Chapter 8 - 幸福を零した愚者
求めたものはただ一つ 幸福
それを手に入れるために努力をしたんだ
そしてそれを手にした。
きっとこれがそうなのだとそれを守るために維持する為の苦労は惜しむことはなかった。
それだけは言える。
でも違った。
手にすることだけを考えてその包装の中身までを考えることはなかった。
まるで氷を掴んで走り続けた大馬鹿者。
強く握りしめればするほど、それは溶けて手から垂れ落ちていく。
やがてそれは随分と小さくなっていた
それでも愚者は走り続けた
懸命に四肢を動かし脇目も振らず愚かな義務感に捕らわれ
その結果 それは手から消えていた
答えは見えていた わかりきっていたというのに
あんなに訴えるように指の間からすり抜けていくそれを振り落とし続け
気づきもせず無意味な徒労を続けていた愚者は手を広げ
居なくなったそれを悔やむように慟哭する。
自らがふるい落としたそれを拾い上げようと後ろを振り返ってもすでに蒸発してどこにもいない
愚者はただただ泣き続ける
涙を落としても拾いあげてくれる者はもう居ない
愚者は一人そこに立ち続けていた
それでも消えたものは戻ることはない
孤独の愚者はただその結果に涙している
いつまでも
いつまでも
きっと死ぬまで