
不思議の国、ジャパン(5) (パウロ・ボケ)
私が日本に来て1か月くらい経った頃に、生徒からショッキングな言葉を投げかけられた。それは
「先生の英語は間違っています!」
と言われたことだ。
最初は何を言われているのか分からなかった。だって、私はアメリカ人で英語が母国語。それなのに、まともに英語の使えないニッポンの高校生に
「あなたの英語は間違いです」
と言われたのですね。
それで、どういうことなのか同僚の日本人の先生に説明を求めました。すると、
「あぁ、それは赤本の解答ですね」
とのこと。
たとえば、キョウト大学の2020年度の英作文の冒頭は
「お金のなかった学生時代にはやっとの思いで手に入れたレコードをすり切れるまで聴いたものだ」という一文があります。
私は日本語の訓練を受けて来日しましたので、この問題文の意味が分かりました。そこで、When I was a student with no money, I would listen to the records I could barely afford until they were worn out. ではどうかと答えてみたのです。すると、
「間違いです」
と言われたわけです。
その生徒が言うには、When I was a poor college student, I barely managed to buy records, and I used to listen to the ones that I did buy over and over again until they became worn out. が「正解」だからだそうだ。日本の高校生にとっては、赤本と呼ばれる参考書の解答はネイティブの私の英語より信用できるのだった。
その後も似たような経験を何度もしました。
「だって、京大卒の先生の解答とちがう!」
「TOEIC満点(英検1級)の先生の解答は違っていました」
と言われました。
日本では京大卒、TOEIC満点、英検1級などの権威ある「解答」が英語圏で生まれ育った人の英語より“正しい”とされるわけです。これが、どれほどバカバカしいことか分かってもらえるでしょうか?
失礼ですが、キョーダイ、トーダイ、TOEIC、英検の存在を知っている英語圏の人は多くありません。そこに権威を感じる人は世界基準では少数派です。英語は英語圏に住んでいる人の使っている言語なのだから、私たちALTが招かれているはずなんです。
ところが、日本の学校は「英語を身につける」ことを目標にしていませんね。難関大学合格、資格試験合格、つまりは、英語は就職試験の1科目であって「ジュケン」が全てというシステムなんですね。
だったら、ALTなど招待せずにクイズのような問題ばかり解いていればいいのに。
高木センセイが10年かけて
「受験においてもネイティブの英語が高得点をとれる」
と実証されましたが、誰も耳を貸さないとのことです。
帰国子女の方も、海外赴任経験のある方も、日本の学校の異常性には気がついてみえますよね。どうして声をあげないのだろう?もちろん、誰も耳を貸してくれないからでしょうが。
「日本には日本の良い点がある。外国のマネをする必要はない!」
そう言って激怒される方が多いのだから“触らぬ神に祟りなし”なんでしょう。でも、それで食っていけなくなりつつあります。
日本の経済的地位は低下の一途をたどっていますが、その元凶は日本の学校にあると思いますよ。
学校教員のわいせつ事件が後を絶たない。最近の報道事例をピックアップしてみよう。
「高校教諭の男、夜の路上で下半身露出し女子大生に液体」(千葉県)
「女性教諭 教え子だった男子生徒呼び出し、車内でみだらな行為」(東京都)
「高校教諭 夜の動物園で女子高生を盗撮 4、5年前から」(兵庫県)
「小学校教頭 自転車で追い抜きざまに女性の下半身触る」(大阪府)
「勤務校の女子高生と性行為、県教委『刑事告発の予定はない』」(和歌山県)
「男性担任、教室で男子児童3人にわいせつ行為、スマホ撮影」(徳島県)
学校の教師が何かしても上記のように名前の公表がないのが普通です。教育委員会も元教師が過半数を超えているので身内同然です。生徒も保護者も「調査書」におかしなこと書かれたら困るので黙るしかありません。
バレない事件はこの10倍以上はあると思われます。
学校の先生は、学校内では王様と同じように絶対権力者なので私たちのような“ヨソモノ”には口出しできるわけがありません。専門科目の英語でさえ、私たちネイティブより先生の「解答」が「正解」なのですからね。
これは、江戸時代の「将軍様」と同じ構造だと思いますよ。少なくとも民主主義国の制度ではありません。
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