回避とサイコとツトム外伝~ゾムビー~

Chapter 3 - 第三話 爆破との遭遇

いぶさん2021/02/22 13:29
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(回想)

「かつて、アメリカであった生物の被害が、ここ日本でも確認されました――」

(回想終了)



「アレが……ゾムビー……」

「ゾム……ゾム……」

もの恐ろしい呻き声を上げながら男性へと近付いていくゾムビー。

「くっ!」

ゾムビーに負けじと、男性へとダッシュで近付く爆破。男性の肩を担ぐ。

「立てるか?」

「あ、ああ。立つだけなら。ありがとう」

「ゾ……」

ゾムビーも、男性の目と鼻の先に近付いていた!!

「クソッ! 化け物め!!」

体を盾にし、男性を守ろうとする爆破。しかし――、



「ゾム!」



「ドッ!!」



腹部にボディブローを放ってくるゾムビー。

「かはっ!!」

2、3メートル程吹き飛ばされる爆破。次にゾムビーは標的を男性に向ける。

「ゾム……」

「くっ来るなぁ!! 誰か助けてくれー!!」

不意に、爆破の脳裏に、杉田との会話が過ぎった。



(回想)

「……そうだ!」

「!」

「スマシちゃんにはバーストがあるじゃないか!? アスファルトも破壊できるんだぜ? ゾムビーだって退治できるさ!」

(回想終了)



(やれ……るか……?  ここからだとあの男性を助ける前にゾムビーが男性を襲ってしまう。しかし、バーストなら……? ゾムビーが男性を襲う前にバーストで木端微塵にできれば……)

ゾムビーを凛とした瞳で見つめる爆破。

「(呼吸を落ち着かせろ……目標をよく狙って……)バースト!」





「ボッ!!」





「ゾ……!!」





「ドガア!!」





ゾムビーは、ブロック塀の壁ごと爆発した。その姿はどの様な形をしていたかが分らない程、木端微塵になっていた。へたりと座り込む爆破。

「はぁ……やったか……」

「あっ、ありがとうございました!! この恩は忘れません!! じゃあ!」

「あっ!  ちょっと」

男性は去って行った。爆破は一人、取り残された。

「! そうだ。チョコ……」

カバンからそれを取り出したが、ラッピングごとぺちゃんこになっていた。

「そんな……折角、作ったのに……」

そこへ、杉田がやって来た。

「やー、スマシちゃん。今日は早いねー、ってなんじゃこりゃああ!!」

辺りはブロック塀の残骸と、ゾムビーの破裂した遺体の欠片で凄惨たる状態になっていた。

「スマシちゃん、これってゾムビー? 倒しちゃったの?」

「! うっう……わぁああん」

「! 何で? 泣き出しちゃった」

ゾムビーとの戦いが終わり、安心した所為か、はたまた、折角作ったチョコが台無しになってしまった所為か、爆破は泣き出してしまった。その涙の理由は、爆破本人にも分からなかった。

「ああっ、ううっ」

爆破は杉田の胸を掴み泣いてばかりいる。

「よしよーし、もう怖くないよ? ところで渡すモノって、何?」

「うう……」

「!」

「うわーん!!」

2,3分程、爆破は泣き続けた。

そして――、

「チョコ……作ったのに……アイツの所為で、潰れてしまった……」

「なーんだ、そんな事か」

「!」

目をキッとさせる爆破。

「見せてみ」

「……これだ」

爆破は潰れたラッピング入りのチョコを渡した。杉田は包装を破いて、中身を見てみる。

「うわぁ……確かに、酷い有様だぁ」

「うう……」

「でも――」

パクリと一つ、杉田は食べてみた。

「うん、やっぱり。味は良いぜ。わざわざありがとな、作ってくれて」

目を見開く爆破。そして少し下を向き、言った。



「ど……どういたしまして」



その頃、アメリカでは――、





『ふん!!』





「ググッ……ババン!!」

髪が腰まで伸び、医療用のワンピースを着た少女が、的の様なモノを超能力で破壊した。パンパンと手を叩きながら小太りな男性が少女に近付いて来る。

『調子はどうだね、サイコキネシス?』

『まぁまぁ……です』

ここは、超能力者養成所。多岐多様な超能力者を育成、輩出している。

これまでに発現された能力はサイコキネシスの他に、一瞬で自らを移動させる瞬間移動・ワープ、自らの攻撃力、防御力を上げるボディアーマー、物質や空間を燃やす炎(fire)である。養成所の管理人は考える。

『これまで、様々な手を尽くしてきた……。電磁波による脳の拡張、イメージトレーニング、瞑想……。ここまでやって超能力が発現したのはたったの4人。しかも実戦で有利なのはサイコキネシスと、fireの、二名……だけか』



『所長!』



『?』

『対ゾムビー用の特殊スーツ、遂に完成しました!』

『おお! そうかね』

『はい、ゾムビーの体液を無効化させる事ができる上、機動性に優れています』

『おお、それは良く出来ているな。超能力者4人用のサイズも揃っているか?』

『もちろんです!』

『なら大船に乗った気持ちでいるよ。ありがとう』

『滅相もございません』

養成所の管理人とその部下は会話を交わす。

『ではボディアーマーに試してもらうとするか』

そこへ――、



『ビー! ビー!』





『!!』





警報音が鳴り響いた。

『緊急連絡! 緊急連絡! S州でゾムビーが発生! 戦闘員は至急現場に急行せよ! 繰り返す! S州で……』

『早速か……。よし、いきなり実戦だが、ダメな時はfireが何とかしてくれる。特殊スーツの性能を試そう』



数時間後、S州にて――、

『戦況は?』

『米軍が銃器で応戦、残るゾムビーは2体のみです』

MASA戦闘員の作戦隊長は、現場に辿り着き、対応していた米軍に戦況を聞いた。

『分かった。試したい事があってな。残りのゾムビーの処理、任せてくれないだろうか?』

『? 構いませんが、一体どんな?』

『まあ見ていてくれ。ボディアーマー!!』

『ハッ!』

ボディアーマーと呼ばれるアメリカ人が、例の特殊スーツを纏い、現れた。

『左の一体だ。食らわせてやれ』

『ラジャー』



「ダッ!!」



ボディアーマーは走り出した。特殊スーツの効果の所為か、尋常じゃないスピードが出ている。

そして――、

「ゾ……?」





「ゴッ!!」





右ストレートを繰り出した。

「バッシャァアアア!!」

ゾムビーの頭は弾け飛んだ。ゾムビーの体液がボディアーマーに降りかかるが、特殊スーツを着ていたので、ゾムビー化は避けられた。



『ふんぬ!!』



続いてボディアーマーはゾムビーの膝辺りに蹴りを繰り出していった。

「ドバァアア」

膝も弾け飛び、ゾムビーは胴体だけが無惨にも転がっている形となった。

『ハァ……ハァ……』

息を切らし、汗を拭うボディアーマー。

そこで――、

「ボッ!」

『!?』

ゾムビーの胴体部分が発火した。次第にメラメラと燃え盛っていく胴体。



『よお』

『!』



ボディアーマーが振り返ると、そこにはfireの姿が。

『そんな超能力にしては、よくやったな。何か仕掛けがあるのか?』

『……お前に話すような事では無い』

『つれないねぇ。それはそうと、残り一匹だが』

『!(確かに残り一体のゾムビーが居た!)』

『俺様がぶっ殺しておいたぜ』

『!?』

ボディアーマーは辺りを見る。そこにはメラメラと燃え盛るゾムビーの死骸がもう一つ、あった。

『これじゃあ清掃班もいらねぇな、じゃあな。あばよ!』

『…………』

fireとボディアーマー、二人の仲は芳しくはいないようで……。



舞台は変わり、宇宙――。

半径数十メートルはあろう、紫色の球体が月の軌道から大きく離れ、地球から遠く離れて存在していた。その中にいるゾムビーの親玉は――、

『愚カナル人間共メ……。今度ハオカシナチカラヲ使イ始メ、同胞達ヲ葬リ始メタ』

どうやらゾムビー達から念波を拾って、地球の様子を見聞きしている様だ。



『シカシ!!』



目を見開く。

『イツノ日ニカ、近イウチニ必ズコノ報復ヲ行ッテヤルゾ……』