白波大我2020/09/19 03:12
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この世界は闇に塗れている。どんだけ残業しても残業代は出ず、休みだってろくに無い。こんな事ならいっそ異世界にでも行きたい。なんてことを考えつつ、家路に向かっていたら突然声が聞こえた。



「お、おい!!兄ちゃん!!危ない!!」



と声をかけられたので顔を上げると、トラックが目前にまで迫っていた。



この瞬間俺小鳥遊和人は、28年間の人生に幕を閉じた。はずだった……








目が覚めた俺は、目の前にある鏡に自分が映っているのを見た。鏡を見た時、まだ寝ぼけているのかと思い目を擦った。



すると鏡には、赤ちゃんの姿になっている俺が居たのだ。俺は慌ててベッドから起きようとした。しかし、身体を動かせるほどの筋力は無くそのまま後ろに倒れた。



「(まさか本当に異世界なのか)」等と考える俺を他所に、倒れたところを見ていた母親らしき女性に持ち上げられた。



 「あら。大丈夫でちゅか。サンく〜ん」



 「(なるほど。俺はこの世界でサンって名前なのか)」



 「どうしたんだ。サン。危ないことはするなよ。って言っても分からないか」



と、父はだらしない顔で笑いながら言った。俺は、母に抱かれながらこの世界についてもっと知識をつけることを決めた。




俺が異世界に来て早三年が経った。その頃にはこの世界の事を大体把握していた。この世界は魔法があり、国王や貴族までいる世界らしい。



日本で生まれ育った俺にとって、夢のような世界だった。3歳になった俺は全属性の下級魔法は使えるようになっていた。



魔法属性は火、風、水、雷、闇の5属性があり、1人2属性でも持っていればレアらしい。前世でヲタクだった俺は、その知識のおかげで生後半年で火属性魔法が使えた。



その時の両親はとても驚き、母親に関しては腰を抜かした程だ。この世界だと魔法は、精霊と契約して力を借りるらしい。



その代償が魔力とかなんとか。今日も魔法の練習をすることになっている。



「サン〜。今日から来る魔法の家庭教師の方がいらしたわよ〜。こっちに来て挨拶をしなさい」



と呼ばれ言った先には、とても美人なエルフがいた。



「はい。母さ……」



思わず見惚れてしまい、言葉が最後まで出なかった。それに気づいた先生は



「初めまして。今日からサンくんの家庭教師のマン=アルフェです。よろしくね」



「は、はい。サン=マクドレイです。こちらこそよろしくお願いします」



こうして俺と、アルフェ先生の魔法特訓の日々が始まったのである。



この時の俺は、アルフェ先生の正体を知る由もなかった――






アルフェ先生との特訓が始まり1週間が経った。



「サンくんは中級魔法までは使えるようになったのね!すごい上達ぶりね!」



「アルフェ先生がきちんと教えてくれてるからです」



「そんなに褒めても特訓の時間は減らないわよ〜」



「そ、そーですよねぇ」



と笑いながら彼女と話していた。この頃にはすでに、中級魔法までは使えるようになっていた。この世界の魔法には大きく分けて三種類の魔法ランクがある。



下級魔法・・・少ない魔力で発動できる魔法の基本。ただし威力は弱い。



中級魔法・・・下級魔法よりは魔力を使うが、その分威力も上がる。



上級魔法・・・魔力をかなり使うが、中級魔法の10倍の威力がある。



このような魔法ランクに分かれている。しかし精霊以外と契約して使う魔法も存在する。



例えば、神様と契約して使える神級魔法ゴッドマジックって言うのがある。これは相当魔力を使うが、大国を1つ滅ぼせるらしい。



使える人は今まで存在しなかったと聞いている。



「アルフェ先生〜。俺も大きくなったら神級魔法使えるようになりますかね」



と俺が聞くとアルフェ先生は、



「サンくんならもしかしたら使えるかもね〜」



と答えてくれた。お世辞だと分かっていても嬉しい。



「その為に特訓ビシバシやるからね〜。覚悟しててね〜。でも今日はもう、おしまい」



「はーい。出来る限り頑張りまーす。ありがとうございました」



と言い特訓が終了した。アルフェ先生が帰っていくのを見た俺は、自作魔法移動魔法ワープを使い何もない平地に来た。



何故こんな所に来たかと言うと、アルフェ先生にも言ってないが今1人で上級魔法修行中だからだ。



「さて。今日もやるか」



と呟き、的となる岩を探した。



「今日はあれにしよう」



と言い岩めがけて詠唱を始める。



「火の精よ。我は我の魔力と引き換えに大地を焼き払う力を所望する。火炎放射フレアブラスト



魔法が当たった瞬間、的から半径数百メートルが全焼した。



「よし。今日は魔力もないしこれで辞めるか。もっと撃ちたいな」



などと言い移動魔法で家に戻ったのだった。