アイツを想う君を、僕はただ見つめている。


櫻井音衣2020/12/22 04:44
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君の瞳は、いつもアイツを見つめている。 そして僕は……。

アイツを想う君を、僕はただ見つめている。

君の瞳に映るもの

僕の瞳に映る君は、いつもアイツを見つめている。


アイツを想っている君はとてもキレイで、その瞳に僕が映る事はないとわかっているのに、僕は君から目が離せない。



僕とアイツは幼稚園の頃からの親友で、小学校も中学校も同じで、高校も当たり前のように同じ学校を選んで進学した。


高校の時に同じクラスになった僕たち3人は、いつも一緒にバカやって笑っていた。


高校を卒業して進む道がバラバラになっても、3人で頻繁に会う。


当たり前のように、3人で。




僕は高校生の頃から、密かに君を想っていた。

卒業式の日に君に気持ちを打ち明けようかとも思ったけれど……。


僕は知っていたんだ。


君がずっとアイツを好きだった事を。


僕には見せる事のない笑顔をアイツにだけは見せる事を。



アイツを見つめる君の瞳に僕が映る事はない。


僕のこの手に、君を抱きしめる事はできない。


だから僕は、君への想いが枯れて死んでいくまで、友達の顔をしていようと決めた。



いつものように3人で会う事になったある日。

アイツは言った。


「バイト先で彼女ができたから、これからは今までみたいに頻繁には会えないかも」


君は、無理して笑っていた。


「そっかー、良かったね。でもちょっと寂しいな」



帰り道、一緒に歩いている時にも、君は作り笑いを浮かべて、一生懸命僕に話し掛けた。

……『本当はずっと好きだったんだ』って、泣けばいいのに。

僕にまで無理して笑う事なんてないのに。


それでもやっぱり、失恋した悲しみを隠すように笑う君の瞳はとてもキレイで、僕は気付かないふりをする事しか出来なかった。



不思議だけど、アイツに失恋した君が僕を選んでくれたらとは、思わない。



僕は気付いた。


アイツを想っていた君が、僕は好きだったんだと。


交わる事のない恋心が、それぞれの心の中で想い出に変わるまで……僕はきっと、君を想い続けるのだろう。



君がアイツを想っている限り、僕はきっと、君をただ見つめている。






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