは現在、超能力を使えるサイキッカーや、在中する陸軍がゾムビーの駆除を率先して行っている」

「超能力を使える者など、日本には居ないぞ」

「陸軍……か。実戦から離れたうちの自衛隊など、ゾムビーにどこまで対処できるか……」

「新しい部隊の設立が急務だな……」

どうやら、日本政府の要人達がゾムビー駆除について話し合っているらしい。話し合いはこの後も、終わることなく続けられていた。



一方、アメリカでは――。

「タタタタタタタタ!!」

『今日も焼き尽くしてやるぜ! とう!!』

「ボッ! メラメラメラメラ」



「ゾゾォ……」

「ゾム……」



N州周辺、米軍、fireが前線に立ち、ゾムビー達と交戦している。

『クッ、何匹もうじゃうじゃと……』

米軍の兵士の一人が、気を抜いた瞬間、



「ゾムバァ!!」



ゾムビーが体液を吐き出してきた!

『あ……』



その時――、



『ふん!』

「ぶわっ」

兵士に降りかかったはずの体液が、宙に浮いた。

『な……?』

呆気にとられる兵士。その10mほど後ろで、

『早く! 今のうちに!!』

髪が腰まで伸び、赤いワンピースを着た少女が左手をかざし、何かしら力を込めている様だった。

少女の正体は、サイコキネシス。物質を動かしたり、今回の様に宙に浮かせたりして身動きをとらせない事でゾムビーと交戦するサイキッカーである。

『早くしなさい! 次のが来るわ!!』

『あ……ああ、済まない』

銃器を構える兵士。

そして――、

「タタタタタタタタ!!」

銃弾をゾムビーに撃ち込む。

「ゾゾォ……」

ゾムビーは蜂の巣になった。

一方でボディアーマーは――、



『ふんぬ!!』



「ゾ?」

「バシャアア!!」

ゾムビーの顔面に右ストレートを放ち、破壊した。続けて――、



『てりゃ!!』



「ゾ?」

「バシャアア!!」

蹴りや拳を交えて一体、また一体とゾムビーを撃破していった。

そこへ――、

『よっ、ボディアーマー』

『!?』

ボディアーマーの元へ、fireが現れた。

『調子はどうだ?』

『まあまあ、だ、ぬん!!』



「バシャアア!!」



『何体倒した? ちなみに俺は、コイツで20体目だ!』



「ボッ! メラメラメラメラ」



会話をしながら、ゾムビーを倒していく二人。

『あいにく、数に興味が無いのでね。数えては、いない!』



「バシャアア!!」



『そいつは残念だ! なっと!』



「ボッ! メラメラメラメラ」



「ゾゾォ!」

「ゾォオオ!!」



『凄い……』

周りの米軍兵士達は息を呑んだ。赤子の手をひねる様に二人はゾムビーを倒していく。これ以上心強い者はないと、誰もが心から思った。そこから遠くで――、



「ズダン」



「ゾォオオ!」

ショットガンを使い、戦う者が――。



「ゾゾォオオ!」



その人物の横からゾムビーが襲ってきた。

瞬間――、

「シュピン……」

身体が跡形も無く消え去った。

「ゾ? ゾゾォ?」

困惑するゾムビー。

そして――、

「シュピン……」

再びゾムビーの後ろにその人物は姿を現した。

「ゾ?」

ゾムビーが後ろに振り向こうとした瞬間――、



「ズダン……」



その人物はショットガンでゾムビーを葬った。

その人物の正体はワープ。一瞬で自らを移動させる能力、瞬間移動の使い手である。

『フー。このスーツ、ゾムビーの体液を無効化させるのはいいけど、なんかむさ苦しいんだよなぁ』

ワープは小言を漏らした。



戦いの最中、ゾムビーの親玉は、ゾムビー達にしか聞こえない声で、言葉を発した。

『同胞達ヨ……。今ハ我々ノ方ガチカラ不足デ人間達ニ敵ウ見込ミハナイ……。今ハ只、チカラヲ蓄エルノダ……』



「ゾォオオ」

「ゾゾォ……」



ゾムビー達が撤退していく。

『追うか?』



『待て!』



軍の司令官は深追いしようとする兵士を制止する。

『見ての通り、こちらの兵力も疲弊しきって居る』



『ゼェ……ゼェ……』

『ハァ……ハァ……』



fireやボディアーマー、米軍兵士達は肩で息をしている。

『よって深追いはせず、ゾムビー達を撤退させただけでも良しとしよう。次の戦いに向けて、英気を養うのだ』

『ラジャー』

それ以来、N州ではゾムビーがあまり大量発生しなくなった。

アメリカの、他の州でもゾムビーが現れるが、N州同様、大量発生はせず、時は進み――、

2014年2月――、

もう一つの物語の主人子、主人公ツトムがK県で産まれた。爆破スマシが、“あの一夜”を過ごした、一ヶ月くらい後の事だった。

「あなた、産まれたわ」

「おお。元気に育てよ、ツトム」

主人公の母と父は喜びに満ち溢れていた。



主人公がこれから挑んでいく壮絶な戦いのことなど、母も父も、当の本人さえも予期せずにいた。



数日後、爆破の通う中学校にて――、

昼休みにブーブーと、爆破の携帯が鳴った。ゾムビー撲滅協会のスーツ姿の男からの電話だった。爆破は電話に出てみる。

「爆破スマシだ、何だ?」

「やあ、協会の者だ。○○高校に、ゾムビーが大量発生した。至急、向かって欲しい」

「○○高校……!?」

「どうした?」



(好実の……高校……!)



爆破は彼氏である杉田好実の身を案じた。

十数分後――、

爆破は○○高校着いた。



「ぎゃああああ!!」

「わああああ!!」



高校は悲鳴で満ちていた。高校生の殆どが校門から敷地外へ逃げていくが、爆破は反対に敷地内に足を運んで行った。



「タタタタタタタ!!」



銃声が鳴り響く。恐らく、自衛隊か公安部隊の者が、ゾムビーと交戦しているのだろう。しかし爆破は、そんな事はどうでも良かった。

(好実は無事なのか……?)

爆破は杉田の無事を祈った。

「好実ぃ――! 居るのか――!?」

爆破が校内を叫びながら進んでいく。すると、廊下の曲がり角に人影が……。

「好実……」

爆破は近付いていった。

しかし――、

「ゾム……」

そこに居たのはゾムビーだった。

「(!? キサマか!!)バースト……」



「ボッ!!」



ゾムビーは木端微塵となった。爆破は暫く校内を進んで行く。

すると――、



「君、何をしているんだ? ここの生徒じゃないな?」



武装した男性が話し掛けてきた。

「ここにいては危ない。さあ、外へ出るんだ」

「嫌……だ……」

「何だって?」

「嫌だ、私も戦える。それに――」

「!?」

「私の彼氏がおるのだ。無事か……心配で……」

「なら僕達に任せて、ここから離れるんだ」



「嫌だ!!」





「ボッ!! パリィイイン!」





近くの窓ガラスが、大きな音を立てて爆発した。

「!? これは……?」

「私の能力だ。空間を爆発させる。ゾムビー撲滅協会の男とも、面識がある」

爆破は協会の男の名刺を見せる。

「ふぅむ、参ったな……仕方ない。君もゾムビー退治に協力してもらうか」



「言われなくても!」