桜の木の下で
「町屋海斗くん。 いや、ダーリンと呼ばせてちょうだい。
私ダーリンのこと好きみたい。
だから……… これからは堂々と積極的にストーキングすることにするわね!!」
高校2年生の春、始業式の初日に隣のクラスの深沢 幸(みゆき)さんに嬉しくない告白された。
時は遡って数分前のこと。
春。
始まりの季節。
出会いとは突然である。 それは隣に同年代の美少女が引っ越してきたとか。
それは初めて会う女の子にに告白されて付き合うことになるとか。
それはまた不良少女が子猫の世話をしてる一面を見て惚れてしまうとか。
桜の木の下に埋まってる黒髪の女の子を見てしまい、絡まれるとか。
「あ、ねえちょうどこっち見た町屋くん。」
「げ……」
そして目が合ってしまった。
確か、この子隣のクラスの深沢 幸さんだったよな。
「はいそこ、嫌そうな顔しないでよ、か弱い女の子が助けを求めてるのに。 あ、ちょっと逃げようとしないで!
町屋海斗くーん!逃げないで助けてーーー!」
「助ける助けますから叫ぶのやめて!!」
もう流れに任せて助けることにした。
「用具室にいってスコップ取ってくるから、もう少しそのままで待っててね、深沢さん」
「幸って呼んで」
「あー、はいはい、幸さんね。
それじゃ取ってくるから」
そう言って、校舎の裏手にある用具室に向かうことにした。
ここで軽く俺の話をしよう。
俺はある出来事がきっかけで中一までの記憶の一部が無い。
いわゆる記憶喪失のようなものだ。
と言ってもそこまで大事ではない。
何が原因で記憶喪失になったのかわからないが、落ち着くまで姉が傍にいてくれたので何とかなった。
両親は海外出張で当時そうなってたことは知らないし、今も知らない。
そしてその姉は、今はとある理由でやや遠くの病院に入院している為現在家には俺一人で住んでる状態だ。
とは言え、一通りの家事はできるので何とか生活出来ているし生活費も両親が毎月一定額振り込んでくれてるので問題ない。
これ以上はもっと長くなりそうなので割愛させていただく。
それよりも今は幸さんを掘り起こさなければ。
無事スコップを借りることが出来たので急いで幸さんの元へと戻り、彼女を掘り起こすことに成功した。
掘り起こされた彼女は意外にもスタイルがよく、所謂モデル体型というものなのか見惚れてしまっていた。
「掘り起こしといてなんだけどさ、幸さんはなんで土に埋まってたの? 正直意味わからないんだけど。
新手のいじめ?」
ひと段落ついたこともあり俺は気になっていたことを質問することにした。
流石に土に埋まる意味がわからない。 健康センターの土風呂じゃあるまいし。
しかも横向きじゃなく立ったまんま埋まってたのである。ますます意味がわからない。
「桜の木の下……」
幸さんがなにかブツブツ言いだした。 「え、何て?」
「桜の木の下で想い人来たるって占いでいったから」
「それで桜の木の根元に埋まってたのか!
てかどんな占いだよ!?」
なんか不服に落ちないが納得はいった。
のだが、
「ん?想い人……って……」
「あ…言っちゃってた。えへへ」
何この可愛い反応。
恋が始まる音がした。
「てことはやっぱり」
「そうよ、私の想い人はあなたよ
想い過ぎてストーキングをよくしてますが」
あ、ないわ。
恋が冷める音がした。
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